よくわかる中医学vol.23-時間を活用したセルフケア「子午流注」- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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よくわかる中医学vol.23
-時間を活用したセルフケア「子午流注」-

2019.06.18 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.23

夜更かしをすると不眠になったり、海外旅行で時差ボケしたりすることはありませんか?これは人間の体に備わった「体内時計」が環境や生活の変化によって狂ってしまい、体の不調となってあらわれてしまったためです。

2017年に米国の科学者が体内時計を生み出す遺伝子機構を発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞して話題になりました。また近年、薬をいつ飲むかによって効果や副作用がどう変化するのかをみる「時間薬理学」という学問も誕生し、現代医学において、時間と体の関係が注目されています。
しかし、実は中国では約二千年前から、時間の流れとその時間にふさわしい養生法がすでに示されていました。今回はこの時間と養生の考え方「子午流注(しごりゅうちゅう)」についてお伝えします。

時間と体の働きの関係「子午流注」とは

約二千年前の、中医学のバイブルといえる医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」は、人間は季節・気候の変化に順応すれば健康を保つことができるという「天人合一(てんじんごういつ)」の考え方をもとに書かれており、時間の流れとその時間にふさわしい養生法が示されています、この時間と体の関係が、明の時代に学説として完成されたものが「子午流注(しごりゅうちゅう)」です。
下の図は「子午流注」を図で示したものです。
体内の気血は、1日を12分割した時刻でそれぞれに対応する臓腑を順番に巡り、全身のすみずみを流れていると考えられています。特定の時刻になると対応する臓腑における気血の働きが活発になり、その時刻を過ぎると気血の働きが衰えるため、その特徴を生かして養生するとより効果的であるとされています。

子午流注による理想的な生活リズム・深夜~朝

ここからは、それぞれの時刻に合わせた養生について詳しくみていきましょう。【子丑の時間:23時~3時】

・子の刻:胆経
・丑の刻:肝経
「肝(かん)」(肝臓)は新陳代謝を行い、消化吸収を助ける胆汁を作り出して、栄養を蓄えたり解毒したりしています。23時前に就寝することでこれらの働きが活発に。
夜更かしすることで、新陳代謝や解毒の働きがうまく働かず、顔色が悪い、目の下のクマ、顔にしみができやすいなどの症状があらわれやすくなります。また、心疾患の発作は夜に起きやすいため、心臓の弱い方は特に23時前に就寝するよう心がけましょう。
【寅卯の時間:3時~7時】
・寅の刻:肺経
・卯の刻:大腸経
寅の刻に深い睡眠をとっていると深い呼吸がしやすく、朝にスッキリと目覚めることができます。一方、呼吸器系が弱い方はこの時間帯に咳や喘息などの発作が起きやすいと言われています。
また、卯の刻は大腸の運動が盛んになるため、散歩や軽いストレッチなど朝の運動は、排便を促すのに最適です。

子午流注による理想的な生活リズム・昼

【辰巳の時間:7時~11時】
・辰の刻:胃経
・巳の刻:脾経
消化器系の働きが活発になり、消化吸収が盛んに行われる時間です。だからこそ、栄養を吸収するためにしっかり朝食をとることが大切です。
夕食が遅いと、翌朝に食欲が湧かず朝食を抜いてしまいがちな方は要注意。朝食を食べない生活が続くと、体が栄養を吸収できず、冷え、貧血のもととなります。夕食が22時以降になってしまうときは、なるべく消化吸収の良い野菜のスープ、サラダなどにして、朝にしっかり食べるよう心がけると良いでしょう。
【午未の時間:11時~15時】
・午の刻:心経
・未の刻:小腸経
午の刻の昼食後、15分程度の仮眠をとることで、「心(しん)」(心臓)が司る「神(しん)」(精神)を養い、午後の仕事や勉強を効率よく行うことができるとされています。
また、正午の時間は特に血液の粘土が高くなり、心臓に負担がかかりやすいと言われています。心臓が弱い方はこの時間帯に血液をサラサラにする作用のある漢方薬を飲むと良いと考えられています。

子午流注による理想的な生活リズム・夜

【申酉の時間:15時~19時】
・申の刻:膀胱経
・酉の刻:腎経
腎は排泄を司る臓腑なので、この時間帯は排尿によって体の毒素を排出するのに最適とされています。利尿作用のある黒豆茶などを摂ることで、尿の排泄を促すと良いでしょう。また、腎を補う漢方薬や食材はこの時間に摂るようにするとより効果的とされています。
【戌亥の時間:19時~23時】
・戌の刻:心包経
・亥の刻:三焦経
黄帝内経において「諸痛痒瘡、皆属於心」とあり、すべての痛み、痒みを伴う皮膚疾患は心に属するとされています。心包は、心を邪気から守る役割を担っているため、戌の刻には皮膚の痛み、痒みを感じやすいと考えられています。特にアトピー性皮膚炎、湿疹などがある方は、会社や学校から帰って一段落ついたこの時間帯にかゆみを感じやすいです。スキンケアをして、リラックスできるミントティーやハーブティーなどでストレスの解消を促すと良いでしょう。
子午流注の考え方は、自然の流れに体のリズムを合わせるというとてもシンプルな養生です。無理をしてすべての時間に合わせる必要はありません。できることから「子午流注」で時間のセルフケアを実践してみましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。