きちんと知って、上手に付き合う「生理」のこと ~体質ケア編~ - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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きちんと知って、上手に付き合う
「生理」のこと ~体質ケア編~

2024.09.17 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

“生理を学ぶ”をテーマにお届けしている本コラム。前回の「基礎編」に引き続き、今回の「ケア編」では、生理の不調を改善する体質ケアについてお話します。生理痛やPMS(月経前症候群)といったトラブルは、健康であればない状態が基本。毎月の生理をラクにするためにも、不調を感じている人は積極的に体質を整えていきましょう。

生理トラブルは「肝」「腎」「脾胃」の不調から

中医学では、生理は体内の「血」と「気」(エネルギー)の影響を強く受けていると考えます。血は経血の元となり、気は血の生成や巡りと関わるもの。そのため、気・血が十分にあり、体内をスムーズに巡っていれば、正常な生理を保ちやすくなります。

気・血の状態や生理と密接に関わる臓腑は、主に「肝」「腎」「脾胃」の3つ。肝は「女性の先天」とも呼ばれ、血の貯蔵、気・血の巡り、排卵などと深く関わっています。「腎」は生命力の源「精」を蓄える臓腑で、気・血の生成や女性ホルモンの分泌と密接な関係に。また、「脾胃」は食べ物から栄養を吸収し、気・血を生む源となります。
これらの臓腑が健やかに働いていれば、気・血の状態が良く生理も正常に。反対に、不調があれば気・血の不足や停滞、ホルモンバランスの乱れなどを招き、生理の不調が起こりやすくなるのです。

生理の状態から体質をチェック

生理の不調が起こりやすいのは、主に次のような体質です。一覧表の症状から自分の体質をチェックして、日々の食事や生活習慣から不調を改善していきましょう。

 

〜生理不調の原因となる主な体質〜

実証タイプ(過剰・詰まりのある体質)
・肝鬱気滞(かんうつきたい):気の停滞
・気滞血瘀(きたいけつお):気の停滞による血行不良
・寒凝血瘀(かんぎょうけつお):冷えによる血行不良
・血熱(けつねつ):血の過剰な熱

虚証タイプ(足りない体質)
・気虚:気の不足
・血虚:血の不足
・気血両虚:気血の不足
・脾腎両虚:腎と脾の虚弱
・肝腎陰虚:肝と腎の潤い不足
・腎陽虚:腎の温めるエネルギーの不足

体質改善で生理をラクに! 〜タイプ別ケア〜

生理の不調はなんとなく我慢しがちですが、生理痛やPMS(イライラ、頭痛、眠い、肌荒れなど)に毎月悩まされるのはつらいもの。また生理周期が乱れていると、普段の予定はもちろん、温泉やプールといったおでかけプランも立てにくくなってしまいます。
体質を整えて生理を正常に保てば、こうしたストレスも解消され、毎月の生理がぐっとラクに。数十年と続く生理と上手に付き合うためにも、積極的に体質を整えて不調の改善をめざしましょう。

 

 

「肝鬱気滞」「気滞血瘀」タイプ
過剰なストレスなどで体内の「気」が停滞し、イライラ(PMS)や生理痛、生理周期の乱れなどが起こるタイプ。また、気の停滞から「瘀血」(血行不良)を招いていることもあります。ストレスをこまめに発散して気を巡らせ、肝の働きを健やかに保ちましょう。

 

<気になる症状>
生理:周期の乱れ、生理痛が強い、下腹部の張り、経血が黒っぽく血の塊がある、経血量が少ない、PMSの症状が出やすい
その他:手足の冷え、冷えのぼせ、胃腸の張り、便秘気味、舌の色が暗く瘀点・瘀斑がある

 

<おすすめ食材>
気を巡らせる:春菊、三つ葉、セロリ、イカ、タコ、柑橘類、ミント、ジャスミン など
血流をよくする:玉ねぎ、なす、納豆、黒きくらげ、青魚、玫瑰花、山楂子、うこん、田七人参 など

〜おすすめメニュー〜
・玉ねぎ、なす、黒きくらげの炒めもの
・陳皮と玫瑰花のお茶

 

 

「寒凝血瘀」タイプ
体が冷えて血流が滞り、生理がスムーズに起こらないタイプ。入浴、温かい飲食・服装、適度な運動などを心がけ、日頃から体を温める習慣を。特に生理中は腰回りの冷えに注意しましょう。

 

