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中医美容と養生

思いはこころに秘めて 静かに穏やかに
冬のメンタルケア

2025.11.04 UPDATE

冬のメンタルケア 女性

監修:楊 紅娜(中医学講師)

楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.36

こんにちは。中医薬大学で修士号を取得し、中国で10年間精神科臨床医としての経験を積んだ楊紅娜です。
秋が深まり、もうすぐ季節は冬。クリスマスやお正月などにぎやかなイベントが楽しみなシーズンですが、自然に目を向けると木々は葉を落とし、吹く風は冷たく、なんだか気分が落ち込みがちになることも。そんな状態が続くと“冬季うつ”などを招いてしまうケースもあるので、中医学の知恵で冬を上手に過ごし、メンタルを健やかに保ちましょう。

冬の女性

こころも体も。静かに過ごして「陽気」を蓄える

二十四節気の「立冬」から「立春」。この3か月を中医学では冬と捉えます。冬は万物が門戸を閉ざし、「陽気」(エネルギー)を内に蓄える「閉蔵」の季節。草木が枯れ、動物が冬籠りをするように、人もあまり行動的にならず、静かに過ごすことが大切です。そうすることで陽気を守り、エネルギーを充実させて、春の活動に備えるのです。

陰陽の季節変化

季節養生の方針
古典の医学書『黄帝内経』では、冬の養生について次のように説いています。
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冬の3か月は万物が閉蔵する季節。水は氷となり、大地は凍てつく。この期間は早寝遅起きを心がけ、太陽が昇ってから活動するのがよい。気持ちを鎮め、志は内に秘め、大切なものを守るように満足して過ごす。寒さを避け、暖を求め、皮膚の腠理を過度に開いて陽気を発散させてはならない。これが冬に適応した「養蔵」の過ごし方である。逆らえば「腎」を損ない、春に必要な陽気が不足し、萎厥の病(手足の冷え、気力・体力の衰えなど)が生じる。
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ポイントは青線部分で、まとめると以下の通りです。
・夜は早めに寝て、朝は遅めに起きる。活動するのは太陽が昇ってから。
・気持ちを鎮める。「何かをやろう」という行動的な思いは内に秘め、心静かに過ごす。
・寒さを避け、身体を温かく保つ。
・陽気を消耗しないよう、過度に汗をかかない。

 

中医学の養生は、四季の陰陽変化に応じて体を整えることが基本。『黄帝内経』では“聖人(健やかな心身を保つ人)は、春夏に陽気を養い、秋冬は陰気を養う”としています。「陰」は陽気を内に納めて静かに過ごすことで自然と養われるので、冬の養生法に応じて心身ともに落ち着いて過ごすことが大切です。

 

★“自然との調和”については、下記「あわせて読みたい」の記事で詳しく紹介しています。

気分が落ち込む、気力がない…。冬に多いメンタル不調

冬は体内の陰気が最も盛んになり、陽気は落ち着いて内に納まります。こうした陰陽バランスに応じて静かに過ごしていれば、メンタルは安定して気持ちも穏やかに。反対に、この時期をむやみに活発に過ごしてしまうと、少ない陽気をさらに消耗することに。その結果、こころのエネルギーが足りなくなって、やる気が出ない、気分が落ち込むといったメンタル不調を起こしやすくなるのです。こうした状態は、いわゆる“冬季うつ(ウィンターブルー)”を招く要因にもなるので注意が必要です。

 

冬に起こりやすいメンタル不調は…
□ 気分の落ち込み
□ 気力がない、やる気が出ない
□ ものごとを楽しめない
□ 疲れやすい
〜冬季うつの症状〜
□ 過眠傾向
□ 過食傾向
□ 体重の増加

欲張らず、気持ちを鎮めてこころのエネルギーを守る

冬のメンタルを安定させるポイントは “陽気を守る”こと。こころのエネルギーをむやみに消耗せず、静かな気持ちで過ごすことが大切です。イベントごとが多かったり、新年を迎えたり。そんな年末年始は“あれもやりたい! これを目標に!”と意気込みがちですが、感情はなるべく抑え、思いはこころの中に秘めておきましょう。

