監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスンvol.9
爪の色と形でわかる体内環境
爪のオシャレが進化して、ネイルアートなど芸術作品として楽しむ人も増えています。何色ものマニキュアを重ね塗りした上に幾つものストーンをつけたり。
美しいのですが、爪には相当の負担がかかります。マニキュアを繰り返し使うことで爪質が悪化することにも。中医美容によるネイルケアで美しい爪を保ちましょう。
爪は健康状態を映す鏡
爪はケラチンというたんぱく質からできています。体表面積全体に占める割合はわずかなものですが、「健康状態を映し出す鏡」とも言われ、体内の状態が反映される場所でもあります。
健康な人の爪は、きれいなピンク色でツヤがあり、滑らかで斑点や凹凸などはありません。軽く押すとうっすらと白くなりますが、離すとピンク色に戻ります。これは、爪の真下にある毛細血管を流れる血液の状態がいいことを示しているのです。
中医学では、「爪は筋の余り、筋の延長」、「爪は血によって養われる」と言います。筋を司り、血を蔵する五臓は「肝」。爪が白っぽかったり、もろく割れやすくなっていたら、それは「肝血虚(かんけっきょ)」、すなわち肝の働きが低下している現れです。
その他、爪のさまざまな異変は、体内環境の乱れや機能低下を意味します。爪の色が紫や黒色ならば血液がドロドロになっている証拠。体質に応じて血虚(けっきょ)体質なら対策は補血(ほけつ)、瘀血(おけつ)体質なら活血(かっけつ)、陽虚(ようきょ)体質なら温陽、血熱(けつねつ)体質なら瀉熱(しゃねつ)といった具合に対策もさまざま。中には急を要する状態のものもあるので、たかが爪、とは思わず、よく観察してみましょう。
爪の色で見る体質チェック
<白っぽい>
全体が白く、薄くて割れやすい。目が疲れやすい、脱毛・白髪、皮膚がカサカサ、めまい・立ちくらみ、眠りが浅いなどの症状がある。
・血虚(けっきょ)・・・血の栄養不足
<紫っぽい>
特徴:血液中の酸素が少ないため、爪が青紫色に。唇も同様の色をしていることが多い。低体温・末梢循環障害の可能性がある。
・瘀血(おけつ)・・・血流が滞っている
・陽虚(ようきょ)・・・体をあたためる陽気の不足
<赤っぽい>
爪だけでなく根元も赤い。体に熱がこもっている人に多い。喉の渇き、便秘、高血圧の症状がある。
・血熱(けつねつ)・・・体に熱がこもった状態
・この場合、ほてりの症状を伴うと腎陰虚(じんいんきょ)・・・体の潤いが不足している
<黄色っぽい>
特定の指だけの場合はタバコなどが原因。全体に黄色っぽい人は肝臓・胆嚢のトラブルで黄疸の症状が出ていることも。
・湿熱(しつねつ)・・・体に余分な水分がこもっている
<灰色っぽい>
爪が厚くなっている場合が多く、真菌に感染し水虫の可能性が高い。
・湿熱(しつねつ)・・・体に余分な水分がこもっている
・熱毒(ねつどく)・・・体内に余分な熱と毒がある
<黒っぽい>
健康な状態の色ではないため、病院受診を。
・瘀血 (おけつ)・・・血流が滞っている
爪の形で見る体質チェック
<横線がある>
湿疹などの慢性疾患や体調不良がある。栄養が十分に吸収されなかったために健康な爪が作られず、その部分が縞になっている。
・血虚(けっきょ)・・・血の栄養不足
・気虚(ききょ)・・・エネルギー不足
<縦線が目立つ>
老化や栄養の吸収不足。正常な爪にもうっすらと縦線があるが、老化により爪床を支えきれなくなると、縦線の数が増えたり、溝が深くなる。
・腎虚(じんきょ)・・・腎の機能が低下した状態
・肝血虚(かんけっきょ)・・・肝の血が不足し肝の機能が低下している
<先端が割れやすい>
薄くて脆い爪。ストレス、過労、貧血、飲み過ぎ、乾燥などが原因。
・血虚(けっきょ)・・・血の栄養不足
・陰虚(いんきょ)・・・潤いの不足
<スプーン状にくぼんでいる>
貧血。爪の反り方が逆になり、真中が窪んでいる。
・血虚(けっきょ)・・・血の栄養不足
<爪半月がなくなっている>
爪半月は爪の生え始める部分で甘皮をめくって隠れていれば正常。ない場合は消化機能が低下している、または、たんぱく質不足。
・脾虚(ひきょ)・・・消化器系の機能が低下した状態
・肝血虚(かんけっきょ)・・・肝の血が不足し肝の機能が低下している
<バチ型>
全体につぶれたような形。生まれつきでなく、途中からの場合は呼吸器や心臓にトラブルの可能性がある。
・瘀血(おけつ)・・・血流が滞っている
中医学的ネイルケア
きれいなピンク色の健康な爪を保つには、気血を養う肝の働きを強くする(補血養肝:ほけつようかん)とともに、体を温めて血液の巡りをよくすると(温陽活血:おんようかっけつ)が重要です。爪は、心臓から遠くはなれた体の末端部にあるので、十分な液体と、しっかりとした血行が必要なのです。
ゼリーや寒天、豚足、フカヒレといったゼラチン質の食べ物は爪を健康にしてくれます。補血養肝の作用がある食材には、プルーン、ナツメ、枸杞の実、黒きくらげ、ホウレン草、玄米、小豆などがあります。温陽活血の作用がある食材は、生姜、質のいい牛肉、羊肉、シナモンなど。
日常的にマニキュアをしている人は、一週間に一度の指マッサージ、月に一度の手湯を心がけましょう。
指マッサージ
みかんの皮1個分とりんご1/4を入れたお湯に10分ほど手をつけたあと、生薬入りの油性クリームかオイルを塗りこみ、ラップを巻いてパックします。30分はそのままで。足の爪にも、同様のケアをするといいでしょう。
マニキュアを取ったあとも、美しいピンク色の爪でありたいものですね。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など