監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.30
睡眠不足が続き、ふと鏡を見ると肌がどんよりくすんでいる…。なにかと忙しい毎日を過ごしていると、そんな経験をすることも多いのではないでしょうか。
睡眠は、体の健康はもちろんのこと、肌の状態とも密接に関わっています。睡眠不足や肌荒れが気になる人は、まず日々の眠りを見直すことが大切。美肌を育てる中医学流睡眠術で、いきいきとした健康美肌をめざしましょう。
美肌は睡眠でつくられる
(1)眠りと肌の関係
質の良い睡眠は、健やかな肌を保つ上でとても大切なこと。なぜなら、睡眠中には体をメンテナンスするさまざまなホルモンが分泌されているからです。
中でも肌の状態と関わりが深いのは「成長ホルモン」。成長ホルモンには、体の発育を促すだけでなく、組織や細胞を修復・再生し、新陳代謝を促す作用があります。つまり、睡眠中に分泌される成長ホルモンによって、肌のターンオーバーが活性化。皮膚細胞が生まれ変わり、健やかな肌がつくられているのです。
また、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」も、美容と健康に欠かせないホルモン。気持ちをリラックスさせて眠りを促すほか、高い抗酸化作用でアンチエイジング効果を発揮します。
(2)「質の良い睡眠」が美肌のカギ
健やかな肌を保つために、睡眠は欠かせないもの。ただし、単に「寝ればいい」というわけではなく、質の良い睡眠をとることが大切です。
睡眠中は、「レム睡眠」(体は休んで、脳は活動している状態)と「ノンレム睡眠」(体も脳も休み、細胞の修復が行われている状態)が交互に訪れます。これを約90分周期で4〜6回繰り返し、徐々に眠りが浅くなって目覚めるのが理想的な睡眠です。
肌にとって最も重要なのは、寝入ってすぐ(1.5〜3時間)に訪れるノンレム睡眠の時間。この深い睡眠中に、成長ホルモンなどが大量に分泌され、肌のリセットが行われるのです。
(3)睡眠不足が招く肌トラブル
睡眠不足が続くと、成長ホルモンなどの分泌量が低下。新陳代謝が悪くなり、皮膚細胞も再生されにくくなります。その結果、目の下のくま、くすみ、しみ、毛穴が目立つ、吹き出物、かゆみの悪化、皮膚病の悪化といった肌トラブルが起こりやすくなります。
肌を整える中医学的ゴールデンタイムって?
中医学的には、「子午流注」(しごりゅうちゅう)という考え方があります。「子午」は時刻、「流注」は臓腑の気血の流れを意味する言葉。子午流注は、1日を12等分して十二の臓腑を対応させ、“どの時間帯にどの臓腑の気血の運行が盛んになるか”を表しています。
【肌の睡眠ゴールデンタイム】
23時から3時の間は、肌のコンディションを整えるための大切な時間です。また、23時に就寝すれば、その後1.5〜3時間は成長ホルモンやメラトニンの分泌が盛んになるメリットも。
・23時〜1時
「胆」の気血運行が盛んな時間。胆は新陳代謝と関わる臓腑。この時間に眠ることで、肌のターンオーバーやデトックスが促されます。
「胆」の気血運行が盛んな時間。胆は新陳代謝と関わる臓腑。この時間に眠ることで、肌のターンオーバーやデトックスが促されます。
・1時〜3時
「肝(かん)」(肝臓)の気血運行が盛んな時間。肝はストレスを発散させ、血を貯蔵する臓腑。この時間に眠ることで、気持ちがリラックスし、肌に潤いや栄養を与える血が養われます。血色のある瑞々しい美肌づくりに重要です。
「肝(かん)」(肝臓)の気血運行が盛んな時間。肝はストレスを発散させ、血を貯蔵する臓腑。この時間に眠ることで、気持ちがリラックスし、肌に潤いや栄養を与える血が養われます。血色のある瑞々しい美肌づくりに重要です。
【肌と関わるその他の時間】
・3時〜5時
「肺」の気血運行が盛んな時間。肺は体内の「気」(エネルギー)を司る臓腑。この時間に眠ることで、肌のバリア機能が強くなり、弾力アップにもつながります。
「肺」の気血運行が盛んな時間。肺は体内の「気」(エネルギー)を司る臓腑。この時間に眠ることで、肌のバリア機能が強くなり、弾力アップにもつながります。
・5時〜7時
「大腸」の気血運行が盛んな時間。大腸はデトックス器官です。この時間に眠って大腸の働きを整えれば、排便もスムーズになり、肌の調子も良くなります。
「大腸」の気血運行が盛んな時間。大腸はデトックス器官です。この時間に眠って大腸の働きを整えれば、排便もスムーズになり、肌の調子も良くなります。
睡眠のNG習慣
・寝る前のスマホやテレビ
スマートフォンやテレビは光が強く、脳を覚醒させてしまいます。スマホやテレビを見るのは「就寝1時間前まで」が理想です。
・布団に入って考えごと
今日の反省をしたり、あれこれ思い悩んだり……。夜はつい考えごとをしがちですが、頭を使うと交感神経が優位になり、眠りにくい状態に。寝る前は、なるべく気持ちを切り替えましょう。
・21時過ぎの運動
夜の運動は21時より前に。体が休息モードに入る時間帯に運動をすると、交感神経が優位になって目が冴えてしまいます。
・午後のカフェイン
カフェインには覚醒作用があるため、夜のコーヒーやお茶は睡眠の妨げに。午後2時を過ぎたら、カフェインは控えめが安心です。
・寝る前の本や映画
おもしろい本を読んだり映画を観たりすると、脳が興奮して眠りにくくなります。寝る前は、なるべくリラックスして過ごすよう心がけましょう。
・たっぷりの夜ご飯
夕食をたっぷり食べて満腹になると、寝る時間になっても胃腸が働いて不眠を招く要因に。夜は軽めの食事を心がけ、胃腸に負担がかからないようにしましょう。
睡眠のおすすめ習慣
・香りの効果でリラックス
アロマやハーブティーなどを上手に使って、香りを楽しみながら気持ちをリラックス。ジャスミン、シナモン、ユーカリ、柑橘類、チョウジ、トウキなどの香りがおすすめです。
・入浴で体をポカポカに
湯船につかって体を温め、疲れた心身をリラックスさせましょう。ただし、熱いお湯は交感神経を優位にしてしまうので気をつけて。入浴剤には、香りの良い「瑞花露ボディケア入浴液」がおすすめです。
・起床後や昼間は日光を浴びる
光を多く浴びることによってセロトニンの分泌が増え、睡眠を良くするメラトニンの増量に繋がります。
睡眠の質を高めるためには、食事や生活習慣に気を配ることが大切。睡眠の妨げになるような習慣は積極的に改善し、毎日快眠! を心がけましょう。
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この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など