監修:楊 敏 先生(中医学講師)
冷たい北風が吹く冬本番。この時期は乾いた空気に加えてエアコンの暖房も影響し、乾燥による不調が起こりやすくなります。肌の乾燥が気になることはもちろん、鼻やのどの粘膜が乾燥するとかぜやインフルエンザなどにかかりやすくなることも。乾燥に負けないためにも体の中からしっかり潤いケアをして、冬のキレイと元気を守りましょう。
“体内の乾燥”にも気をつけて
冬は一年で最も湿度が低い季節。乾いた空気に体の水分が奪われるため、乾燥肌や髪のパサつきといった不調が起こりやすくなります。また、気温の低さも乾燥を招く要因に。寒いと汗をかきににくく、皮脂の分泌が少なくなります。すると、肌の潤いを守ることができず、水分が失われやすくなってしまうのです。
一方、肌の乾燥を感じるときは、“体内の乾燥”にも注意が必要です。冬は汗をかいている実感が少なく、のどの乾きを感じにくい時期。その分、水分補給を怠りがちになりますが、人の体は呼気や肌から1日約1リットル、排尿を含むと約2.5リットルもの水分を自然と失っています。空気が乾燥する時期はその量がさらに増えるため、水分をきちんと取らないと体内が乾いてしまうのです。
体の乾燥が続くと、“ドライシンドローム”とも呼ばれるさまざまな症状が現れます。乾燥ダメージを悪化させないためにも、早めのケアで体の潤いを守るよう心がけましょう。
<体の乾燥サイン>
・肌のカサつき、かゆみ
・頭皮のカサつき、フケ
・髪のパサつき
・唇の皮むけ
・かかとのひび割れ
・指のささくれ
・目や鼻の乾燥
・口の中の乾燥、粘つき
・のどのヒリヒリ感
・便の乾燥、便秘気味
体を潤す成分は「津液」と「血」
中医学では、体に潤いを与えるのは「津液(しんえき)」と「血」の働きと考えます。津液は体内の正常な水液(唾液、涙、胃液など)の総称で、体を潤す水分のようなもの。血は主に血液のことで、こちらも体に栄養や潤いを与える成分です。津液と血が十分にあり、体内をスムーズに巡っていれば、潤いが体のすみずみまで行き届いて乾燥知らずの状態に。肌や髪はしっとりと健やかで、鼻やのどの粘膜も潤っているためかぜなどの感染症にもかかりにくくなります。反対に、津液や血が不足したり巡りが悪くなったりすると、体内の潤いも不足してさまざまな乾燥トラブルが現れるようになります。冬の乾燥から体を守るためには、津液と血を十分に養うことが大切。潤いの多い食材を積極的に取ること、バランスよく十分な栄養を取ることを心がけ、消耗しがちな潤いを体内からしっかり補いましょう。
冬に食べたい!潤いアップ食材
乾燥対策の食養生は、体の潤いとなる“津液と血を養う食材”、“血を巡らせる食材”を意識して。冬の食事に上手に取り入れて、体の中から潤いアップを目指しましょう。
■津液と血を「養う」食材
れんこん、ほうれん草、小松菜、にんじん、長芋、おくら、豆腐、豆乳、牛乳、卵、鶏肉、豚肉、ぶり、たら、牡蠣、ひじき、百合根、ごま、松の実、くるみ、黒豆、はちみつ、梅干し、りんご、いちご、梨、マスカット、ぶどう、バナナ、ブルーベリー、レーズン、棗、枸杞の実、桑の実 など
〜おすすめメニュー〜
・れんこん、にんじん、大根のきんぴら
・ひじき入り豆腐和風ハンバーグ
・小松菜、にんじん、りんごのスムージー ☆体が冷えるので氷は入れずに
■血を「巡らせる」食材
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、青梗菜、ピーマン、ししとう、納豆、いわし、さんま、さば、あじ、かに、いか、たこ、みかん、オレンジ、ゆず、黒きくらげ、玫瑰花、シナモン、紅花、サフラン、山楂子、うこん、田七人参 など
〜おすすめメニュー〜
・納豆とおくらの梅和え
・いわしのつみれ汁 ☆ねぎ、にんじん、大根を多めに
・シナモン入り紅茶
暮らしの潤いケア
・汗が少ない冬も、水分補給はしっかりと。就寝前・起床後にぬるま湯を一杯飲むなど、日々の習慣にすると忘れにくくなります。寝付きが悪い人は、就寝前にホットミルクを飲むのもおすすめ。
・冬の食事には体が温まる汁物を添えて。野菜たっぷりの鍋料理も出番を増やしましょう。
・ミネラル豊富な野菜や果物を多めに取りましょう。
・暴飲暴食、冷たい飲食は避けて。胃腸を健やかに保ち、血と津液をしっかり養いましょう。
・加湿器を上手に使い、適度な湿度を保つことも大切です。
・冬の肌にはスキンケアも欠かせません。保湿効果の高い乳液やリップクリームでしっかりお手入れを。
・睡眠不足は体の潤いを消耗する一因に。夜更かしをせず、十分な睡眠を取りましょう。
・適度な運動を心がけて。血行が良くなり、全身に潤いが行き届きます。
<潤いアップに効くツボ>
三陰交(さんいんこう):内くるぶし中心から指幅4本分上の骨の後ろ。
神門(しんもん):手首のしわの小指側端、手首をそらすとくぼむところ。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。