監修:車田 光穂 先生(中医アロマセラピスト)
耳温活と中医アロマ
耳温活って
耳を温めるなんて、ほとんど意識したことない方が多いかもしれませんが、実は耳を温めると良いことって色々あるんです。
今の季節は寒いので、この時期に起こりやすい不調を抱えている方は、耳を温めることで何かしら軽減される症状があるかもしれません。ぜひ、試してみてください。
1:耳と内蔵の関係
✜中医学の考え
『黄帝内経(こうていだいけい)』という中国最古の医学書には「耳は宗脈の集まりなり」という言葉が書かれています。宗脈とは総脈の意味で、「耳には多くの経絡が集まっていて、生命活動や健康維持においてとても重要だ」といえます。各内臓の反射区と110個ものツボがあり、あんなに小さいのに、ちゃんと内臓の状態を診ることに用いられることがあります。また、耳ツボ療法などは即効性があることなども知られています。
✜現代医学の考え
耳には耳下リンパ節といって、リンパ液が溜まるダムのようなものがあります。リンパには血管のように弁がついていないので、時々温めたり、手で流してあげると老廃物が流れやすくなります。また延髄から出ている「迷走神経」の枝分かれしたものが耳に通っています。この神経は「知覚神経・運動神経・副交感神経」を含んだ「混合神経」とよばれており、耳を温めると、内臓機能活性化や自律神経のバランスを整えることにつながると考えられています。
2:症状別耳の温め方法とおすすめアイテム
① 目の疲れやクマ、美容に
アイテム:ホットパックやホットタオル、カイロ
ホットパックはレンジで温めて使えますし、保温性もあるのでとても便利です。それがなくても、フェイスタオルを濡らして固く絞り、レンジで温めればホットタオルの完成。これを両耳に当ててください。形状によりますが、細長いものであれば直接目も併せて温めるとより効果的です。カイロは保湿は出来ませんが、保温効果も持続できどんな場所でも使えて便利です。
② 顔や目のむくみに
アイテム:シャワー
お風呂に入る際、髪を洗えば別ですが、意外と耳を温めようとすることってあまりないですよね。むくみがある場合は、老廃物が溜まっている状態でもあるので、シャワーなどで耳の後ろに適度に圧をかけながら温めるのがおすすめです。その際、耳の下から鎖骨にかけて軽く流し、更に鎖骨から脇の下へ流してあげると、よりむくみが取れやすくなります。
③ 鬱や不眠に
アイテム:入浴+マッサージ
これまでご紹介した全てのアイテムがおすすめではありますが、温めるだけでなく、よくもみほぐしてツボを刺激することが重要です。鬱の治療法のひとつに「耳介療法(じかいりょうほう)」というものがあります。鬱は脳の神経伝達がうまく行っていない状態と言われています。電気により耳のツボを刺激することで、脳全体の血流を促進させることにつながり、改善した症例もあるそうです。
3:併せて使いたい中医アロマ
中医アロマとは、中医学の『弁証論治(べんしょうろんち)』という体質を見立てる方法を使って、その方の体質を見極め、方剤を組むように生薬の薬性理論にもとづいて、精油の性質を判断しブレンドする。そして経絡や経穴を中心にトリートメントを行う…。
つまり、中医学の数千年の臨床データに基づく理論体系に沿って、自身にピッタリの植物を選び、生薬のように人によっては苦くて飲めないものがある中で、心地よい香りにつつまれながら心と体を健やかに保つ方法なのです。
香りは、直接大脳辺縁系に信号が行くため、強制的にリラックス状態にさせてくれます。精油との相乗効果により、体だけでなく心のバランスも整えることができるのです。
では、温活におすすめの精油を、中医学的視点から解説いたします。
◆目の疲れやクマ、美容に
カモミール・ローマン(1滴)+ フランキンセンス(2滴)
使い方:洗面器にお湯を張り、そこに精油を垂らしてホットタオルを作ってみて下さい。ホットパックの場合は、布のカバーであれば直に垂らしても良いですし、精油を垂らしたフェイスタオルで包んで使用しても良いでしょう。
【各精油の解説】
●カモミール・ローマン(平性/帰経:肝・心・脾)はキク科の植物で肝に帰経(経絡を通してその臓腑に作用すること)します。肝は目と繋がっている臓腑ですので、目のアンチエイジングに◎
●フランキンセンス(涼~温性/帰経:肝・心・脾・肺)はクマにおすすめ。クマは中医学的には瘀血(おけつ)といって血液の滞りが原因と考えます。フランキンセンスの働きのひとつに活血(かっけつ)といって、血液循環を促進させる働きがあります。また、肌のターンオーバーを促進させ、美肌を保ちます。
◆顔や目のむくみに
グレープフルーツ(2滴)+サンダルウッド(1滴)
使い方:シャワーを浴びる際に、浴室の床に精油を数滴垂らしてみてください。浴室自体が巨大なディフューザーとなり、蒸気吸入しながらリラックスすることが出来ます。または、お手持ちのシャンプーやリンスなど1回分を手のひらに取ったら、そこに垂らして髪を洗い、流す際に耳の温めを行っても良いでしょう。
【各精油の解説】
●グレープフルーツ(涼性/帰経:肝・脾)は体全体の巡りを整えたり、消化促進におすすめ。また、グレープフルーツの精油に含まれるある成分が、中性脂肪の蓄積を抑える働きがあることがわかっていますので、ダイエット効果も期待できるようです。
●サンダルウッド(涼~温性/帰経:心・脾・腎)は巡りを整えるだけでなく、血液循環の促進や、水分代謝の促進にも◎ 胃腸を温める働きもあるため、冷えてむくんでいる方には特におすすめです。
◆鬱や不眠に
ローズウッド(1滴)+サンダルウッド(1滴)+イランイラン(1滴)
使い方:湯船に直接垂らしたあと、一度シャワーでお湯の表面をさっと叩くと、精油成分が拡散しやすくなります。香りが立ち上がったところで入浴し、自分の気持ちいいところを中心に温めながら耳をほぐしてみてください。引っ張ったり、餃子みたいに折りたたんだりすると、全体的にツボが刺激されて◎
【各精油の解説】
●ローズウッド(涼性/帰経:肝・心・腎)は補気(ほき)といって体を機能させるエネルギーを補い、疲労回復や免疫力UPが期待できる精油です。約30メートルにもなる木で、その成長ぶりから肌のターンオーバーを整え、妊娠線予防にもおすすめ。今はあまり出回っていないので、お手持ちがなければゼラニウムでも◎
●サンダルウッド(上記ご参照下さい)
●イランイラン(涼性/帰経:心・腎)は気血を補う働きがあり、心を落ち着かせてくれます。使い過ぎると、逆に興奮させてしまうので注意が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これまでの温活シリーズでご紹介した方法と併せて行っていただけると、相乗効果でより良い状態を体感していただけると思います。
まだまだ寒さ続きますが温活でどうぞ元気にお過ごしください。
この記事を監修された先生
中医アロマセラピスト車田 光穂 先生
車田 光穂(くるまだ みつほ)
登録販売者、国際中医専門員、中医アロマセラピスト、日本中医薬研究会会員店にて3年間勤務。その後イスクラ中医薬研修塾にて中医学を学び、イスクラ薬局六本木店の店長を経て独立。現在は東京・南麻布にて「漢方四月一日庭(つぼみてい)」の庭主として、漢方薬だけでなく、食事、アロマセラピーなどの養生法を適材適所で使い、心地よい生き方を提案している。