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体と心の休息が大事産後の主な6つの症状と養生

STUDY中医学の基礎

体と心の休息が大事
産後の主な6つの症状と養生

2021.11.16 UPDATE

長い妊娠期間を経て、念願の出産を迎えた後、お母さんは消耗した身体を十分に回復させる必要があります。産後の速やかな回復は、その後の健康維持のためにとても重要です。
中国では、産後の養生を「坐月子」(ツオユエズ)といい、産後1ヵ月は冷たい水を触らない、冷房・冷気を避けて温かくし、産後直後は洗髪もしないなど、昔から伝わる多くの養生法が今でも大切にされています。

中医学では、出産は赤ちゃんの他にも、出血や胎盤の娩出(後産)なども含め、身体の中のいらないものが体外へと出ていくと考えます。まずは失った気血を補うことが養生の基本となります。

【産後の注意点】
(1)冷たい飲食物を避ける。冷風冷気を避けて保温に心がける。
(2)活血・補気・補血の食材を取り入れて子宮と身体全体の回復を促す。
(3)過労・PCやスマートフォンの見過ぎ(眼の過労)・睡眠不足を避ける。
(4)周りの人の手を借りてゆっくりする時間を作り、ストレスをうまく発散する。
(5)授乳中の酒・たばこはもちろんNG。
(6)授乳2時間前からカフェイン飲料を飲むのはNG。
(7)新生児がいる部屋でアロマ(精油)を使うのはNG。アロマで気分転換するときは別室で。
(8)赤ちゃんと同じように、自分をやさしく労わってあげましょう。

ここからは産後のお悩み別に養生をお伝えしていきます。

産後のお悩み(1)なかなか終わらない悪露

産後約3週間は、子宮から剥がれ落ちた内膜・血液・分泌物などが悪露として排出されます。1ヵ月以上続く悪露や腹痛を伴う場合は、子宮がうまく回復できていないかもしれません。

【考えられる原因】
出産による「気虚」(エネルギー不足)、「瘀血(おけつ)」(血行不良)

【予防・改善方法】
補気・活血(エネルギーを補って血を巡らせる)

●おすすめ食材
しょうが、ねぎ類(長ねぎ・玉ねぎなど)、黒きくらげ、黒糖、紅花、なつめ、芋類(山芋など)、豆類(大豆など)、ほうれん草、小松菜、鶏肉、烏骨鶏、羊肉 など

●おすすめレシピ
羊肉のしゃぶしゃぶ(しょうが・長ねぎ・黒きくらげを入れて活血)
中国では「羊肉補血、効同地黄」(羊肉の補血作用は地黄(じおう)と同等である)と考えられ、約1700年前の医学書『金匱要略』には産後の悪露・腹痛・冷えに対する処方として「当帰生姜羊肉湯」が紹介されています。

●おすすめのお茶
しょうが&紅花のお茶に黒糖の甘味をプラス。ほうじ茶・麦茶・ハーブティーなどのノンカフェイン飲料もOK。

●養生のポイント
悪露の状態を毎日チェックして、常に外陰部を清潔に保ちましょう。身体を冷やさないように温かい飲食物を摂ったり、衣服の工夫をするなど保温も心がけて。

産後のお悩み(2)乳汁不足

中医学では「乳汁は白い血」といわれ、もともと血虚の方や高齢出産の方は、母乳のもとになる「血」が少なく乳汁不足の原因に。血は気から生じるため、気も不足した状態と考えられます。
 
【考えられる原因】
母乳のもとになる気と血の不足による「気血不足」
 
【予防・改善方法】
健脾・益気・補血(脾を健やかにし、気を充実され、血を補う)

●おすすめ食材
芋類(長芋・山芋など)、豆類(大豆・黒豆など)、なつめ、温かい牛乳、豚足・スペアリブ(気血を補い乳汁を増やす)、コイやフナ(健脾益気・消腫・通乳) など
 
