監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
普段から下痢をしやすかったり、よく腹痛を起こしたり……。いわゆる“お腹が弱い”体質に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。急な便意や腹痛は、トイレの不安もつきまとってとてもつらいもの。日常生活にも影響してしまうので、日々の食生活から体質を整え、お腹を健やかに保ちましょう。
現代の生活は「脾胃」に負担がかかりやすい!
腸の働きは、中医学では「脾胃」の「受納・運化」「昇清・降濁」という機能にあたります。受納・運化は、飲食物を消化、吸収し、体に必要な気・血・津液を生み出す働き。昇清は、吸収した栄養や生み出した気血を体の上部(心、肺、頭など)へ届け、降濁は残った不要なものを腸へ下ろす働きです。このように、脾胃は体を育む基盤となる臓腑。その特徴から五行では「土」にあたり、“温かさを好み、冷え・湿を嫌う”とされています。
下痢をしやすい体質は、こうした脾胃の働きの低下が大きな要因に。現代の生活には脾胃のダメージとなるさまざまな原因があり、日常生活では主に次のような点に注意が必要です。
<脾胃の不調を招く主な原因>
● 冷たいものの摂り過ぎ
脾胃は冷えに弱い臓腑。冷えたビールやアイスクリームなど、冷たいものを摂り過ぎると働きが悪化して、下痢を起こす要因となります。
● 暴飲暴食
食べ過ぎ飲み過ぎは脾胃の大きな負担となります。体重を増やそうと無理して食べることもNG。自分に合った適切な量を食べることが大切です。
● ストレス
過剰なストレスは「肝」のダメージに。五行では肝は「木」、脾胃は「土」にあたり、その働きは互いに深く関わっています。そのため、肝に不調があると脾胃にも影響し、下痢が起こりやすくなります。
● 食生活の乱れ
よく噛まずに早食いをしていると、脾胃に負担がかかります。また、食事の間隔が不規則だったり、夕食の時間が遅過ぎたりすることも、脾胃が疲れる要因となります。
● 過労・睡眠不足
過労や睡眠不足が続くと、体内の「気」(エネルギー)を消耗するように。すると、脾胃のエネルギーも不足してしまうため、機能が低下して下痢を起こしやすくなります。
原因別の対処法 〜「脾胃」を整えて下痢をしにくい体質に〜
下痢をしやすい主な体質は、脾胃のエネルギーが不足する「脾胃気虚」と、ストレスが影響する「肝うつ気滞」。同じように下痢をしやすくても、原因となる体質が異なれば対処法も変わります。症状から自分のタイプをチェックして、適切なケアで下痢体質を改善していきましょう。
●「脾胃気虚」タイプ
脾胃のエネルギー不足で働きが弱くなり、下痢をしやすくなります。食後やお腹が冷えたときなどに、すぐにトイレに行きたくなることの多いタイプです。
<主な症状>
胃がしくしく痛む、食が細い、軟便、下痢、痩せ気味または水太り、むくみ、お腹や手足の冷え、疲れやすい、めまい、舌の色が淡く腫れぼったい、舌苔が薄く白い
<おすすめ食材>
長芋、じゃがいも、ねぎ、しょうが、大葉、キャベツ、かぼちゃ、にんじん、きのこ類、大豆、ふじ豆、卵、鶏肉、牛肉、うなぎ、蓮の実、なつめ、サンザシ、金木犀、シナモン、八角 など
〜おすすめ料理〜
*蓮の実入りの肉じゃが
*金木犀となつめのお茶
●「肝うつ気滞」タイプ
過度なストレスで肝の機能が低下し、気の巡りが滞りがちに。気の停滞が続くと脾胃にも十分に気が巡らず、働きが落ちて下痢をしやすくなります。緊張やプレッシャーを感じると、トイレに行きたくなることが多いタイプです。
<主な症状>
イライラ、憂うつ、不安感、食欲のムラ、軟便、下痢、下痢と便秘が交互に起こる、お腹の張り・痛み、ゲップやガスが多い、月経不順、PMS、舌の両側がやや紅い、舌苔が薄白または黄
<おすすめ食材>
春菊、みつば、せり、セロリ、パクチー、ピーマン、ししとう、いか、たこ、あさり、しじみ、牡蠣、くらげ、柑橘類、梅干し、金柑、ミント、陳皮、菊花、ローズ、ジャスミン など
〜おすすめ料理〜
*春菊としめじのみそ汁
*セロリ、ピーマン、いかの炒めもの
【食養生ワンポイント】
体質に関わらずおすすめなのが、納豆、みそ汁、ぬか漬け、ヨーグルトなどの発酵食品。脾胃の働きをよくする、自律神経を整える、といった効果が期待できるので、日々の食事に取り入れてみてください。
☆ヨーグルトは体質に合わないことも。下痢が悪化する場合などは食べないようにしましょう。
暮らしのケア
(1)日々の食事は、脾胃の状態と密接に関わります。次のポイントに注意して、脾胃になるべく負担をかけない心がけを。
・食べ過ぎず飲み過ぎず、腹八分目を意識して。
・脂っこいもの、刺激物、冷たいものは控えめに。
・早食いをせず、一口30回を目安によく噛むことを意識して。
・食事の時間は規則正しく。夕食は早めに摂り、就寝前の3時間はなるべく食べない。
(2)体の保温を心がけ、特にお腹まわりを冷やさないように。飲食も、なるべく温かいものを摂るよう心がけましょう。
(3)休息、睡眠をしっかり取って。気の消耗を防ぎ、脾胃の働きを健やかに保ちましょう。
(4)日々のストレスはこまめに発散。気持ちを落ち着かせたいときは、深呼吸も効果的です。
(5)適度に体を動かすことで、脾胃の動きを活発に。ウォーキング、ヨガ、ピラティスなど、無理なく続けられる有酸素運動がおすすめです。
<下痢予防におすすめのツボ>
● 気を補い、脾胃を整える
足三里(あしさんり):膝の皿の下、外側の窪みから指4本分下
● ストレスを和らげ、肝を整える
太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が交わるところの窪み
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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