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ストレスフリーのコツは
「逍遥」にあり!

2023.05.16 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

仕事に追われ、家事・育児にも手を抜かず……。忙しく過ぎていく毎日を、私たちはなにかと一生懸命生きています。それはとても良いことではあるけれど、がんばり過ぎてふと疲れを感じてしまうことも。そんな時は、今回お話する「逍遥」のことを思い出してみてください。張り詰めた心がふっと緩む、気持ちがちょっと楽になる、そんなきっかけになれば嬉しく思います。

過剰なストレスは心と体の不調を招く

新しい環境でがんばり過ぎたり、周りにうまく馴染めなかったり。この時期は無意識に気持ちを張り詰めていることも多く、ストレスを抱えがちに。そのまま無理を続けていると、眠れない、食欲がない、疲れが取れないといったさまざまな心身の不調を招いてしまいます。一生懸命で真面目な人ほど無理をしてしまいがちですが、疲れたなと感じたら、一度立ち止まって心と体を労ってあげましょう
中医学では、ストレスによる精神トラブルは「肝」の機能低下による症状と考えます。肝は体内の「気(エネルギー)」の巡りを整え、ストレスや精神状態をコントロールする臓器。春の季節と関わりが深く、草木のようにのびのびとしている状態を好みます。そのため、過剰なストレスやプレッシャーで肝がダメージを受けると、気の巡りが停滞し、イライラや気分の落ち込みといった精神トラブルが起こりやすくなるのです。
このように、ストレスを上手にコントロールするためには、心身をリラックスさせて肝の働きを健やかに保つことが大切。そのためにも、これからお話する「逍遥」の考え方を、ぜひ日々の生活で意識してみてください。

自由に、おおらかに。「逍遥」な生き方を。

「逍遥」という言葉は、古代中国の思想家・荘子が書いた『逍遥游(しょうようゆう)』から生まれたもの。そこには、何にも縛られず自然界を遊び、風に乗って自由に大空を飛ぶ大鳥の姿が描かれていています。荘子は、その姿こそが人の理想的な生き方だと説きました。それは、“自然に身を任せて、あるがままを受け入れる”“心を縛られず自由に生きる”ということ。そんなおおらかで気持ちのいい状態を、中医学では「逍遥」と捉えるようになったのです。
現代社会を生きていると、人間関係のしがらみや仕事のプレッシャーなどがついて回り、“こうすべき、しなくては!”と心が窮屈になってしまいがち。この言葉は、そんな私たちに“もっとおおらかに、自由に生きていいよ”と教えてくれているようです。がんばることは決して悪いことではありません。でも、がんばることに縛られてしまうと、視野が狭くなり、かえってものごとが悪い方へ進んでしまうことも。だからこそ、気持ちに余裕がなくなったときは“逍遥で行こう”とつぶやいてみてください。どんな状況であっても、それに縛られる必要などなく心は自由。そんな風にのびのびと気楽に生きていけば、心も体もリラックスして、ものごとも自然とうまく進むようになるのではないでしょうか。

ぶらぶら、気ままに!「逍遥」な過ごし方

● 仕事と休息のバランスを上手にとりましょう。
中国には「文武の道、一張一弛」という言葉があります。これは、“弓を張り詰め過ぎると、必ずどこかで弦が切れてしまう”ということ。仕事も勉強も、がんばり過ぎは禁物です。バランスよく休息を取り、心と体にゆとりを持ちましょう。
●休みの日は外に出て、ぶらぶら散歩を楽しんで。
中国では、“自然と触れ合うことは、心の一番の薬”と考えます。忙しい毎日でなかなか余裕はないかもしれませんが、晴れた日にはぜひ外に出かけてみて。ご近所をぶらぶら歩けば、街路樹や庭の草木など、身近な自然が目を楽しませてくれますよ。
● 細かいことにこだわらず、名声や評価にとらわれず、人の目を気にしない。
ありのままの自分を受け入れて、できることをきちんとやればOK。成長する気持ちは大切だけれど、それはあくまで自分自身のこと。人の評価や名声にとらわれず、ムリなこと、イヤなことには「NO」と言えるようになりましょう。人の目を気にし過ぎると、自分を押し殺して我慢を続け、心が疲れてしまいます。
●ヨガやストレッチなどで体を動かす習慣を。
運動すると体の緊張がほぐれ、気・血の巡りが良くなってストレス解消につながります。また、ほどよい疲れは睡眠の質もアップしてくれるので、毎日体を動かす習慣をつけましょう。
●人とのコミュニケーションを大切に。
気配りや思いやりは大切だけれど、我慢はNG。素直に話してみれば案外“そんなこと”ということも多いので、思い込みで行動せずきちんとコミュニケーションを取りましょう。おしゃべりをしたり、悩みを話したり、そんな日々の会話も大切に。

食養生で気持ちをリラックス

“逍遥”な気持ちで過ごすためには、「肝」を整えて「気」をスムーズに巡らせることがポイント。香りの良いもの、酸味、苦味のある食材などを積極的に取りましょう。
【 おすすめ食材 】
春菊、三つ葉、セロリ、セリ、みょうが、バジル、香菜、金針菜、いか、たこ、しじみ、ムール貝、柑橘類、梅干し、トマト、ミント、うこん など
【 おすすめティー】
ローズティー、ラベンダーティー、カモミールティー、ジャスミンティー など
〜おすすめメニュー〜
・うこん入り、魚介のパエリア
・たこ、セロリ、トマトのガスパチョ(バジル添え)
・ローズゼリー、甘夏ゼリー
・ハーブティー

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。