監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
毎年冬になると、腰痛がひどくなる…。そんな悩みを抱えている人は少なくありません。腰に痛みがあると、思うように動けず日常生活に支障が出てしまうことも。忙しい毎日を痛みに悩まされず過ごせるよう、しっかり体質を整えて腰痛の起こりにくい体づくりを目指しましょう。
冬は腰痛が起こりやすい季節
腰痛の原因はさまざまですが、多くみられるのは日常生活における筋肉や関節への負担。長時間のデスクワークや同じ姿勢の継続、運動不足、無理な動作などが重なると、腰回りの筋肉や関節に影響し、痛みが起こりやすくなります。また、ストレスによる身体の緊張、加齢による筋力の低下なども、腰痛の一因とされています。
こうした要因に加えて、冬は寒さで血行が悪くなり、筋肉や関節がこわばりやすい状態に。体が冷えて筋肉の柔軟性も低下し、日常のなにげない動作でも腰に負担がかかりやすくなります。そのため、冬になると腰痛が起こりやすくなったり、痛みを強く感じたりするようになります。
過労や冷えによる「腎の虚弱」に注意
中医学では、腰痛は腰回りの問題だけでなく、体内の不調にも原因があると考えます。
腰痛を招く主な要因となるのは、「腎」の虚弱です。“腎は骨をつかさどる”とされ、骨の成長や維持と関わる臓腑。また、“腰は腎の府(腎の居場所)”ともいわれ、腎と腰の状態は密接に関係しています。そのため、腎の働きが弱くなると腰回りの筋肉や骨を十分に養うことができず、腰に痛みが起こったり、重だるさを感じたりするようになります。
腎の虚弱を招く主な要因は加齢ですが、過労による「気」(エネルギー)の消耗、冷えなども腎の状態に大きく影響します。冬は寒さで体が冷えやすい時期。また、忙しい毎日では疲れや睡眠不足が重なりやすく、元気の源となる腎気も消耗してしまいます。その結果、腎の働きが弱くなり、腰痛が起こりやすくなるのです。
「寒邪」のダメージも冬の痛みの要因に
もう一つ、冬の腰痛の大きな要因となるのが「寒邪(かんじゃ)」の侵入です。寒邪は「陽気」(体を温めるエネルギー)を損ない、「収縮させる、滞らせる」(収引・凝滞)という性質があります。そのため、寒邪が入り込むと体が冷えて柔軟性が低下し、筋肉の収縮や硬直を招いて、腰痛が起こりやすくなります。
また、中医学では「滞ると痛みが生じる」(不通則痛:ふつうそくつう)とされ、寒邪の侵入による「気・血の停滞」が腰の痛みを引き起こすこともあります。
食養生で腰痛の起こりにくい体づくりを
冬の腰痛は「腎の虚弱」と「寒邪の侵入」が主な要因に。両方が重なって痛みを起こしているケースも多いので、当てはまる症状があれば併せてケアすることが大切です。
「腎の虚弱」タイプ
<主な症状>
基本の症状:腰が痛い、腰が重い(重くて痛い)、腰がだるい(だるくて痛い)、休むと少し腰が楽になる、慢性腰痛、足腰が弱い、倦怠感、脱力感、耳鳴り、頻尿、夜間頻尿
● 腎の陽気不足の人は…
(基本の症状)+ 冷え、温めると痛みが楽になる、しもやけ・レイノー症候群を発症しやすい、むくみ、舌が腫れぼったい、舌苔が白い
● 腎陰が不足している人は…
(基本の症状)+ 手のひら・足の裏のほてり、のぼせ、のどの渇き、寝汗、舌の色が紅く舌苔が少ない
<腎を元気にする おすすめ食材>
大和芋、長芋、じゃがいも、かぼちゃ、そらまめ、いんげん、きのこ類、牛乳、豆乳、鶏肉、豚肉、牛肉、牛すじ、えび、うなぎ、ほたて、かき、まぐろ、いわし、黒豆、くるみ、黒ごま、栗、クコの実、松の実、杜仲茶 など
〜おすすめ料理〜
・大和芋(じゃがいもでもOK)入りのビーフカレー
・黒豆茶 ☆冷える人はシナモンスティックを添えて

「寒邪の侵入」タイプ
<主な症状>
急に起こる強い腰痛、関節や筋肉がこわばる・動きにくい、腰の冷え、温めると腰痛が少し楽になる、手足の冷え、しもやけ・レイノー症候群を発症しやすい、舌の色が淡くやや紫色、舌苔が白い
<体を温め、血流をよくする おすすめ食材>
玉ねぎ、ねぎ、しょうが、大葉、にんにく、にら、らっきょう、白菜、ピーマン、うど、いわし、さば、さんま、黒きくらげ、シナモン、よもぎ、紅花、うこん、茴香 など
〜おすすめ料理〜
・ねぎたっぷりの鶏肉・白菜の鍋、大葉添え
暮らしのケア
・急性腰痛(ぎっくり腰など)が起きたら、まず安静に。無理に動くと痛みが増し、治りにくくなります。症状の悪化につながるので、飲酒や冷たい飲食もなるべく避けて。
・太り過ぎの体型は腰に負担がかかります。暴飲暴食、脂っこいものの摂り過ぎなどに気をつけて、しっかり体重管理をすることも大切です。
・十分な休息と睡眠で疲労の回復を。過労や睡眠不足は腎のダメージにつながります。
・デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける人は、こまめにストレッチを。体を動かして筋肉の緊張をほぐし、腰の疲れを和らげましょう。
・冬は暖房や服装の工夫で“しっかり保温”を心がけて。お風呂はシャワーで済ませず湯船に浸かり、体を芯から温めましょう。
・適度な運動を習慣に。陽気が巡って冷えにくくなり、血行も良くなります。運動は、姿勢を整えるヨガやピラティス、ストレッチなどがおすすめです。
・ストレスによる気の停滞、緊張なども腰痛の一因に。日頃のストレスはこまめに発散して、溜め込まないよう心がけましょう。
<腰痛におすすめのツボ>
● 腰腿点(ようたいてん)※痛みが強いときに:
手の甲にある2つのツボ。人差し指と中指の骨が交わる手前の窪みと、薬指と小指の骨が交わる手前の窪み
● 腎兪(じんゆ):ウエスト位置、背骨から左右に指2本分外側
● 大腸兪(だいちょうゆ):左右の骨盤を結んだ線上、背骨から左右に指2本分外側
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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