監修:楊 敏 先生(中医学講師)
よくわかる中医学vol.24
今回のよくわかる中医学のテーマは、私たちが健やかに過ごす手助けとなる「漢方薬」についてです。みなさんの身近にある漢方薬ですが、漢方薬とは何なのか、西洋薬とはどのような点が異なるのか、説明できる人は少ないかもしれません。知っているようで知らなかった「漢方薬」の魅力をお伝えします。
なぜ漢方と呼ぶのか?中医学が日本に伝えられた歴史
中国では、生薬を何千年も前から治療現場で使ってきました。この長い年月で重ねられてきた臨床経験と中国哲学をもとに、人の生理・病理・薬理など基本的な理論をまとめたものが「中国医学」(中医学)です。その治療に用いる生薬を「中薬」と言います。
中国医学は、遣隋使や遣唐使によって仏教などの文化とともに伝わってきました。明の時代になり、日本から留学した田代三喜(たしろさんき)が、金・元時代に流行していた「李朱学説」(理論や治療法)を持ち帰りました。後に、江戸時代初期まで日本の医学の大部分を占めた「後世派」の土台となったものです。
その後、古方派などさまざまな学派が成立し発展してきましたが、江戸時代の鎖国の影響で、明以後にうまれた中国医学の理論の中には日本に伝わってこなかったものもありました。
そして、1972年に日中平和友好条約が締結されてから、中国医学の理論も日本漢方に多く取り入れられるようになってきたのです。このようにして、漢方は日本の風土などの影響によって変化しながら、日本人の健康を守ってきました。
西洋薬と漢方薬の違い(1)西洋薬の特徴
急性疾患や原因が判明している病気に対して使われることが多いです。
西洋薬と漢方薬の違い(2)漢方薬の特徴
漢方薬とは、長い歴史の中で行われてきた臨床経験にもとづいて作られた生薬単体や生薬を組み合わせたもののこと。植物、動物、鉱物など自然界のものから構成されています。
例えば、植物は外敵や動物などの捕食から自らを守るため、進化の過程で自己防衛の成分を作ってきました。その分構造が複雑で多くの成分を持っているため、生薬としての有効成分も多いのです。未だすべての成分が把握されているわけではありません。
※生姜の特徴:体を温める、胃を健やかに保つ、魚介類の毒を抑えるなど
有効成分が多い分効き目がマイルドなものが多いと言われています。そのため、人の自然治癒力を向上させ、体内のアンバランスを整えることに長けています。比較的、慢性疾患や原因不明の病気、体質改善に使われることが多いです。
薬を選ぶとき、専門家に相談するのが望ましい理由
ここまでご紹介してきたように、漢方薬と西洋薬にはそれぞれ得意分野があり、メリットとデメリットがあります。専門知識に乏しい人が自己判断で服用すると、漢方薬・西洋薬問わず、副作用が出ることもあります。できるだけ素人判断せず、専門家に相談するようにしましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。