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なんとかしたい! つらい「肩こり」

2023.04.18 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

ガチガチに固まった肩が、痛い、つらい…。そんな「肩こり」の症状は日本の国民病とも言われ、女性が感じる自覚症状の1位※にもなっているほど。肩こりは季節を問わず起こりますが、春はストレスの影響で症状が悪化してしまうこともあるので注意が必要です。放っておくと頭痛やめまいなどを伴うケースもあるので、早めのケアでつらい肩こりをほぐしましょう。
※厚生労働省調査 平成22年国民生活基礎調査

筋肉の緊張、血行不良が「肩こり」を招く

「肩こり」は、首すじから肩、背中にかけての筋肉がこわばり、だるさや重さ、痛みなどを感じる症状のこと。同じ姿勢、目の酷使などで首や肩の緊張が長く続くと、筋肉が硬くこわばり、血管を圧迫します。すると、血流が悪くなって筋肉に十分な栄養や酸素が行き届かず、疲労物質も溜まって肩こりを感じるように。また、首(頸椎)は5〜6kgもある頭の重さを支えていて、その重さを分散させるために、前にそるようにカーブ(前弯)しています。ところが、現代社会の生活では仕事やスマートフォンの操作などで下を向くことが多く(中国では“低頭族”と呼ばれるそう!)、頸椎がまっすぐになったり(ストレートネック)、後弯したりすることも。その結果、さらに首や肩周辺への負担が大きくなり、肩こりを感じやすくなるのです。いずれにしても、肩こりは「長時間の同一姿勢」「姿勢の悪さ」「眼精疲労」「運動不足」「冷え」「ストレス」といった生活習慣が主な原因に。肩こりに悩まされている人はまず日々の生活を改善し、首や肩の負担を減らすことが大切です。

春はストレスによる「肝」の不調に気をつけて

中医学でも、肩こりは血行不良(瘀血)によって起こる症状と考えます。瘀血の要因は、偏った食生活、冷え、運動不足などさまざまですが、春に気をつけたいのは「ストレス」の影響。ストレスは、通常「肝」の疏泄機能(気を巡らせ、精神をのびやかに保つ自律神経のような働き)によってコントロールされています。反面、ストレスが過剰になると肝がダメージを受け、疏泄機能も低下するように。その結果、ストレスをうまく発散できずに緊張が続き、血管が収縮して瘀血を招いてしまうのです。また、「気(エネルギー)」は血と一緒に体内を巡り、血流を促す働きをしています。そのため、過剰なストレスで気の巡りが停滞すると、血流にもダイレクトに影響して瘀血を招くこともあります。このように、過剰なストレスは肩こりの大きな要因となります。春は、環境の変化や三寒四温の不安定な気候などで、気づかぬうちにストレスを抱えていることも多いもの。日々の生活で“こまめに発散”を心がけ、気持ちも肩もリラックスさせましょう

生活習慣を見直して「肩こり」をほぐす

肩こりは、同じ姿勢や運動不足といった生活習慣が主な原因。日々の行動を見直して、首や肩に負担のかからならい生活を心がけましょう。
【 暮らしの肩こりの予防法 】
1. 同じ姿勢を長時間続けないよう意識して(デスクワーク、スマートフォンの操作など)。1時間に1回程度を目安に、軽くストレッチ(下記参照)をして肩の緊張をほぐしましょう。目の疲れも肩こりの原因になるので、ときどき遠くを見て目を休めることも大切です。
2. バッグをいつも同じ肩にかけている人は、左右交互にかけるよう意識して。
3. 冷えは肩こりの大敵。寝る前の入浴、蒸しタオルなどで首や肩を温め、血行を良くして筋肉の緊張をほぐしましょう。冬はマフラーなどで首元を冷やさないことも大切です。
4. 適度な運動を習慣にして、血流を促して。寝る前のストレッチで体をほぐすのもポイントです。
5. ストレスも肩こりの一因に。趣味を楽しむ、おしゃべりをする、アロマオイルやハーブティーでリラックスするなど、気持ちを穏やかに保つよう心がけましょう。
【 肩をほぐす簡単ストレッチ 】
・肩をすくめるようにギューっと上げて、ストンと下ろす。
・背中側で手を組んで、後ろにぐーっと引っ張る。
・指先を肩先につけ、肘を大きく回して肩甲骨を動かす。
【 肩こりに効くツボ 】
・肩井:乳頭から真上に手をすり上げ、肩の一番高いところ
・天柱:髪の毛の生え際付近、首の太い骨の外側のところ
・曲池:ひじを曲げた時にできる、シワの終わるところ

肩こりに効くツボ

食養生で「気・血」の巡りをスムーズに

肩こりを改善するためには、体内の気・血をスムーズに巡らせることが大切。日々の食養生で体質を改善し、滞りがちな気・血の流れを整えましょう。
【 おすすめ食材 】
気の巡りを促す:春菊、三つ葉、せり、セロリ、大葉、みょうが、らっきょう、香菜、みかん、オレンジ、デコポン、ゆず、ミント、ローズ、ラベンダー、カモミール、ジャスミン など
血流を良くする:玉ねぎ、ねぎ、にんにく、にら、なす、いわし、さば、さんま、あじ、いか、たこ、黒きくらげ、山楂子、シナモン、紅花、サフラン、ウコン など
〜おすすめメニュー〜
・イカ、セロリ、パプリカの炒めもの
・黒きくらげ、玉ねぎ、なすの炒めもの
・ローズ入りゼリー

ローズ入りゼリー

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。