<気になる症状>
生理:周期が遅れ気味、生理痛が強い(お腹に触れるのは嫌、温めると楽に)、経血が黒っぽく血の塊が多い、経血量が少なく期間も短い
その他:冷え、しもやけができやすい、下痢しやすい、舌の色が紫で瘀点・瘀斑がある、舌苔が白い

 

<おすすめ食材>
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、にら、にんにく、シナモン、紅花、こしょう、黒酢、みそ、サンマ、サバ など

〜おすすめメニュー〜
・サバのみそ煮
・シナモンティー

「熱(血熱・肝腎陰虚)」タイプ
食の不摂生やストレスなどで「血」が熱を持ったり、潤い不足(陰虚)から体内に熱がこもったりすることで、生理が過剰気味になるタイプ。体内の過剰な熱を冷まし、潤いを十分養うことを心がけましょう。

 

<気になる症状>
生理:周期が短い、経血量が多く期間が長い(陰虚の場合は量が少なく期間も短い)、経血の色は深紅・鮮紅、粘り・血の塊があり少し臭いもある、生理痛、下腹部の熱感、不正出血
その他:口やのどの渇き、ほてり、便秘気味、舌が紅い、舌苔が黄色い(血熱の場合)、舌苔が少ない(陰虚の場合)

 

<おすすめ食材>
そば、きゅうり、苦瓜、トマト、青梗菜、すいか、大根、ごぼう、牛乳、豚肉、牡蠣、はまぐり、緑豆、白きくらげ、梨、松の実、桑の実 など

〜おすすめメニュー〜
・きゅうり、トマト、白きくらげのサラダ
・苦瓜と豚肉の炒めもの

 

 

「気虚・血虚・気血両虚」タイプ
生理の基本となる「血」や「気」が不足し、不調が起きているタイプ。弱りがちな胃腸を元気に保ち、しっかり栄養を摂って気・血を養いましょう。

 

<気になる症状>
生理:生理前後の倦怠感、シクシクとした生理痛(なでると楽になる)、経血の色は淡紅か淡い茶褐色、量は少なくサラサラ、期間が短い(気虚では長い場合もある)
その他:疲労感、めまい、冷え、胃腸が弱い、食が細い、軟便・下痢、舌の色が淡く舌苔が薄い(気虚の場合は舌が腫れぼったい)

 

<おすすめ食材>
血を養う:レバー、ほうれん草、小松菜、ひじき、まぐろ、鶏肉、羊肉、うなぎ、いちご、桃、レーズン、プルーン、なつめ など
気を養う:長芋、山芋、じゃがいも、キャベツ、かぼちゃ、にんじん、しいたけ、大豆、枝豆、鶏肉、牛肉、蓮の実 など
〜おすすめメニュー〜
・長芋入りの牛肉山椒煮
・うなぎ丼

 

「腎陽虚・脾腎両虚」タイプ
女性ホルモンの分泌や気・血の生成と関わる「腎」「脾」が弱く、生理に不調が起きているタイプ。腎と脾胃のケアでホルモンバランスを整え、体内の気・血を充実させましょう。

 

<気になる症状>
生理:周期が遅れ気味、または更年期頃の周期乱れ、シクシクとした生理痛(なでると楽になる)、生理期間の腰痛・腰の重だるさ、経血の色が淡紅・淡い茶褐色、経血量が少なく期間も短い、または経血量が多くサラサラで期間が長い
その他:疲労感、倦怠感、冷え、腰痛、耳鳴り、むくみ、胃腸が弱い、軟便・下痢、舌の色が淡く腫れぼったい、舌苔が白い

 

<おすすめ食材>
長芋、山芋、舞茸、エリンギ、えび、ほたて、牛肉、うなぎ、黒豆、くるみ、栗、ごま、枸杞の実 など
〜おすすめメニュー〜
・えびとそら豆の炒めもの
・長芋、舞茸、トマトの野菜スープ

暮らしのポイント

生理直前、生理期間は…
・体を冷やさないよう、冷たい飲食や薄着は避けて。
・お湯に黒糖としょうがを溶かして飲むのがおすすめ! 体が温まります。
・十分な睡眠、休息を。過労や睡眠不足は気・血を消耗します。
・生理期間は激しい運動を避け(特に虚症タイプの人)、入浴は控えシャワーで済ませて。

 

日常から気をつけたいことは…
・冷たい飲食、暴飲暴食、無理なダイエットなどは避け、栄養バランスのよい食事を心がけて。
・生活リズムを整え、過労や睡眠不足を招かないように。
・適度な運動を習慣に。気・血を巡らせ、体力をつけましょう。
・ストレスはこまめに発散。過剰なストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れを招きます。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。