体質ケアで脳機能をアップ! 〜気になる「物忘れ」対策〜 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

STUDY中医学の基礎

体質ケアで脳機能をアップ!
〜気になる「物忘れ」対策〜

2024.06.18 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

「ほら、あの人、えーっと名前なんだっけ?」こんな会話を皆さんも一度くらいはしたことがあるのではないでしょうか。脳の機能は20代をピークに低下していくといわれるため、こうした物忘れは年齢を重ねると増えていく傾向に。最近物忘れが増えた。将来の認知症が心配……。そんな人は体質から脳の働きをケアして、記憶力をしっかりキープしていきましょう。

「物忘れ」はだれにでも起こる脳の老化症状

脳の神経細胞は、加齢とともに減少していきます。すると、脳が萎縮し、記憶力や判断力といった認知機能も低下するように。これが脳の老化で、“歳をとって物忘れしやすくなった”と感じる基本的な要因です。
こうした物忘れは誰にでも起こるもので、多少増えても過剰に心配する必要はありません。一方、物忘れが増えてくると、心配なのは「認知症」ではないでしょうか。認知症は単なる脳の衰えではなく、記憶機能の障害によって起こる症状。物忘れとは違い、できごと自体を忘れてしまうことが特徴(例えば、“何を食べたかすぐに思い出せない”は単なる物忘れ、“食べたこと自体を覚えていない”は認知症)で、日常生活にも支障が出てきます。

 

最近では、認知症の発症が生活習慣とも深く関わることがわかってきています。年齢を重ねても脳の働きが健やかに保てるよう、食事のバランスや運動など、日々のケアを心がけていきましょう。

脳の働きは「腎」と密接な関係に

中医学では、脳は記憶や思考、感情などを司る臓腑で、“元神(げんしん)の府”ともよばれ、「髄」によって養われていると考えます。髄は「腎」から生み出されるため、腎の働きが低下すると髄も不足しがちに。その結果、脳を十分に養うことができず、記憶力が落ちて物忘れをしやすくなるのです。
また、脳は“清らかな場所(清竅:せいきょう)”ともされていて、古く汚れた血(瘀血)や余分な水分や汚れ(痰湿)も大敵に。瘀血や痰湿が脳に停滞すると、機能が低下して記憶力が落ちてしまうこともあります。

脳の機能を高めるためには、こうした体内の不調を改善することが大切。加えて、五臓全体が健やかに働き、十分な気・血・津液(正常な水分)が体内をスムーズに巡っていることも、脳の健康を守る基本となります。

 

「未病先防(体質を整えて病気を未然に防ぐ)」の考え方は、中医学の基本。今からしっかり体質を整えて、物忘れをしにくい、認知症になりにくい体づくりを心がけましょう。

体質改善で、脳の働きを活性化!

物忘れが気になる人は、“腎の虚弱”、“瘀血”、“痰湿”の改善を心がけて。体質をしっかり整えて、脳の働きを活性化させましょう。

 

脾腎陽虚タイプ
腎と脾胃(胃腸)の「陽気(体を温めるエネルギー)」が不足しているタイプ。物忘れが多い、冷え、耳鳴り、胃痛・腹痛、軟便・下痢、足腰がだるい、むくみ、頻尿、夜間頻尿、舌の色が淡く舌苔が白い、舌がむくんで厚みがあり舌の縁に歯の跡がつくなどの症状が現れます。

 

<おすすめ食材>
体を温め、腎と脾胃を養う
長いも、大和芋、じゃがいも、大豆、黒豆、枝豆、そら豆、かぼちゃ、キャベツ、しょうが、ねぎ、玉ねぎ、にら、きのこ類、えび、牛肉、うなぎ、はも、栗、りんご、くるみ、胡麻、松の実、こしょう、シナモン、なつめ、ピーナツ、紅茶 など

 

〜おすすめメニュー〜
・長芋、枝豆、きのこの野菜スープ
・シナモン入りの黒豆茶

肝腎陰虚タイプ
腎と肝の潤いが不足しているタイプ。物忘れが多い、暑がり、めまい、目が疲れやすい、耳鳴り、憂うつ感、不安感、寝付きが悪い、寝汗、足腰がだるい、便の乾燥、便秘、舌が紅く痩せている、舌苔が少ないなどの症状が現れます。

 

<おすすめ食材>
体内の潤いを養う
牛乳、豆腐、れんこん、トマト、ほうれん草、小松菜、金針菜、長いも、黒豆、小豆、ゆり根、豚肉、卵、牡蠣、あさり、はまぐり、すっぽん、胡麻、松の実、アーモンド、カシューナツ、ぶどう、ブルーベリー、レモン、オレンジ、竜眼肉、クコの実、桑の実、菊の花 など

 

〜おすすめメニュー〜
・ほうれん草とえびのクコの実和え
・胡麻、くるみ、松の実のペースト(3:1:1の割合で)
☆ペーストは脾腎陽虚・肝腎陰虚、両タイプに

 

[ワンポイント]
脳の姿に似たくるみの実は脳に作用するとされていて、物忘れ予防に一押しの食材。毎日のおやつに1〜2粒食べるのがおすすめです。

痰湿・瘀血の混合タイプ
体内に「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まり、「瘀血(血行不良)」も起こしているタイプ。物忘れの進行、慢性頭痛・肩こり、めまい、イライラ、体が重だるい、むくみ、血中脂質の値が高い、痰が絡む、生理痛、手足のしびれ、舌の色が紫っぽい、舌に瘀斑・瘀点がある、舌裏の静脈が太くて長い、舌苔がベタつくなどの症状が現れます。

 

<おすすめ食材>
瘀血を改善する
にんにく、玉ねぎ、ねぎ、しょうが、なす、青魚、かに、黒きくらげ、シナモン、サフラン、紅花 など
痰湿を取り除く
玄米、はと麦、海藻類、こんにゃく、あさり、しじみ、寒天、きのこ類、ごぼう、大根、冬瓜、緑豆、バナナ、山査子、ウーロン茶 など
☆プラス“気の巡りを良くする食材”で効果アップ
春菊、三つ葉、セロリ、苦瓜、柑橘類、ミント、カモミール など

 

〜おすすめメニュー〜
・はと麦、緑豆、ひじき入りの雑穀ご飯、三つ葉添え
・黒きくらげ入りのさんま生姜煮

暮らしのポイント

・体質に合ったバランスの良い食事を。暴飲暴食、喫煙はNGです。
・早寝早起きを心がけ、生活リズムを整えて。脳の疲れをリセットするためにも睡眠は大切です。
・好奇心や趣味を持ち、脳を刺激して衰えを防ぎましょう。
・積極的に人と交わり、会話を楽しんで。
・ストレスを溜めないことも大切。日々のストレスはこまめに発散しましょう。
・適度な運動を習慣に。汗をかくことで、痰湿や瘀血の解消にもつながります。

登録無料!中医学の情報をLINEでお届け!

健康と美容に役立つ季節の中医学情報、体質チェック、友だち限定キャンペーンなどを配信!

この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。