よくわかる中医学vol.28-血不足の「血虚」タイプ- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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よくわかる中医学vol.28
-血不足の「血虚」タイプ-

2019.10.15 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.28

体質ごとの特徴と養生法を伝えるシリーズ、今回は血不足の「血虚(けっきょ)」タイプです。
中医学では、「血(けつ)」を全身に栄養を運ぶ赤い液体と定義していて、一人ひとりの「血」の状態は、全身に栄養を運べているかどうかの機能を重視して判断されます。そのため、血液検査で異常がなくても、健康であるとは言い切れず、血不足「血虚」の状態であると判断されることがあります
女性は月経、妊娠、出産などで血を消耗するため、「血虚」の傾向が強いです。まずは体質チェックをして、血虚タイプが強い人は養生を心がけましょう。

「血虚」タイプに見られる主な症状

(1)顔色が白く艶がない、皮膚がカサカサしている
肌に栄養が行き届かず、細胞の機能がうまく働いていないと考えられるため、多くの場合で血虚と診断される典型的な症状です。皮膚のカサカサから痒みが感じられる場合は、血虚によって乾燥し、体内で「風邪(ふうじゃ)」を作ってしまっている状態と考えられます。

(2)めまい、立ちくらみ
この症状も、頭・目に栄養が行き届いていないと考えられる、血虚の典型的な症状です。目は「肝の外竅(がいきょう)」と言われ、肝と関係が深い外側にある穴と考えられています。めまい、立ちくらみの他、目の疲れ、視力減退、耳鳴りの症状があれば、臓腑の不調による血虚「肝血虚(かんけっきょ)」や「肝腎陰血両虚(かんじんいんけつりょうきょ)」と判断されることがあります。

(3)手足がしびれる、こむら返りを起こしやすい
筋に栄養が行き届かずあらわれる症状です。中医学で「肝」は筋をつかさどると考えられていて、「肝血虚」の状態になると症状があらわれやすくなります。冬にこむら返りが起きやすいのは、血が足りない状態に加えて、冷えによる血行不良で血が行き届かなくなるためです。血を補い温める必要があります。

(4)抜け毛・白髪が多い
髪は「腎の華」「血の余り」と言われ、髪の毛が細くて抜けやすい、若白髪が多い人は血虚の中でも腎の精血不足である傾向が高いです。
ただし抜け毛には、ストレスによるものや、余分な汚れが溜まっている「痰湿(たんしつ)」によるものなど原因がさまざまあるので、注意して体質をチェックしましょう。

(5)かすみ目、疲れ目がある
「肝血虚」の状態になると、視力減退、かすみ目、疲れ目といった症状があらわれやすくなります。

(6)爪が白っぽく、薄く割れやすい
爪は皮膚の延長です。皮膚を養わなければ、同様に爪にも症状があらわれます。中医学で爪は「肝の華」、「筋の余り」と言われています。

(7)動悸がする
動悸とあわせて、顔色が白く艶がない、めまい、立ちくらみがあるといった症状がある場合、「心血虚」と判断されることがあります。

(8)女性の場合、経血量が少ない
月経が3日以内で終わってしまう、経血の量が少ない人や不妊症、無月経の症状がある場合、血虚と判断されます。全身の血液が少なく、子宮に十分な栄養と血液を届けられていない状態です。
中医学には、「女性は血をもって本とする」という言葉があります。女性の体は「血」で成り立っているという意味で、「血虚」の状態は婦人系トラブルや重大な病気を招く原因となります。

「血虚」タイプに見られる舌の特徴

「血」は「気」(エネルギー)と比べて、物質的なものであるとされています。そのため、血の量が少ない「血虚」タイプの人は、舌が養われず形が細く薄っぺらくなり、淡い色で小さい舌「淡痩小舌(たんそうしょうぜつ)」になります。

「血虚」を引き起こしてしまう主な原因

(1)無理なダイエット
無理なダイエットなどによる痩せすぎの状態は、抜け毛・めまい・動悸・無月経を引き起こす原因になります。

(2)偏食・少食、生もの・冷たい飲食物の摂りすぎ
胃腸の消化機能が低下し、貧血などの原因になります。

(3)無理な残業、夜ふかし、徹夜などの不規則な生活習慣
血を養うには十分な睡眠をとることが大切です。

(4)慢性疾患を抱えている
(5)生まれつきの虚弱体質

「血虚」の原因は「気虚」の原因と類似する部分があります。血虚の体質の場合、もともと気虚の体質ももっている場合が多いため、気になる方は「元気不足の「気虚」タイプ-」のページも参考にしてください。

「血虚」タイプおすすめの食材

基本として鉄分が豊富な食材がおすすめです。また、黒い食材と赤い食材が良いとされています。

・鉄分が豊富な食材:ほうれん草、小松菜、金針菜、レバー など
・黒い食材:プルーン、ブルーベリー、黒ごま、黒米、黒豆、あずき、桑の実、ぶどう、なまこ など
・赤い食材:なつめ、まぐろ、クコの実、竜眼肉、ざくろ、いちご など

その他、烏骨鶏や地鶏の卵、うずらの卵、牡蠣、ももなどもおすすめです。

「血虚」タイプおすすめのツボ

補血作用がある、以下の2つのツボがおすすめです。
(1)三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの指4本分上の骨の後ろ。
(2)血海(けっかい)
ひざの皿の内側、指三本分上のところ。
体質チェックで「血虚」タイプがあると診断された方は、日々の食事やマッサージで、血を養う養生を心がけましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。