監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.13
生理とセットで毎月やってくる「生理痛」。その痛みは人によってさまざまですが、生理だから仕方がない、とがまんしている人は多いと思います。生理痛は“あって当たり前”と思われがちですが、中医学では、健康体質であれば“軽いorないのが当たり前”。体質を改善すれば症状の緩和が期待できるので、諦めず積極的にケアしていきましょう。
生理痛は個人差の大きい症状
「生理痛」は、生理の直前から生理中にかけて起こる痛みの総称。生理を起こす「プロスタグランジン」という物質の分泌が過剰になり、子宮が必要以上に収縮して痛みが引き起こされます。
下腹部や腰の痛みが多く見られる症状ですが、人によっては頭痛や胃腸不調などを伴うことも。また、不調の度合いも個人差が大きく、中には寝込んでしまうほど症状が重いケースもあります。
生理痛の多くは治療の必要のないものですが、日常生活に支障が出るような場合は「月経困難症」と考えられます。子宮や卵巣の病気が原因になっている場合もあるので、症状がつらい場合はがまんせず、一度婦人科を受診してみましょう。
“不足”や“詰まり”の体質が生理痛を重くする
中医学では、痛みの症状は「不栄則痛」「不通則痛」と捉えます。不栄則痛は、体の栄養やエネルギーが不足して痛みが起こる状態。体質は「虚証」にあたります。一方、不通則痛は体内を巡る「気(エネルギー)」「血」が停滞して痛みが起こる状態で、こちらは「実証」の体質です。実際には、“気が十分にないため(虚証)、巡りが悪くなっている(実証)”など、虚証と実証が混在(虚実夾雑)しているケースも多くあります。
生理痛の直接的な要因はプロスタグランジンの過剰分泌ですが、こうした体質を抱えていると、不調が強く現れるようになります。反対に、体を健やかに整えれば生理痛を軽くすることができるので、重い症状に悩んでいる人は積極的に体質を改善しましょう。
ツボ押し&養生茶で生理痛体質を改善!〈虚証編〉
生理痛が重くなりやすい虚証、実証の体質について、不調改善につながるツボと養生茶をご紹介します。体質はいくつか重なっていることも多いので、症状を参考に自分の体をチェックしてみて。
<虚証の体質>
体に必要な栄養やエネルギーが“足りない”体質。体力がなく、虚弱な人に多いタイプです。
【虚証の人に共通のツボ】
関元(かんげん):へそから指4本分下
次髎(じりゅう):お尻にある仙骨(せんこつ)にあるくぼみ
足三里(あしさんり):膝の皿の下・外側の窪みから指4本分下
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指4本分上
●気血不足タイプ
我慢できる程度の腹痛が慢性的にあり、お腹を押すと痛みが和らぐことが特徴。その他、経血の量が少なく色が薄い、疲労感、倦怠感、顔色が青白いなどの症状が現れます。
[養生ポイント]基本的には栄養不足が原因。胃腸を元気にしてしっかり食事を取って。
【ツボ】
脾兪(ひゆ):肝兪から指3本分下
気海(きかい):おへそから指2本分下
【おすすめ養生茶】
なつめ茶、なつめ生姜茶
●肝腎の虚弱タイプ
我慢できる程度の腹痛が慢性的にあり、お腹を押すと痛みが和らぐことが特徴。その他、腰痛、めまい、耳鳴り、冷えなどの症状が現れます。
[養生ポイント]ストレスや疲労は肝・腎の大敵。心身ともに十分な休息を。
【ツボ】
腎兪(じんゆ):ウエスト位置背骨から指2本分外側
太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間の窪み
【おすすめ養生茶】
枸杞の実と桑の実のお茶
虚証の人に共通のツボ
ツボ押し&養生茶で生理痛体質を改善!〈実証編〉
<実証の体質>
“過剰”や“詰まり”がある体質。体力があって一見元気に見えますが、不要なものが溜まり、巡りが停滞して、不調を招いてしまうタイプです。
【実証の人に共通のツボ】
中極(ちゅうきょく):恥骨の上から指2本分上の位置
次髎(じりゅう):お尻にある仙骨(せんこつ)にあるくぼみ
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指4本分上
地機(ちき):膝の内側下部の骨のくぼみと、足首の内側を結ぶ線の上部から1/3の位置
●気の停滞タイプ
生理前・生理中に張るようなお腹の痛みがあります。経血は少なく、乳房の張り、イライラ、胸やみぞおちあたりの違和感、のどの詰まりなどを感じることも。
[養生ポイント]過剰なストレスが主な要因。気持ちをリラックスさせることを意識して。
【ツボ】
太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が交わるところの窪み
【おすすめ養生茶】
小金柑と山査子のお茶
●瘀血(血行不良)タイプ
生理前・生理中に腹痛があり、お腹を押すと不快に感じることが特徴。その他、経血に塊があり色が暗い、頭痛、肩こり、手足の冷えなどの症状が現れます。
[養生ポイント]冷えが大きな要因に。適度な運動、入浴、温かい飲食などを心がけて。
【ツボ】
膈兪(かくゆ):肩甲骨の下、背骨から指2本分外側
血海(けっかい):ひざの内側、皿から指3本分上
【おすすめ養生茶】
黒糖と玫瑰花茶のお茶
●湿熱タイプ
生理前・生理中に腹痛があり、灼熱感(シクシクする痛み)があることが特徴。その他、おりものが多く黄色っぽい・臭いが強い、にきび、太り気味、暑がりなどの症状が現れます。
[養生ポイント]暴飲暴食、油っこい食事などで胃腸が疲れ気味。食生活をしっかり整えて。
【ツボ】
行間(ぎょうかん):足の甲にある親指と人差し指の間
水道(すいどう):へそから約10cm下中央から左右指4本外側
【おすすめ養生茶】
あずき茶、どくだみ茶
実証の人に共通のツボ
暮らしのポイント
・冷えは痛みの大敵。生理中は特に意識して体を温めましょう。冷たい飲食も控えめに。
・しっかり睡眠を取り、心身の疲れを回復しましょう。
・日々のストレスはこまめに発散するよう心がけて。
・適度な運動を習慣に。気血の巡りを促し、ストレス解消にもつながります。
・食事は健康の基本。バランスよく栄養を取り、元気な体を保ちましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。