監修:劉 伶 先生(中医学講師)
30代後半・40代に見られるプレ更年期の過ごし方
更年期は誰でも通る道。穏やかに過ごすために大切にしたいこと。
「更年期」はいつくるのか、恐怖心があるかもしれませんし、更年期という言葉を聞きたくない方もいらっしゃるかもしれません。
更年期は、女性の一生の中での通り道で、誰しもがその道を通過します。逃げ道はありません。違いは、その道が険しいのか、穏やかなのかということだけ。それならば、ストレスでピリピリした更年期を迎えるよりも、楽しく穏やかに迎えたいですよね。そういった気持ちになると、心だけでなく体も楽になります。
まずは、更年期がどのようなものかを知って、プレ更年期・更年期の過ごし方を見直しましょう。
更年期はいつから?7の倍数で見る女性の一生
女性の体は7年ごとに変化があります。これは、中医学の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」に書かれていて、2千年以上も前に認識されていました。
14歳で初潮を迎え、21歳で女性としての体が出来上がり、28歳で充実期を迎えます。42歳頃になるとプレ更年期の年代に入り、更年期障害で出るような症状がチラホラ出てきます。そして、49歳前後には閉経し更年期を迎えます。
女性ホルモンの生涯の分泌量はわずかティースプーン1杯程度?
なぜ更年期に症状が出るのか。それは、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量に関係があります。
卵子が大きくなって顆粒膜細胞からエストロゲンが分泌されます。排卵があればホルモン分泌はずっと維持されますが、加齢とともに排卵が減ってくると、ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが崩れることで自律神経などが乱れ、不快な症状が出てきます。生活習慣の乱れなどから若くても更年期障害のような症状が現れ、プレ更年期になることも。
一説には、「生涯の分泌量はわずかティースプーン1杯程度」といわれる女性ホルモン。42歳を過ぎる頃から女性ホルモンの分泌量は減少し、40代後半になると徐々に生理が不規則になっていきます。閉経に向かって半年生理が来なくなったり、あるいはいったん生理がきたら止まらなくなったりするトラブルも出てきます。
波乱万丈な更年期。症状は体質によって異なる。
更年期障害の症状は、肩こり、疲れやすさ、のぼせ、発汗、気うつ、不眠、粘膜の乾燥などです。ただし、その症状には体質によって個人差があり、また、日によって異なることも。今日は頭が痛いけれど、別の日は不眠、といったようにいろいろな症状が出てきます。女性の更年期は波乱万丈です。
プレ更年期・更年期を穏やかに過ごすために。キーワードは「血」と「腎」。
中医学では病気ではないけれど何らかの不調がある場合を「未病(みびょう)」、未病とわかった段階で治療することを「未病先防(みびょうせんぼう)」と言います。病気になる前に防いでいくのが中医学です。
更年期を穏やかにするために「未病先防」が理想ではないでしょうか。キーワードは「血(けつ)」と「腎」。穏やかな更年期のための養生ポイントをお伝えします。
【血のケア】
毎月の生理のほか、妊娠、出産、授乳で血を使います。女性は平均35年間の生理があり、積算すると生理だけで63,000ccもの血を消耗するといわれています。
だからこそ、大切なのは血を補うこと、栄養豊富な血がたっぷりとありスムーズに体内を流れていること、生理周期を保つことです。
・血を補うおすすめ食材
クコの実、黒ごま、黒砂糖、なつめ、にんじん、なす、レバー、鶏肉、ピーナッツ(赤い薄皮つきのもの) など
【腎のケア】
「腎」は生命エネルギーの源である「精」を蓄える臓器と考えられています。生理不順、加齢、妊娠・出産などにより腎の働きは弱まってしまうため、腎の機能を少しでも長持ちさせるためには、常に補っていく必要があります。
同じ年齢でも若く見える人とそうでない人がいるのは、この「腎」の力の差と言えるのです。
更年期対策として、腎と同時に「肝(かん)」もしっかり補うことが大切。腎と肝はお互いに協力し合う関係にあり、腎が弱くなれば肝が、肝が弱くなれば腎が影響を受けます。
・腎を補うおすすめ食材
黒豆、大豆食品、黒ごま、くるみ、山芋、えび、あさり、ひじき など
・肝を補うおすすめ食材
レバー、うなぎ、小魚、牡蠣、しじみ、きのこ類 など
※中国のなるほど習慣「生理中にご褒美スープ」
自分の体質に合った食材で作った栄養豊富なスープを生理中に飲む習慣があります。鶏肉、豚骨、豚足などの滋養たっぷりスープで体を温めながら栄養を補給しています。
【COCOKARA中医学関連ページ】
あなたの更年期の症状は何の不調から?タイプをチェックしましょう
更年期をラクに過ごす方法
じつは男性にも更年期が…。体の節目は「8の倍数」。
更年期は女性だけでなく男性にもあります。男性は8の倍数で体の節目を迎えます。
プレ更年期は48歳頃。40代を迎える頃から性機能が衰え始め、40代後半になると疲れが取れにくくなり、排尿機能に支障が出始めます。56歳頃から老化が本格化し更年期へと突入します。仕事オンリーだった人ほど定年などで精神的に不安な要素が加わり、不眠やうつなどの症状が現れることもあります。
【COCOKARA中医学関連ページ】
知っていますか? 男性の更年期の症状と対策
まだ更年期の症状を感じていない方、若い方も、更年期は必ずやってきます。早すぎる養生はありません。少しでも穏やかな更年期にするために、ご自身の生活習慣を見直してみましょう。
※本記事は、2018年6月17日開催の講演会「今から始める女性のための漢方レッスン」(共催:イスクラ産業株式会社、日本中医薬研究会、朝日新聞出版)での講演内容を一部抜粋し紹介したものです。
講演会では劉伶先生のおすすめレシピの紹介も。たくさんのご来場ありがとうございました!
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この記事を監修された先生
中医学講師劉 伶 先生
劉 伶(りゅう れい)
医学博士。遼寧中医薬大学客員教授。不妊カウンセラー。
中国・遼寧中医薬大学医学部卒業。同大学講師として勤務。修士学位を取得後、岡山大学医学部第一内科に留学し、医学博士号を取得。 現在は日本中医薬研究会専任講師として、中医学の普及と指導に従事。
共著に「やさしい中医学シリーズ1 ライフスタイルブック」「やさしい中医学シリーズ5 心と体にやさしい不妊治療」(ともに文芸社)など。