●おすすめレシピ
豚足と大豆のスープ:豚足をスペアリブ、コイ、フナなどにアレンジしてもOK
※COCOKARAレシピ「豚足のスープ」
クリームシチュー:牛乳・鶏肉・ねぎ類・芋類・にんじん・マッシュルーム など
豆乳鍋:豆乳・骨付き鶏肉・ねぎ類・緑黄色野菜 など

●養生のポイント
効率よく気血を増やすには、食べ物を消化吸収する消化器系の働きがカギ。「食欲がある」「美味しく食べられる」「お通じが良い」などを目安に体調を整えましょう。

豚足のスープ

産後のお悩み(3)乳腺炎

哺乳中に乳房が紅く腫れ張って痛い状態。熱感を伴い、ひどくなると発熱することも。
 
【考えられる原因】
乳汁が出ないことで熱毒が鬱滞し「痰熱(たんねつ)」となって乳腺を塞ぐために起こる炎症。
 
【予防・改善方法】
 清熱・利湿・通絡(余分な熱を冷まし、湿を取り除き、乳腺の通りを良くする)

●おすすめ食材
大根、ごぼう、冬瓜、きゅうり、昆布、海藻、緑豆、緑豆春雨、もやし、ヘチマ、マコモ など

●おすすめレシピ
ヘチマと冬瓜と緑豆春雨のスープ:デトックスしながらおなかも温まります

●おすすめのお茶
タンポポとドクダミのお茶、クチナシ茶、ハブ茶 など

●養生のポイント
産後に脂っぽいものや甘いものを摂りすぎると、痰熱が生じて乳腺炎になりやすいので気をつけましょう。もともと痰湿タイプの人も要注意。体質チェックを参考に。

産後のお悩み(4) 汗をだらだらかく

少し動いただけで汗をだらだらかく、寝汗がひどい、身体がだるく、ひどくなるとゾクゾクしてかぜ気味になる。
 
【考えられる原因】
汗とともに気が体外に出て「気虚」を招き、「気虚」が進行して汗が止まりにくくなっている状態。
 
【予防・改善方法】
健脾・益気(脾を健やかにして気を充実させる)

●おすすめ食材
芋類(長芋・山芋など)、辛味野菜(玉ねぎ・長ねぎ・しょうが など)、きのこ類(しいたけ・しめじ・エリンギ など)、緑黄色野菜(にんじん・ピーマン など)、キャベツ など

●おすすめレシピ
具だくさんの野菜スープ:芋類を中心に、ねぎ類・きのこ類・緑黄色野菜をたっぷりと

●おすすめのお茶
五味子茶(益気・収斂)
 
●養生のポイント
汗とともに失った水分はすみやかにチャージ。おなかにやさしく気を補う芋類もおすすめです。収斂作用のある「酸味があるもの」も積極的に取り入れるといいですね。

五味子茶

産後のお悩み(6)産後うつ

憂鬱・不安・いらいら・怒りっぽい・突然泣き出す・やる気が出ないといった症状が出ます。
 
【考えられる原因】
妊娠・出産・育児による心身疲労が重なって自律神経が失調した「肝欝気滞(かんうつきたい)」
 
【予防・改善方法】
疎肝・理気(肝の巡りを良くして気の滞りを緩和する)

●おすすめ食材
香味野菜(春菊・三つ葉・セロリ など)、柑橘類(オレンジ・グレープフルーツ など)、ハーブ類(ミント・カモミール など)

●おすすめレシピ
セロリとイカの炒め物:理気作用のあるオレンジの皮を入れると爽やかになりおすすめ
ゼリー・オレンジピールなどオレンジ入りのスイーツ
 
●おすすめのお茶
ローズティー(玫瑰花茶)、お好みのハーブティー など
 
●養生のポイント
育児は家族共同で行うもの。1人でがんばりすぎず、時には周りの人の手を借りて、ゆっくりと休息の時間も作りましょう。

その他、便秘もよくあるお悩みの一つです。
出産時の出血や授乳などによって、体内の陰血が少なくなります。母乳は血からつくられるため、授乳を続けている間は「血虚腸燥(けっきょちょうそう)」による便秘になりやすいといえます。
対策・養生については、前回の「妊娠中の養生・便秘」をご覧ください。

PROFILE

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。

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