放置しないで! 体質ケアで「高血圧」対策 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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放置しないで!
体質ケアで「高血圧」対策

2024.02.20 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

血圧は多少高くても自覚症状がほぼないため、体に悪いとは知りつつ放置していたり、自分の血圧をよく知らなかったり、ということも少なくありません。しかし、高血圧の状態が続くと血管に負担がかかり、放っておくと突然大きな病気を招いてしまうことも。そんな事態を防ぐためにも日頃から血圧をチェックし、高めだと感じたら積極的に対処をして、血圧を正常に保つことが大切です。

高血圧は自覚しにくい症状

「血圧」は血液が血管に与える圧力のことで、基本的には心臓が送り出す「血液の量」と、「血管の硬さ(抵抗)」によって決まります。そのほか、自律神経、内分泌系など、血圧の調整には多くの要因が関わっています。

 

[一般的な血圧の基準]
正常血圧(年齢によって変動します)
120~130/80~85mmHg
高血圧
自宅での測定:135/85mmHg以上
病院での測定:140/90mmHg以上

 

血圧は常に変動していて、朝(起床時)に上昇し、日中(活動中)は高く、夜(睡眠中)は下がる傾向にあります。また、運動、喫煙、飲酒などの要因でも一時的に上がるため、たまたま測った血圧が高くても高血圧症とは言い切れません。一方、繰り返し測っても血圧が正常より高い場合は、高血圧症と考えられます。
高血圧の状態が長く続くと、動脈硬化症、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全といったさまざまな病気を引き起こす要因となります。自覚症状があまりない分、知らずに進行してしまうことも多いので、血圧が高めだなと気づいたら放置せず対処することが大切です。

 

〜心身のストレスにも要注意〜
血圧の調整には「ホメオスタシス(自律神経、内分泌、免疫等による生体恒常性)」の働きが関わっています。厳しい寒さや過剰なストレスなどに長期間さらされると、このホメオスタシスが乱れ、上がった血圧を元に戻せなくなることも。こうした状態が、慢性的な高血圧につながることもあります。

ストレス過多や肥満の体質が高血圧を招く

中医学では、血流を悪化させる次のような体質が、高血圧の主な要因になると考えます。

気滞血瘀タイプ
過剰なストレスや緊張で「気(エネルギー)」の巡りが停滞し、気と一緒に流れる「血」も停滞してしまうタイプ。イライラや怒りで肝の陽気が過剰になり、血圧の上昇を招くこともあります。
陰虚陽亢タイプ
加齢や過労の影響で体内の潤い成分(陰)が失われているタイプ。体に過剰な熱がこもったり、潤い不足でドロドロ血になったりすることで、高血圧を招きやすくなります。
脾虚痰湿タイプ
暴飲暴食などで「脾胃(胃腸)」の働きが弱くなり、水分代謝も落ちて「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まっているタイプ。痰湿が血管にも溜まり、血流が悪化して高血圧を招きます。

 

こうした体質を改善して血流の良い状態を保つことで、血圧は安定しやすくなります。当てはまる症状があれば“血圧が上がりやすい体質”を考えて、積極的に体を整えていきましょう。

日々の食養生で血圧の安定を

高血圧になりやすい3つの体質について、おすすめの食養生をご紹介します。不調を改善して血流をスムーズに保ち、血圧の上がりにくい体質づくりをめざしましょう。

 

気滞血瘀タイプ
ストレスをこまめに発散させ、気・血の巡りをスムーズに保ちましょう。あまり神経質にならず、気持ちをリラックスさせることも大切です。

<気になる症状>
血圧が高い、血圧が不安定、ストレスやプレッシャーが多い、憂うつ感、不安感、イライラ、怒りっぽい、冷えのぼせ、頭痛、首や肩のこり強い、動悸、お腹の張り、便秘気味、舌が暗く瘀斑点がある

 

<おすすめ食材>
気を巡らせる:三つ葉、セロリ、せり、春菊、みょうが、苦瓜、しじみ、柑橘類、ミント、玫瑰花、菊花、陳皮、ジャスミン など
血流を良くする:玉ねぎ、ねぎ、しょうが、みょうが、にんにく、なす、青梗菜、ピーマン、おくら、青魚、納豆、黒酢、黒きくらげ、山椒、山査子、紅花 など

 

〜おすすめメニュー〜
・いか、セロリ、黒木耳の炒めもの、菊花添え
・ウコン茶

 

陰虚陽亢タイプ
高齢者や過労気味な人に多いタイプ。不足しがちな潤いを養い、過剰な熱を冷ますことを心がけましょう。睡眠不足は潤いの消耗につながるので、休息をしっかり取ることも大切です。

<気になる症状>
のぼせ、手足のほてり、寝汗、めまい、頭痛、耳鳴り、視力の低下、イライラ、便が硬い、腰痛、足腰がだるい、舌が紅く舌苔が少ない

 

<おすすめ食材>
そば、セロリ、せり、春菊、苦瓜、くらげ、いか、たこ、牡蠣、あわび、しじみ、牛乳、豆乳、ゆり根、柑橘類、梨、柿、黒豆、松の実、ミント、菊花、枸杞の実、桑の実、ハブ茶 など

 

〜おすすめメニュー〜
・牡蠣の豆乳鍋
・菊花と枸杞の実のお茶

 

脾虚痰湿タイプ
肥満気味の人に多いタイプ。まずは溜まった痰湿を取り除き、体をスッキリさせましょう。食生活を見直して脾胃の働きを整え、水分代謝の良い状態を保つことも大切です。

<気になる症状>
血圧が高い、血圧が不安定、肥満気味、体脂肪率が高い、脂質異常症、体が重い、むくみ、めまい、吐き気、胃が重苦しい、軟便または下痢、舌苔がベタつく

 

<おすすめ食材>
玄米、粟、はと麦、とうもろこし、里芋、こんにゃく、大根、かぶ、きゅうり、冬瓜、海藻類、きのこ類、いわし、さんま、緑豆、もやし、棗、山査子、どくだみ茶、ウーロン茶、プーアール茶 など

 

〜おすすめメニュー〜
・粟、とうもろこし、玄米の雑穀ご飯
・山査子入りウーロン茶

日々の食養生で血圧の安定を

・過度な飲酒、喫煙、塩分の過剰摂取は避けましょう。
・腹八分目を心がけて体重のコントロールを。暴飲暴食はNGです。
・脂っぽいもの、甘いもの、刺激の強いものは控えめに。
・過労や睡眠不足を避け、生活リズムを整えて。
・厳しい寒さや暑さも血圧に影響します。服装の工夫やエアコンなどで、気温の変化に上手に対応しましょう。
・適度な運動を習慣に。血行促進につながります。
・ストレスはこまめに解消して気持ち穏やかに。イライラや緊張は血圧を上昇させます。

<血圧の安定に効くツボ>
曲池
内関
足の三里

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。