中医学の知恵で改善!月経前症候群(PMS)3つのタイプ別養生法 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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中医学の知恵で改善!月経前症候群(PMS)
3つのタイプ別養生法

2021.09.21 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は、月経3~10日ぐらい前に精神的・肉体的に様々な症状が現れ、月経がはじまると軽減、または消失する女性特有のお悩み。イライラ、急に悲しくなる、むくみ、過食など、症状に個人差はありますが、重くなると仕事や日常生活に支障をきたすことも…今回は、女性のお悩みに多いPMSについて症状別の予防・改善法をお届けします。

PMSに対する中医学的な考え

月経周期は女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の変化と深く関係します。中医学では、性ホルモンを支える物質的なものを「精・血」と捉えますが、性ホルモンをバランス良く動かすのは、「女性の先天」と言われる「肝(かん)」の働きです。
「肝」は自律神経のバランスや性ホルモンのバランスをコントロールしていますが、実はストレスにとても敏感に反応する臓。
肝がストレスやプレッシャーによって上手く働かなくなると、気の流れは悪くなり、性ホルモンのバランスが崩れ、PMSを引き起こしやすくなるのです。さらに水分や血を動かす「気」が滞ると、血の流れや水の代謝にも影響を与え、様々な症状となって現れます。

PMS症状別のセルフチェック

PMSの症状はさまざま、また症状の重さは人によっても異なります。まずは、下の表で自分がどのような症状が出やすいのかセルフチェック。チェックが多いほど、症状が重い状態です。これから3つのタイプに分けて養生法をお伝えするので、ぜひ参考にして自分に合った対策を取り入れてくださいね。

【セルフチェック】
●精神面
□急に悲しくなる
□憂鬱不安、苛立ち
□怒りっぽい、家族に八つ当たりする
□やる気がない
□集中力がない
□仕事や家事がはかどらない
□夜にぐっすり眠れない

●肉体面
□体がだるい
□頭痛、肩こり
□胸が張る、乳首が痛い
□むくみ
□肌荒れ
□腹部の痛みや不快感
□便秘または下痢
□食欲不振または過食

(1)精神的な症状が多いタイプ

【気になる症状】
月経が近くなると情緒が激変する、急に悲しくて泣き出しそうになる、憂鬱・不安または苛立ち、怒りっぽくなり人に八つ当たりする、胸が張る、乳首が痛い、腹部が張ってガスが溜まりやすい、便秘、頭痛、肩こり、肌荒れ、集中力がない、夜に眠れない など

【考えられる原因】

「肝失疏泄(かんしつそせつ)」・「気滞瘀血(きたいおけつ)」
肝がうまく疏泄できずに気が滞り、気分が落ち込みやすい状態。また、情緒不安定で感情が爆発しやすい。気の滞りは血の流れにも影響するので、瘀血(血行不良)の状態にもなりやすい。

【予防・改善法】

●疎肝・理気・活血の食材を取り入れる
春菊、三つ葉、セロリ、みょうが、バジル、玉ねぎ、ニラ、イカ、タコ、あさり、しじみ、黒きくらげ、オレンジ、みかん、グレープフルーツ、柚、ミント、バラ、陳皮(乾燥したみかんの皮)、ラベンダー、カモミール、クチナシ、サフラン、ウコン など
●おすすめレシピ
・気の流れを改善し、気持ちを落ち着かせる「ミントとバラのお茶」
憂鬱・不安、苛立ち、怒りっぽい、胸が張る、乳首が痛いときに。カフェイン含有量の多いコーヒーの代わりにするのもおすすめ。
・気と血の流れを促す「イカ、タコ、あさりのサフランパエリア」
頭痛・肩こりに。

頑張り屋さんやまじめな方に多いタイプ。月経前は、仕事や生活のスピードを少し落とし、無理せずにゆとりあるリラックスした時間を過ごしましょう。

(2)むくみタイプ

【気になる症状】
月経が近づくとむくみやすくなる、体が重だるい、やる気がない、排尿がスッキリしない、軟便・下痢になりやすい など
【考えられる原因】
●気滞水停(きたいすいてい)
気が滞ると、水分代謝に影響し水が体内に滞留しやすくなる。
【予防・改善法】
●理気・利水の食材を取り入れる
しょうが、玉ねぎ、ねぎ、らっきょう、とうもろこし、冬瓜、白菜、大根、枝豆、空豆、インゲン、小豆、大豆、黒豆、緑豆もやし、春雨、ハマグリ、スズキ、はとむぎ、烏龍茶、プーアール茶 など
●おすすめレシピ
・利水作用のある「大根・春雨・とうもろこしのサラダ」
むくみ、体が重だるいときに。
・気を補い、利水作用もある「スズキのソテー、空豆添え」
やる気がでないときに。
・利水作用の高い「黒豆とハトムギのお茶」
排尿がスッキリしないときに。
飲み過ぎの人、あまり汗をかかない人に多いタイプ。水分など飲み物の摂りすぎを避け、塩分を控えめに。また、適度な運動を行い、発汗を促して新陳代謝を高めましょう。

(3)胃腸の症状が多いタイプ

【気になる症状】
月経が近くなると食欲が急に増加、甘いものを無性に食べたくなる、または食欲不振、吐き気、体がだるい、やる気がでない、便秘または軟便下痢しやすい など
【考えられる原因】
●肝失疏泄(かんしつそせつ)・肝欝乗土(かんうつじょうど)
肝の疏泄機能の異常により肝に熱が発生して、五行説の相克関係にある「脾胃」(消化器系)の消化機能がダメージをうけた状態。
【予防・改善法】
●疎肝・理気・健脾・助運の食材を取り入れる
ねぎ、しょうが、苦瓜、玉ねぎ、山芋、長芋、じゃがいも、にんじん、キャベツ、アスパラガス、ブロッコリー、鶏肉、うなぎ、さんま、にしん、かつお、さわら、まぐろ など
●おすすめレシピ
・肝の熱を冷ます「苦瓜とにんじんの炒め物」
過食タイプさんに。
・食物線維が多く、腸のぜんどう運動を促す「玉ねぎ、にら、もやしの炒め物」
腹部の張り、便秘に。
・胃腸に優しい「鶏肉、長芋、にんじんの煮物」
食欲不振、吐き気、軟便下痢に。
普段から胃腸の弱い人がなりやすいタイプ。暴飲暴食、冷飲冷食、偏食、無理なダイエットを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
※上記3つのタイプを兼ねる場合もあります。

【気と血の流れを良くしてPMSを緩和できるツボ】
・合谷(ごうこく):手の甲、人差し指の骨のキワ
・太衝(たいしょう):足の甲、親指と第二指の骨が接する付け根

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。