監修:楊 敏 先生(中医学講師)
よくわかる中医学vol.27
体の不調だけでなく、精神面への影響が強いタイプです。まずは体質チェックをして、気滞タイプが強い人は養生を心がけましょう。
「気滞」タイプに見られる主な症状
(1)不安や憂うつ感、イライラ、怒りっぽい
気の流れをのびのびとさせる「肝(かん)」(肝臓)の働き「疏泄機能(そせつきのう)」が、ストレスによって弱り、気の流れが悪くなっている「気滞」タイプの典型的な症状です。この状態を「肝鬱気滞(かんうつきたい)」といいます。
(2)胃やおなかが張り、ゲップやガスが多い
「脾胃(ひい)」(胃腸)の気は昇降のバランスを保ちながら巡っていますが、食生活の乱れやストレスなどによってバランスが崩れると「脾胃気滞」となって、このような症状にあらわれます。これも「気滞」タイプに起こりやすい典型的な症状の一つです。
(3)月経不順、月経前に乳房や下腹部が張って痛い(月経前緊張症)
気滞タイプの女性に起こりやすい典型的な症状です。月経は、肝の「蔵血機能(ぞうけつきのう)」という血液を貯蔵する働きと、それを全身に配分する疏泄機能が正常に働くことによって、一定の周期で子宮に血が溜まるようになっています。しかし、肝鬱気滞の状態になるとこの周期が乱れ、月経が遅れたり、早まったりすることがあります。
また、体の両側(脇、腹、胸、頭部など)には肝の経絡が走っていて、肝鬱気滞によって月経前に肝の経絡が張って痛むことがあります。
(4)肩が張って凝りやすい、頭や首の両側が痛くなりやすい
肩や頭、首の両側は肝の経絡が走っている部位です。過度なストレスなどで肝の気が滞ると、肝の経絡の部位に症状がでやすくなります。また、気滞から「瘀血(おけつ)」(血行不良)に進行してしまうと、酷い凝りや痛みへと変わります。
(5)ため息をつく
気の流れが悪く気持ちも晴れないと、本能的に気を流そうとしてため息が出やすくなります。
(6)のどにものが詰まったような感じがする
中医学では「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれ、のどに梅の種のようなものが詰まったように感じる症状です。本当は何も詰まっていないのに不快感、異物感があり、吐いたり飲み込んだりしても取れません。比較的女性に多い症状です。
(7)下痢と便秘を交互に繰り返す
過剰なストレスや緊張、食生活の乱れなどにより肝と脾胃の働きが低下してあらわれる症状です。
(8)不眠、眠れない、嫌な夢をよく見る
肝鬱気滞によって、こもった熱が「心神(しんしん)」を乱し(心神不安)、睡眠のトラブルに発展して起こる症状です。中医学で、「肝」と「心」は親子関係と言われ、「肝」の不調は「心」に及ぶことがあります。
「気滞」タイプに見られる舌の特徴
「気滞」を引き起こしてしまう主な原因
主な原因は、精神的・肉体的なストレスを上手く発散できていない状態が続くことです。
特に、繊細でストレスを溜めやすい人、多忙でなかなかストレスを発散できない人に多いタイプなので、できるだけ物事を気にしすぎないように心がけ、没頭できる趣味を見つけ楽しむなど、自分に合ったストレス発散法を実践しましょう。
また、友だちや家族など、今日あったことや悩みを共有できる場を作っておくことも大切です。
「気滞」タイプおすすめの食材
気の巡りを促す代表的な食材は、香味野菜・柑橘類・ハーブです。毎日の食事に摂り入れて食養生を心がけましょう。
・香味野菜:春菊、三つ葉、セロリ、せり、パクチー、パセリ など
・柑橘類:みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、すだち など
・ハーブ:ミント、ローズ、菊花、ちんぴ(乾いたみかんの皮)、ウコン、田七人参、クチナシ、ラベンダー、カモミール など
また、肝を養って疏泄機能を促す働きのある食材(レバー、いか、あさり、しじみ、金針菜、ぶどう、梅干し、黒酢、クコの実など)もあります。特に金針菜は、中国では別名を「忘憂草」といわれ、憂うつ、不安を感じるときにおすすめの食材です。
「気滞」タイプおすすめのツボ
(3)膻中(だんちゅう)
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。