監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.51
夏になると、気になるのが二の腕のブツブツ。ずっと悩んでいるけれど、どうしていいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。このブツブツ、実は「毛孔性角化症(もうこうせいかくかしょう)」という皮膚疾患の一つ。適切に対処すれば緩和できるので、諦めずにケアをしてスベスベ素肌を手に入れましょう。
ブツブツ肌の正体は「毛孔性角化症」
その肌触りから、“さめ肌”とも言われる二の腕のブツブツ。医学的には「毛孔性角化症(もうこうせいかくかしょう)」または「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」と呼ばれる一般的な皮膚疾患で、10代の30〜40%ほどに発症するとされています。症状が目立つのは思春期の頃で、その後は加齢とともに落ち着く傾向にあります。
ブツブツの正体は、毛穴に詰まった古い角質。肌のターンオーバー(代謝)の乱れ、角質層の水分不足などによって毛穴に過剰な角質が溜まり、皮膚の表面が盛り上がってブツブツしてしまうのです。
基本的に痛みやかゆみはなく治療の必要はありませんが、やはり見た目には気になるもの。放置すると跡が残ったり、無意識に触って症状が悪化したりすることもあるので、早めのケアを心がけることが大切です。
体質から考える要因
二の腕のブツブツができやすいのは、生まれつきの体質で「肝・腎」が弱い人。肌は主に体内の「血」や「津液」(潤い)によって健やかに保たれていますが、肝・腎の働きが弱いと「血や津液の不足」、肌の新陳代謝力の低下、「瘀血(おけつ)」(血行不良)などを招き、不調が起こりやすくなります。
また、食の不摂生などで「脾胃(ひい)」(胃腸)が弱っていると、栄養を十分取ることができず体内の血や津液が不足しがちに。その結果、肌に潤いや栄養が行き届かず、トラブルが起こりやすくなるのです。
二の腕のブツブツは、こうした体質の影響で肌のターンオーバー(代謝)が乱れたり、デトックスの力や保湿力が落ちたりすることで起こる症状と中医学では考えます。
中医美容ケアで、ザラつく肌をスベスベに!
ブツブツ肌のケアは、まず詰まった角質を取り除くことが基本。同時に、血行を促し、保湿力をアップして、肌のターンオーバー(代謝)を正常に保つことも大切です。
【3ステップで毛穴の角質ケア】
(1)洗う:生薬の力でブツブツを解消
紫根(しこん)、苦参(くらら)、当帰(とうき)などの毛穴ケアができる自然の生薬などを配合したボディソープや石鹸などで肌を洗い、ブツブツの解消を促します。
(2)パックをする:詰まった角質を柔らかく
沙棘(サージ)オイルのパックまたは五行草、丹参(たんじん)、紅花、川芎(せんきゅう)、玫瑰花(まいかいか)、真珠などの生薬を煮出し、温パックを。温めながら、毛穴に詰まった角質を柔らかくします。※中医学の考え方を取り入れたオーガニックパック
上記いずれかの生薬10gを1,000mlの水に10~20分間つけて、加熱します。沸騰したら弱火で10分煎じ、火を止め薬液が冷めたらシルクのタオルやパックにできるシートを浸して使います。薬液は冷蔵保存することで、約3日間使用できます。(3)塗る:クリームや軟膏で保湿&角質除去
上記いずれかの生薬10gを1,000mlの水に10~20分間つけて、加熱します。沸騰したら弱火で10分煎じ、火を止め薬液が冷めたらシルクのタオルやパックにできるシートを浸して使います。薬液は冷蔵保存することで、約3日間使用できます。(3)塗る:クリームや軟膏で保湿&角質除去
沙棘オイル、ビタミンE、真珠、サリチル酸などを配合したクリームや軟膏を選んで。毛穴に詰まった角質を溶かし、肌をしっかり保湿しましょう。
その他、入浴剤を入れたお風呂で温まり、血行を促すのもポイントです。
【血行を促すおすすめのツボ】
風池(ふうち)…首の付根。後頭骨の下のくぼみのところ
曲池(きょくち)…ひじを曲げた時にできる、シワの終わるところ
足三里(あしさんり)…膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下
【血行を促すおすすめのツボ】
風池(ふうち)…首の付根。後頭骨の下のくぼみのところ
曲池(きょくち)…ひじを曲げた時にできる、シワの終わるところ
足三里(あしさんり)…膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下
【これはダメ!悪化につながるNG行為】
つい触りたくなってしまうさめ肌ですが、ブツブツを潰す、ナイロンタオルでゴシゴシこする、といった行為は絶対に避けて。肌のバリア機能がダメージを受けて症状が悪化したり、色素沈着を起こして跡が残ったりすることがあります。
また、“夏だから保湿しない”もNG。汗をかくと肌の潤いは失われがちなので、季節を問わず保湿するよう心がけましょう。
体質改善で根本から健やかな肌を
ブツブツ肌の対策はスキンケアが基本ですが、根本から改善するためには体の内側を整えることも大切。「肝」「腎」「脾胃」の養生を中心に、新陳代謝力がある健やかな肌づくりを心がけましょう。
(1)「肝腎不足」タイプ
生まれつきの虚弱体質や長期間の過労状態が続いている人に多いです。肝・腎の働きを整えて「血」を充実させ、血行をスムーズに保ちましょう。
【気になる症状】
めまい、耳鳴り、腰が重だるい、目の疲労、生理不順
【おすすめ食材】
レバー、小松菜、アスパラガス、松の実、黒ごま、黒豆、卵 など
【おすすめ生薬】
当帰(とうき)、枸杞子(くこし)、何首烏(かしゅう)、阿膠(あきょう)、亀板(きばん)
めまい、耳鳴り、腰が重だるい、目の疲労、生理不順
【おすすめ食材】
レバー、小松菜、アスパラガス、松の実、黒ごま、黒豆、卵 など
【おすすめ生薬】
当帰(とうき)、枸杞子(くこし)、何首烏(かしゅう)、阿膠(あきょう)、亀板(きばん)
(2)「胃腸虚弱」タイプ
食事の栄養から「気」「血」「津液」を養うことは、健やかな肌づくりの基本です。肌の新陳代謝力を低下させないように暴飲暴食、冷たい飲食などは控え、脾胃の働きを整えましょう。
食事の栄養から「気」「血」「津液」を養うことは、健やかな肌づくりの基本です。肌の新陳代謝力を低下させないように暴飲暴食、冷たい飲食などは控え、脾胃の働きを整えましょう。
【気になる症状】
疲労感、息切れ、かぜを引きやすい、筋力の低下、食欲不振、消化不良
疲労感、息切れ、かぜを引きやすい、筋力の低下、食欲不振、消化不良
【おすすめ食材】
山芋、大豆類、にんじん、かぼちゃ、きのこ類、鶏肉 など
【おすすめ生薬】
薏苡仁(よくいにん)、人参、大棗(たいそう)、山査子(さんざし)、五行草(ごぎょうそう)
肌のポツポツから赤くなり、化膿や痒くなるような症状が現れたら、専門の医者や中医皮膚ケアが得意な薬局・薬店に相談しましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など