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よくわかる中医学vol.14-中医学治療の特徴「弁証論治」-

STUDY中医学の基礎

よくわかる中医学vol.14
-中医学治療の特徴「弁証論治」-

2018.09.18 UPDATE

よくわかる中医学vol.14

約2千年前から成立しているオーダーメイド医療「弁証論治」

よくわかる中医学シリーズ、今回のテーマは中医学治療の特徴である「弁証論治(べんしょうろんち)」です。

近年、オーダーメイド医療やテーラーメイド医療といった個別化医療に関する話題をよく耳にします。実は、約2千年前から成立してきた中医学の「弁証論治」の治療システムは、まさに個別化医療の草分け。一人ひとりの体質や、病気の原因、発病のプロセスを分析し、それに基づいた適切な改善法を選びます。

今回はこの「弁証論治」について、「かぜ」と「生理痛」の対処法を例に詳しくご紹介していきます。

「弁証論治」とは、体質や症状の原因を探る治療法

「弁証論治」という言葉、日本では馴染みのない熟語ですよね。それぞれの漢字に意味が込められていて、読み解くと中医学の治療の流れがわかります。

「弁」:弁別・分析のことで、患者の自覚症状や他覚的に見た様子などを詳しく識別・分析すること
「証」:個々の体質や症状の現れ方で見た、病気の各段階の主な原因、発病の過程をまとめたもの
「論治」:「証」にもとづいて、治療を行うこと

弁証(診察)には、4つの方法が用いられ「四診(ししん)」と呼ばれています。
「望診(ぼうしん)」:顔色、動作などを観察すること
「聞診(ぶんしん)」:声色や質問に対するその受け答え方など、聴覚によって情報を得ること
「問診(もんしん)」:症状や生活習慣など、必要な情報を質問して、その回答から情報を得ること
「切診(せっしん)」:体の一部に触れて情報を得ること、主に「脈診」「腹診」が使われる

これらの弁証によって、症状・体質などを分析し、「証」を見立てます。
「証」をもとに改善方針を決め、漢方薬や生薬を選ぶことが「論治」です。それぞれの方に合った食養生など生活習慣のアドバイスも「論治」に含まれます。

弁証論治の例(1)かぜの場合「かぜといえば葛根湯とは限らない」

かぜにもタイプがあり、それぞれのタイプで適切な薬が異なります。「かぜといえば葛根湯(かっこんとう)」とよく聞くフレーズですが、必ずしも葛根湯が合うとは限りません。

かぜの「証」は代表的なものとして3タイプあります。
(1)「寒」のかぜ
寒気が強い、頭痛、鼻水が薄い、舌が白っぽい
※「葛根湯」は主に「寒」のかぜで使われることが多いです

(2)「熱」のかぜ
熱が高く寒気がある、鼻水が粘っこい、喉が赤く腫れて痛い、舌先が紅い
(3)「湿」のかぜ
胃のムカつき、吐き気、痛み、下痢

「かぜ」に関する詳しい養生はこちらのページをご覧ください。

このように、「かぜ」とひとえに言ってもいくつものタイプがあります。また、もともとの体質もあり、合わない薬を使うと症状が悪化してしまうこともあるのです。なので、自己判断せず、漢方薬局・薬店など専門家による適切な「弁証論治」が大切になってきます。それぞれの証に合った漢方薬の提案を受けることをおすすめしています。

弁証論治の例(2)生理痛の場合「冷え性や不妊症を招く要因」

日本では鎮痛剤で生理痛を抑える女性が多いです。しかし、鎮痛剤は痛みを一時的に緩和する薬なので、根本的な原因の解決にはなりません。生理痛の慢性化は、「気」(エネルギー)と「血(けつ)」の消耗、巡りの悪化に繋がり、冷え性や不妊症の要因になってしまう可能性があります。

生理痛が起きてしまう原因と過程には2つのパターンがあると中医学では考えます。
・不通則痛(ふつうそくつう)
冷えや精神的なストレスを受け、気血の流れが滞ることにより痛む。
・不栄則痛(ふえいそくつう)
虚弱体質、少食、食べ物に好き嫌いが多い、無理なダイエットなどによって気血が不足し、子宮に栄養が行き渡らなくなってしまったことにより痛む。

生理痛の「証」は代表的なものとして3タイプあります。
(1)気滞血瘀(きたいけつお)タイプ
ストレスや精神的な不安によって気血の流れが滞り痛む。過労、睡眠不足を避けてストレスを解消しましょう。
(2)寒邪(かんじゃ)タイプ
体の冷えや冷たいものの摂り過ぎによって気血の流れが滞り痛む。アイスクリーム、氷が入った飲料、冷たいビールなどを控えましょう。
(3)気血虚弱(きけつきょじゃく)タイプ
過労や少食、食べ物に好き嫌いが多い、無理なダイエット、先天的な虚弱などによって気血が不足して、子宮に栄養が届かず痛む。食事の不摂生は避けましょう。

「生理痛」(月経痛)に関する詳しい養生はこちらのページをご覧ください。

弁証論治では、人それぞれの体質を考慮し、対処法も変えていきます。体質が改善されると、生理痛に関連する不妊などのさまざまな症状の改善にもつながります。

弁証論治は不調を探るカギ!

これまで挙げてきたように、人の生活習慣や体質などによって対処法が異なります。「弁証論治」によっては「同病異治(どうびょういち)」「異病同治(いびょうどうち)」をもたらすことも。

・同病異治:同じ病気でも、体質などによって、病気の原因や発病のプロセスが異なるので、対処方法が異なること
・異病同治:異なる病気でも、体質などによって、病気の原因や発病のプロセスが同じであれば、対処方法が同じになること。

このように、中医学は弁証論治によって、それぞれの証を見極めて、それに基づき体質を改善していく医学です。偏った体質は一つの症状だけでなく、体のさまざまな不調の原因になります。体質を改善すれば、異なる病気であっても同時に改善されることがあるのです。
また、体質の改善は、不調を感じるけれど原因がわからない「未病(みびょう)」の予防にもなり、将来起こりうる疾患を未然に防ぐことにも繋がります。
オーダーメイドの個別化医療でありながら、将来のための予防にもなる点が中医学の魅力の一つです。

PROFILE

中医学講師楊 敏 先生

上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。

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