春は重くなりやすい?中医学で考える更年期障害 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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春は重くなりやすい?
中医学で考える更年期障害

2021.03.16 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

『更年期』と耳にするだけで、嫌なイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、症状が重い人もいれば、あまり辛くなく短い期間で更年期を通り過ぎる人も。
なぜ人によって差があるのか、中医学の視点からお伝えしていきます。

更年期障害とは?

更年期とは、閉経前後の約10年間(プレ更年期の期間を含む)、女性が成熟期から老年期へ変わっていく移行期間のこと。女性の誰もが避けては通れない期間です。

更年期障害とは、閉経に伴う卵巣機能の衰えにより、ホルモンや自律神経などの変調を中心とした、身体や精神に現れる多種多様な症状のこと。
イライラ、怒りっぽい、憂鬱・不安、気持ちが落ち込みやすい、のぼせ、ほてり、カーッと熱くなり発汗する(ホットフラッシュ)、動悸、不眠、肩こり、頭痛などの不定愁訴(明確な原因がない身体の不調)と呼ばれる症状です。

日本人は重い?更年期障害の原因

中国女性と比べ日本女性は、重い更年期障害に悩んでいる人が多いように感じます。その原因としては、「若い頃から養生をあまり意識していないこと」が考えられます。
季節を問わず冷たい飲食物を摂り過ぎる、食べ物の好き嫌いが多い、無理なダイエットや暴飲暴食など。
また、寒い時期や生理中でも薄着で、下半身を冷やしてしまっている人も多いですよね。
そのほかにも、過労、房労(過度なセックス)、遅寝、徹夜、過度なストレスなどが挙げられます。

これらを長期間続けることによって、身体のバランスが崩れてしまい、更年期障害の症状が悪化して、10年以上もの間悩んでいる人も少なくありません。「暗いトンネルに入ってしまい出口が分からない」「辛くて自殺したい」と言う人も…そのほかに、30代後半からプレ更年期が現われる人も増えてきました。

不養生は、女性にとって大事な「腎」・「肝(かん)」(肝臓)や「気・血」を強く損傷し、陰陽のバランスが崩れてしまう要因にも。特に月経中や産後は、養生を心がけてほしいです。

中医学で考える更年期障害の原因

(1)「腎」と更年期障害
中国最古の医学書である「黄帝内経」において、「女性の身体の節目は7の倍数で現われ、腎の充実と深く関係する」と記されています。
成長・発育・生殖を主る「腎」は、20代に一番充実し、卵巣機能も女性ホルモンも一番盛んになります。そして、30代後半から下り坂に入りはじめ、49才ごろに卵巣機能が衰退して閉経を迎えます。この腎の機能が急激に衰え始める50歳前後から出始めるのが更年期障害です。

(2)「血」と更年期障害

月経・おりもの・妊娠・出産・授乳など、女性の生理機能を支えるのが「血」です。「女子は血を持って本と為す」という言葉もあり、卵巣機能・女性ホルモンの働きと深く関係します。
毎月の月経に加え、妊娠・出産・授乳など、血を消耗しやすい女性の身体は、常に血不足に陥りやすい状態。そこに日頃の不摂生が続くと、女性にとって大切な「腎」と「血」を早めに損傷してしまい、40代には加齢による卵巣機能の衰退が急激に現われます。その結果、ホルモンと自律神経のアンバランスで、辛い更年期障害へと繋がってしまうのです。
(3)「肝」と更年期障害
中医学において「肝」は、気血の流れをスムーズにする「疏泄」という働きにより、「自律神経の働きを整え、精神の安定をサポートする」と考えます。
ストレスなどが原因で、肝の巡りが悪くなる「肝失疏泄(かんしつそせつ)」の状態になってしまうと、卵巣機能にも影響を及ぼしてしまうのです。

五行学説では、「腎」と「肝」は母と子の関係とされています。肝の機能が弱ってしまうと、母子関係にある腎にも影響し、「腎虚」に拍車がかかることも。
まさに女性にとって「肝腎要(かんじんかなめ)」です。

春こそ要注意!更年期がつらくなる理由

春は、五行学説において「肝」と関係の深い季節です。
中医学では「自律神経」と「肝」の働きは密接な関係とされています。冬から春の激しい寒暖差によって自律神経が乱れ、肝の働きが低下してしまうと心身ともに疲れやすい状態に。
また、春は新しい年度始めです。家庭や仕事の環境変化によっても、自律神経の異常を引き起こしやすく、春に更年期障害がつらくなりやすいのです。忙しい時期につらい状態が続くことで、心身ともに苦しい思いをされている人も多くなります。
春を穏やかに過ごすためにも、適度なストレス発散を心がけましょう。
次回は、更年期障害の具体的な対処法をご紹介します。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。