監修:楊 敏 先生(中医学講師)
「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の影響により、増えてきた在宅勤務(リモートワーク)。育児との両立、通勤ラッシュから解放されるなどメリットがある反面、パソコンやスマホ時間が増えて目の疲れを感じる人も多いはず。
今回は急増している『目のお悩み』を改善する中医学ケアをご紹介します。
在宅勤務で「目のお悩み」が急増!?
私たちは新型コロナウイルス感染症の大流行により、マスクが習慣化し、不要不急の外出を控える日々。何より在宅勤務の浸透により、生活様式が一変した人も多いでしょう。
在宅勤務が増えると、以前よりパソコン、スマートフォンを使う頻度も増え、肩凝り、睡眠障害、うつなどの症状に加え、とくに視力低下、かすみ目、目がしょぼしょぼする、眼痛など、目のお悩みが多く寄せられます。とりあえず目薬をさして凌いでいる人も多いのではないでしょうか。
中医学では目と関わりの強い臓を内側からケアし、目を元気にしていくことを考えます。これから3つに分けて詳しく見てきましょう。
(1)目と関わりの強い「肝」・「腎」を養う
中医学では、目の機能は「肝(かん)」・「腎」と密接に関係していると考えます。とくに「肝血」・「腎精」は目を濡養し、目の機能を支える大切な栄養素です。
(1)肝は血を蔵し、目は肝の外竅(がいきょう・体表の穴)である
中医学のバイブル「黄帝内経」に、
“人臥血帰於肝”(寝ているとき、血は肝に戻る)
“肝受血而能視”(目が覚めると、肝血を受けてモノが視える)
と言う言葉があります。
これは、肝血は目の機能を支える大切な物質なので、肝血が充実するかどうかで「視力・識別の機能に影響する」という意味です。また、“久視傷血”(長時間、目を使うと肝血を消耗する)とも言われ、目の酷使は肝血を損傷する要因とも考えます。
“人臥血帰於肝”(寝ているとき、血は肝に戻る)
“肝受血而能視”(目が覚めると、肝血を受けてモノが視える)
と言う言葉があります。
これは、肝血は目の機能を支える大切な物質なので、肝血が充実するかどうかで「視力・識別の機能に影響する」という意味です。また、“久視傷血”(長時間、目を使うと肝血を消耗する)とも言われ、目の酷使は肝血を損傷する要因とも考えます。
(2)腎は精を蔵し、瞳を司る
腎は精(生命エネルギー)を貯蔵し、瞳(眼底・視神経など)と深く関係する臓。そんな腎精と肝血は、「精血同源」の関係で密接に影響しあい、一方の損傷で必ずもう一方も損傷してしまいます。とくに夜にスマートフォンやゲームなどで目を使いすぎると、腎精や肝血を損傷し、様々な目のトラブルを起こしやすくなります。
症状:視力低下、かすみ目、眼精疲労、目がしょぼしょぼする、ドライアイ など
●おすすめの食材
レバー、ほうれん草、小松菜、にんじん、牡蠣、黒ごま、松の実、くるみ、なつめ、ブルーベリー、レーズン、クコの実、桑の実、菊花 など
●おすすめレシピ
・にんじんとパプリカ(緑黄色野菜)のチンジャオロース
・クコの実と菊花のお茶(目の様々なトラブルを緩和する杞菊地黄丸をお茶に代用したレシピ。飲む目薬とも言われます。)
(2)自律神経と関わる「肝」の疏泄機能を整える
「肝は疏泄を司る」と考えられ「血液の流れ」「自律神経のコントロール」に影響します。精神的なストレスがたまると、憂鬱、不安、イライラ、肩凝り、睡眠障害のほかに、目の血流が悪くなり、目の疲れを誘発させてしまいます。
●おすすめの食材
春菊、三つ葉、セロリ、しじみ、あさり、梅干し、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、ミント、菊花、ローズ、ラベンダー など
●おすすめ養生
夜に熟睡できないと、血を肝に貯蔵することができないので、目に悪い影響を与えてしまいます。睡眠トラブルを抱えている方は、午後にラベンダーティーやカモミールティー(+ブルーベリー、ブルーベリージャム)がオススメ。
(3)目の血流を改善して新陳代謝を高める
目の血流は、目の周りの血流、全身の新陳代謝とも深く関係します。長期間のパソコン、スマートフォンの使用は、姿勢を悪くさせ、血液の流れも悪化させてしまう要因にも。肩凝り、目の疲れ、ひどくなると目の奥に痛みも出てしまいます。
●おすすめの食材
玉ねぎ、生姜、ねぎ、いわし、さば、あじ、ナス、くわい、黒酢、黒きくらげ、紅花、サフラン、ウコン など
※生にんにくや生玉ねぎを多く食べると、目やにが増える、目がかすむこともあるので食べ過ぎには気をつけましょう。
●運動不足を改善する
運動不足は血流を悪くさせる原因です。散歩、ジョギング、ストレッチ、ヨガなど、自分に合う運動を選び、10〜15分でも良いので毎日続けることを心がけてみて。
●目を守る習慣をする
長期間パソコンを使用する際は、1時間毎に5分ぐらい休憩を入れ、窓の外(遠く)や緑葉植物に目を向けながら、肩を動かすなどストレッチを。また、スマートフォンやゲームの長期間使用を控え、使用する際はできるだけ画面の大きなものなどを使いましょう。
●目のマッサージ
目が疲れたときは、暖かいタオルを両目に3~5分置き、目の血流を良くしてあげましょう。目の充血や熱を持っているときは、温めずに冷やしてあげましょう。
温めるor冷やすは、目の症状によっては逆効果になるので使い分けることが大切です。
温めるor冷やすは、目の症状によっては逆効果になるので使い分けることが大切です。
目の疲れを改善するツボ
●攅竹(さんちく):目頭のくぼんだところ。親指で5秒くらい押す。
●睛明(せいめい):左右の目頭の上のくぼみ。親指と人差し指をツボに当てて、つまみながら上下に揉む。
●四白(しはく):左右の目の真下。人差し指の腹で円を描くように押し揉む。
中国の小学生は、授業の合間(午前午後2回ずつ)にスピーカーから流れてくる音楽にあわせ、ツボを揉みながら目の体操(眼保健操)をします。幼少期から目を養うのは、とても大切なことです。目を閉じて1回1分、毎日3分。ツボ押しを毎日の習慣にしてみてくださいね。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。