 

<冬のメンタル・3つのポイント>
[1]無欲無求でこころのエネルギーを守る
欲があって何かを求めると、感情が動いてこころのエネルギーを消耗してしまいます。なかなか難しいことですが、なるべく欲を持たず、気持ちを静かに保つことを意識しましょう。

[2]思いは内に秘め、内面に集中
いろいろな思いはこころの中に秘め、なるべく表に出さないように。この時期は内面に集中し、自分とじっくり向き合う期間と捉えましょう。

[3]満ち足りた心境で、こころ穏やかに
物欲や妄想にとらわれず、今に満足することを意識して。日常の中ではついいろいろなことを求めがちですが、欲を出さず、恵まれた面に目を向けることができるといいですね。

穏やかな表情の女性

睡眠、食事、運動。冬の上手な暮らし方

[基本]
冬の養生は「陽気を守る」ことが基本。春夏は“陽気を養う”時期ですが、冬は次の2つをポイントに“陽気を消耗しない”生活を意識しましょう。

1.寒さを避けて、体を温める
2.むやみに活動せず、静かに過ごす

 

[ 食事 ]体を温め、腎を養う
冬は五臓の「腎」が影響を受けやすいため、腎を養う食材を積極的に。ただし、腎に作用する「鹹味(かんみ)」(塩からい味)の食材を摂り過ぎると、腎の働きが過剰になり、「心(しん)」(腎と相克関係にある臓腑)がダメージを受けてしまうことも。そのため、冬は鹹味を控え、心に作用する「苦味」を少し意識して摂ることで、五臓のバランスを整えましょう。また、体を温める「温性」の食材を選ぶこともポイントです。

<基本のおすすめ食材>
腎を養う:黒ごま、黒豆、黒きくらげ、海藻類、くるみ、栗 など
体を温める(温性):しょうが、ねぎ、にら、かぼちゃ、にんじん、シナモン、羊肉 など
心を整える(苦味):春菊、ごぼう、セロリ、ふき、緑茶 など
★苦味の食材は体を冷やすものが多いので、多く摂らないよう気をつけて。

 

基本のおすすめ食材のほか、体に不調があるときは体質に合わせた食養生も。今回は、冬に気になる3つの体質についてご紹介します。
● 陽気不足(陽虚)タイプ
主な症状:手足の冷え、下半身の冷え、顔色が青白い、トイレが近い、疲れが取れにくい
おすすめ食材:羊肉、牛肉、うなぎ、しょうが、八角、シナモン、紅茶 など

● 潤い不足(陰虚)タイプ
主な症状:空咳、のどの渇き、口や鼻の乾燥、乾燥肌、便秘気味、尿の量が少ない
おすすめ食材:鴨肉、百合根、白きくらげ、梨、キウイフルーツ、さとうきび、ゆず など

● 血の不足(血虚)タイプ
主な症状:冷え、貧血、めまい、乾燥肌、髪のパサつき、抜け毛、不眠、不安感
おすすめ食材:羊肉、黒ごま、くるみ、竜眼肉、ほうれん草、にんじん、プルーン など

 

[ 睡眠 ]早めに寝て、遅めに起きる
夜は陰を養う時間。長い冬の夜に合わせて睡眠も多めに取り、陰を十分に養いましょう。夜は早めに寝て、朝は太陽が昇ってからゆっくり起きる“早寝遅起き”がおすすめです。
理想の睡眠目安は…
就寝:21時 起床:7時

 

[ 運動 ]やさしい運動で、あまり汗をかかないように
冬は静かに過ごす時期ですが、体を温めて陽気を守るためにも、適度な運動はおすすめです。ウォーキングやピラティスなど、やさしい有酸素運動で体を気持ちよく動かしましょう。激しい運動や多量の発汗は、陽気を消耗するので気をつけて。
★外で運動をするなら、晴れた日の午前中がベスト。寒い雨の日などはムリをしないように。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜

楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。