監修:楊 敏 先生(中医学講師)
中医学に伝わる「疫病の感染を防ぐための基本原則」
2000年前の医学書『黄帝内経』には、「不相染者、正気存内、邪不可干」とあり、感染源を避けること、「気」を高めることは疫病に対して有効であるとされています。現代でも言われているように、手洗い・うがい・マスクの着用のほか、生活の中で自身の免疫力を高めることが重要です。
家でできる中医学の健康生活・朝編
規則正しい生活リズムは、起床時間から。できる限りいつも同じ時間に起きるようにしましょう。朝寝坊は夜まで影響し、睡眠の質を下げることに繋がります。
(2)起床後はうがい
便秘気味の方は、さらに一杯のぬるま湯を飲んで腸の活動を促すといいでしょう。
また、日中に運動をすることで気血の巡りを促し、筋肉を維持することができます。筋肉や関節の痛みを感じている方は特に心がけましょう。
中医学には、人と自然は一つとする「天人相応(てんじんそうおう)」の考えがあります。朝は、植物が目醒めて成長しようとするように、人間もまた体内の細胞・器官・臓器などの機能も活発になるのです。
そのため、栄養バランスの良い朝食を摂ることは一日のスタートにとても重要です。
在宅ワークにより朝の時間に余裕ができた方は特に、胃にやさしい温かい朝食を召し上がってください。
卵料理(ゆでたまご、目玉焼きなど)、野菜を使ったスープ、ビタミン豊富なフルーツ など
家でできる中医学の健康生活・昼編
午前中は仕事や家事に取り組むのに最適な時間です。ただし、夢中になり過ぎると肩こりなど体のコリの原因にも。1時間ごとに三首(首・手首・足首)、肩、腰、膝などの関節を10回程度回しましょう。
免疫力を高めるためには、辛味野菜、緑黄色野菜などがおすすめです。時間がないときには簡単に温野菜やサラダにしてもいいでしょう。時間があれば、料理を多めに作って、残りは夕飯や次の日のおかずにしてもいいですね。
【おすすめランチ食材】
長芋、きのこ類、アスバラガス、ブロッコリー などをバランスよく。
(3)昼食後は15~30分ぐらいの昼寝
11時~13時の「心(しん)」の時間帯に短時間の昼寝をすることで、心神の働きが安らかになり、午後の仕事が効率よく捗ります。ただし、長時間寝てしまうと、夜の睡眠に支障が出ることもあるので注意です。
(4)コーヒーや紅茶で効率UP
飲み物でのどに潤いを与えることは、上気道の粘膜の免疫力を高めます。また、排尿・排便を促すので、体の毒素排出にも良いです。ただし、寝付きが悪い、または睡眠が浅い場合、14時以降はカフェインの入った飲料を控えましょう。代わりにハーブティーやほうじ茶などがおすすめです。
家でできる中医学の健康生活・夜編
(1)夕飯はタンパク質と野菜の食事
家族全員が揃う時間には、お肉や魚、野菜の食事で楽しく。食べながら軽い晩酌も良いでしょう。食事で一日の疲れを上手に解消します。
(2)20時以降は良い睡眠のための準備を
睡眠と免疫力の関係はとても密接な関係があります。質の良い睡眠のためには、夜の過ごし方がとても重要です。20時以降は、なるべく仕事やスマートフォンなどをやめ、好きな音楽を聴いたり、ゆったりとした時間を持ちましょう。寝る前に鎮静安神効果のあるラベンダーやカモミールなどのハーブティーを飲むのもおすすめです。
お風呂はゆっくり入って、体を温めると寝付きも良くなります。睡眠負債が溜まりやすい忙しい人ほど、シャワーで済ます習慣を見直して、お風呂に浸かるようにしましょう。
(3)質の良い睡眠の第一歩は24時までの就寝
一般的に6~7時間熟睡できれば良いとされていますが、寝る時間も重要です。23時~1時は排毒を行う「胆」が活発になり、成長ホルモンの分泌も盛んに行われます。この時間に起きていると、体内の新陳代謝や機能の修復が上手く働かず、疲れが溜まりやすくなってしまうのです。
また、中医学で「衛気」は、夜になると内臓に入り栄養を補充するとされ、質の良い睡眠は、衛気の補充修復にも役立ちます。逆に睡眠不足や浅い眠りは免疫力の低下にもつながってしまいます。
免疫力アップの秘訣は、笑うこと
不安、クヨクヨ、イライラなどが続くと、「脾(ひ)」(消化系)、「肝(かん)」(自律神経)、「腎」(免疫系・ホルモン系など)に大きくダメージを与え、胃腸機能や睡眠に支障が出て、結果的に免疫力が下がることにも繋がります。
今回は家の中でできることを中心にお伝えしましたが、買い物など時々外に出て、日光を浴びることも大切です。日を浴びることで体内にビタミンDが生成され、かぜ予防に効果があります。天気の良い日に外に出たら、人との距離を開け、日当たりの良いところで体を動かしてみてください。
自分なりの楽しみを見つけて、明るく伸び伸びと過ごせますように。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。