家庭で役立つ中医学疲労編 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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家庭で役立つ中医学
疲労編

2023.12.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

「はぁ、疲れた……」。そんな言葉が思わず口に出てしまうこと、ありますよね。朝から体がだるい、やるきが起きない……。そんな状態が続いたら、心身に疲れが溜まっているサインです。日常の疲れはつい見過ごしがちですが、きちんと解消しないと蓄積されていくので要注意。疲労を感じたら無理をせず、早めのケアで元気を回復させましょう。

油断は禁物!「疲労」は体のアラームです

ちょっと忙しかったり運動したりすることで、疲れはだれもが感じるもの。こうした日常の疲れは、健康であれば食事や睡眠を十分に取ることですぐに回復できます。一方、寝ても食べても疲れが取れない、すぐに疲れる、やる気が起きない、といった症状が続いている場合は要注意。日々の疲れを解消しきれず、疲労が蓄積されている状態と考えられます。溜まった疲労を放っておくと、自律神経の失調やうつ病など、心身にさまざまな不調を招いてしまうことも。疲労は、体が休息を必要としている重要なサインです。痛み、発熱と並ぶ“生体の三大アラーム”ともいわれるので、疲れを感じたら放置せず、自分の体をきちんとケアしてあげることが大切です。

「脾胃」の不調が“疲労体質”を招く

中医学では、疲れを回復できる健康な体は「元気」がある状態と捉えます。元気は体の活動力となる「気(エネルギー)」で、食事の栄養をもとに生み出されるもの。そのため、食の不摂生や虚弱体質などで「脾胃(胃腸)」の機能が落ちていると、体内の気が不足して元気もなくなってしまいます。疲労を回復するエネルギーも足りず、疲れが溜まりやすい体質になってしまうのです。
また、脾胃の働きは「肝」のサポートを受けているため、過剰なストレスで肝がダメージを受けると脾胃が弱くなってしまうことも。よくある“ストレスで胃が痛い、食欲がない”といった状態で、こうした体質が続くと、気の不足を招いて心身ともに疲れやすくなってしまいます。

タイプ別・“疲労体質”ケア

慢性的に疲れを感じている人は、脾胃の働きが低下した“疲労体質”になっていると考えて。脾胃の不調にもさまざまな原因があるので、症状を参考に自分のタイプをチェックしてみましょう。栄養を十分取って気を充実させれば、心身も元気になって自然とやる気も起きてきます。

 

『胃腸が弱い「脾胃気虚」タイプ』
体質、慢性疾患、過労などの影響で、脾胃の働きが弱くなっているタイプ。消化のよい食事、温かい飲食などを心がけ、脾胃の負担を軽くすることを意識しましょう。体力をつけようと無理して食べると、かえって不調が悪化してしまうので気をつけて。

 

【 気になる症状 】
顔色が蒼白で艶がない、疲労感、倦怠感、やる気が出ない、気力がない、胃痛、食が細い、食後に眠くなる、冷え、軟便・下痢、舌苔が白く薄い、舌が腫れぼったい

 

【 おすすめ食材 】
長芋、大和芋、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、にんじん、いんげん豆、きのこ類、肉類、卵、さんま、鱒、大豆、ごま、くるみ、りんご、栗、棗、紅茶、高麗人参、西洋人参 など
〜おすすめメニュー〜
・長芋、エリンギ、牛肉の山椒煮(じゃがいもでもOK)
・くるみ入り栗まんじゅう
☆疲れいても休めない!そんなときは一杯の高麗人参茶もおすすめです。

 

『飲み過ぎ食べ過ぎ「痰湿の停滞」タイプ』
食の不摂生などで脾胃がダメージを受け、水分代謝が落ちて痰湿が溜まっているタイプ。食生活を改善して脾胃の働きを整え、溜まった痰湿を取り除くよう心がけましょう。また、脾胃が弱い「脾胃気虚」の人も要注意。元気になろうと消化能力を超えた食事(ステーキ、焼肉など)をすると、痰湿が溜まる要因になます。

 

【 気になる症状 】
体が重だるい、倦怠感、むくみ、軟便・下痢、胃のムカつき、口内の粘つき、舌苔が厚くベタつく

 

【 おすすめ食材 】
そば、大根、かぶ、白菜、海藻類、いわし、さんま、しいたけ、しめじ、緑豆、もやし、春雨 など
〜おすすめメニュー〜
・大根ときゅうりのサラダ、ゆずの皮添え
・白菜としめじの春雨スープ

 

『ストレスに注意「気の停滞」タイプ』
過剰なストレスで肝がダメージを受け、気の巡り停滞しているタイプ。気の巡りが滞ると脾胃の働きも低下するため、胃腸不調を起こしやすくなります。ストレスは心身の疲労につながるので、こまめに発散して気をスムーズに巡らせることを心がけましょう。

 

【 気になる症状 】
疲れやすい、やる気が持続しない、心配性、憂うつ、不安感、イライラ、胃痛・腹痛、胃の脹り(げっぷが出ると楽になる)、食欲にムラがある、便秘・下痢、寝付きが悪い、夢が多い

 

【 おすすめ食材 】
春菊、セロリ、大葉、香菜、いか、たこ、牡蠣、柑橘類、ぶとう、陳皮(みかんの皮)、ミント、ローズ、ラベンダー、カモミール、くちなし、うこん、ジャスミン など
〜おすすめメニュー〜
・セロリ、いか、たこのパエリア(サフラン入り)
・ジャスミンティー

暮らしのポイント

・自分の体質に合う食べ物を選びましょう。脾胃が弱い人は“消化の良いもの”、痰湿が溜まっている人は“利水作用のあるもの”、気が滞っている人は“香りの良いもの”などを意識して。

・暴飲暴食、過度な飲酒、油っこい料理、冷たい飲食などは控えましょう。脾胃に負担がかかり、消化機能が低下する要因になります。

・早寝、早起きをして、規則正しい生活リズムを保ちましょう。

・体を動かすと、エネルギーとなる「陽気」が生まれます。また、筋肉がつけば体力アップにつながるので、ジョギング、水泳、ヨガ、筋トレなどの運動を習慣にしましょう。

・気持ちがスッキリする自分なりの方法を見つけ、日々のストレスを上手に解消しましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。