監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン Vol.56
フケが出やすくなったり、頭皮にかゆみを感じたり……。こうしたトラブルの原因は意外なところに潜んでいて、秋冬の時期に起こりやすくなることも。「毎日洗っているのにどうして?」と悩んでいる人は、この機会にぜひ頭皮の状態や体質をチェックして、不快なフケ・かゆみを改善しましょう。
乾燥や過剰な皮脂がフケ・かゆみの原因に
頭皮の構造も顔や体の皮膚と同じで、約1ヵ月(28日程度)のサイクルで皮膚が生まれかわるターンオーバーの機能を備えています。フケの正体は、このターンオーバーによって剥がれ落ちた古い角質。そのため誰にでもフケは発生しますが、ターンオーバーが正常であればフケはとても小さく目立つことはありません。
ところが、乾燥や過剰な皮脂分泌といった頭皮トラブルを抱えていると、頭皮のターンオーバーが乱れるように。その結果、多量のフケが出たり、炎症を起こしてかゆみを感じたりするようになります。
フケ・かゆみの主な原因
●乾燥:白くカサカサのフケ
過剰な洗髪などで皮脂を必用以上に落としてしまうと、頭皮が乾燥してターンオーバーの周期が早まり、白くカサカサとしたフケが出るように。乾燥肌の人、空気が乾燥する秋冬などは、乾燥性のフケが出やすくなります。
●過剰な皮脂:ベタベタのフケ
洗髪不足などで頭皮の皮脂が過剰になると、皮脂を餌にする常在菌が増えてターンオーバーが乱れ、フケが出やすくなります。脂性のフケは大きくて湿っていることが特徴。オイリー肌の人、汗をかきやすい夏などに起こりやすい症状です。
また、頭皮の乾燥や過剰な皮脂分泌が強くなると、炎症(乾燥性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)を起こしてしまうことも。大きなフケが出てかゆみも強くなるので、早めの対処を心がけましょう。
頭皮の健康と深く関わる「心」「肝」「腎」
中医美容学では、頭皮の状態は、「血」の栄養や潤い、「精」(生命エネルギーの源)のエネルギーによって健やかに保たれていると考えます。そのため、血と関わる「肝(かん)」、「心(しん)」、精を蓄える「腎」の働きが落ちると、頭皮に十分な潤いや栄養が行き渡らず、乾燥やターンオーバーの乱れを招いてフケやかゆみ、脱毛までもがひき起こるようになります。
また、イライラや焦燥感といった精神トラブルが続くと、体に過剰な熱がこもって皮脂の分泌が過剰になることも。これが毛穴の炎症やターンオーバーの乱れにつながり、フケやかゆみが起こることもあります。また、多くの円形脱毛の原因にもなります。
秋冬の時期は、乾燥や寒さにも気をつけて。皮脂の減少、冷えによる血管の収縮などが頭皮の乾燥を招き、乾燥性のフケが増えやすくなります。
髪は「血の余り」「腎の華」とも言われ、髪や頭皮の状態は健康のバロメーターに。フケやかゆみが気になる人はこの機会に体質をチェックして、不調をしっかり改善しましょう。
中医美容の頭皮ケアでフケ・かゆみを改善
「保湿」「活血」「解毒」を基本に、頭皮の乾燥・過剰な皮脂の改善を。マッサージや生薬パックで、フケ・かゆみのない健やかな頭皮をめざしましょう。
<中医美容の頭皮ケア>
●マッサージで血流アップ:
両手で髪をとかすように、額の生え際から後頭部までマッサージ。爪を立てず、指先で優しくが基本です。(30回×2回程度)
注:かゆみや赤み、炎症があるときは控えましょう。
●洗髪のポイント:
清潔に保つことは大切ですが、洗い過ぎはNG。頭皮の状態に合わせた適度な洗髪を。
[普通〜乾燥肌の人]夏は1〜2日に1回、冬は2〜3日に1回程度。
[脂性の人]夏は1日1回、冬は1〜2日に1回程度。
●頭皮を整えるヘアパック:
シャンプー後の髪と頭皮に生薬トリートメントを。タオルで10分ほど包んだら洗い流して。
[ノーマル肌用]卵1個、酢10ccを混ぜる
[乾燥肌用]牛乳・はと麦茶各20cc、オリーブオイル5滴を混ぜる ※オリーブオイルのみでもOK
[脂性肌用]五行草・玫瑰花各5g、黄柏3gを500ccの水に入れ、半量まで煮詰める
※注
お肌に異常が生じていないかよく注意して使用してください。
傷やはれもの、しっしん等、異常のある部位にはお使いにならないでください。
お肌に合わない場合には、使用を中止してください。
●おすすめ生薬:
頭皮の改善につながる生薬です。自分の頭皮に合わせて取り入れてみて。
[保湿]乾燥気味の人:当帰(とうき)、人参、沙棘(サージ)、アロマ精油など
[解毒]炎症・脂性の人:紫根(しこん)、カミツレ、金盞花(きんせんか)、苦参(くじん)など
[活血]どんな肌質にも:当帰、紫根など
※洗髪には「瑞花露ソープ」などがおすすめです。
フケのタイプ別対処法 〜体の中から頭皮を整える〜
フケの状態や症状から自分のタイプをチェックして。体内の不調をしっかり改善して、頭皮を根本から整えましょう。
●黄色くベタベタ「脂性フケタイプ」
強いストレスや焦燥感などで「心」や「肝」に過剰な熱がこもり、これが皮脂線に影響して皮脂の分泌が過剰になっているタイプ。日頃のストレスはこまめに解消し、なるべくイライラや焦りを感じないよう、ゆったりとした気持ちで過ごすことを心がけましょう。
【気になる症状】
ベタベタとしたフケ、頭皮のかゆみ、髪のベタつき、イライラ、不眠、軟便 など
【おすすめ食材】
納豆、卵、きのこ類、レタス、蓮根、蓮の芯、あさり、わかめ、百合根 など(ビタミンB群を多く含む食材)
※油っこいもの、味の濃いものは控えめに!
【おすすめ生薬】
紅景天(こうけいてん)、刺五加(しごか)、酸棗仁(さんそうにん) など
●白くてカサカサ「乾燥フケタイプ」
「肝」「腎」の機能が低下して、「血」や「精」の潤い、栄養が頭皮に行き渡らないタイプ。過労や睡眠不足、目の酷使などは血や精の消耗につながるので気をつけて。また、腎の働きは30代後半くらいから自然と衰えていくので、無理のない生活で体に負担をかけないことも大切です。
【気になる症状】
カサカサのフケ、頭皮のかゆみ、乾燥肌、痩せ気味、月経量が少ない、口の乾燥 など
【おすすめ食材】
ビタミンEやカロテンを多く含む食材、手羽先、肉類、すっぽん、ナッツ類、かぼちゃ、柑橘類、クコの実、棗(なつめ) など
【おすすめ生薬】
亀製剤、沙棘、当帰、黄精など
沙棘
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など