監修:楊 敏 先生(中医学講師)
手足が冷えて眠れない、揉んでも温めてもすぐ冷たくなる……。冬になると、そんな末端の冷えに悩まされる人は多いもの。冷え症自体は病気ではありませんが、放っておくとさまざまな不調を招く要因となります。体の中から“温活”をする中医学の養生で、冬でもぽかぽか体質をめざしましょう。
冬の手足が冷えやすいワケ
「血」と「陽気」の不調が冷えを招く
中医学では、手足の冷えは「血」や「陽気(体を温めるエネルギー)」の状態と深く関わっていると考えます。冬の末端冷え症は、次の3つが主な要因に。
【1】寒さによる血行不良
寒さには“収縮させ、流れを滞らせる(収引・凝滞)”という性質があるため、冬は血管が収縮して血流が滞りがちになります。そのため、末端まで血が十分巡らず、手足の冷えが起こりやすくなります。
【2】陽気の不足
“体の中の太陽”とも言われる「陽気」は、体を温め、血流を促すエネルギー源。そのため、寒さのダメージで陽気が不足すると、体を温める力が足りず、血流も滞り、手足まで冷えるようになります。
【3】血の不足
体を温める「陽気」は、「血」の流れに乗って体のすみずみまで届けられます。そのため、体内の血が不足して血流が悪くなると、手足まで血や陽気が十分に行き届かず、冷えが起こりやすくなります。
体の冷えは、中医学で考える「未病(病気になる一歩手前)」の状態。そのままにしていると、頭痛や肩こり、生理痛、便秘といったさまざまな不調を引き起こす要因となります。免疫力が落ちてかぜを引きやすくなることもあるので、積極的に体質を改善することが大切です。
“ぽかぽか体質”をつくる冬の食養生
末端冷え症の人は、体を温める「陽気」と「血」が不足しがち。日々の食養生で陽気と血をしっかり養い、寒さに負けない体づくりをめざしましょう。
【養生の基本】
陽気と血を養う(補陽養血)。
冷えを取り除き、体を温める(温経散寒)。
【食養生】
気・血を養い、体を温める食材を積極的に。
体を温める:ねぎ、玉ねぎ、しょうが、にんにく、唐辛子、シナモン、八角、小茴香 など
気を養う:長いも、さつまいも、じゃがいも、かぼちゃ、にら、にんじん、牛肉 など
血を養う:レバー、小松菜、ほうれん草、棗、クコの実、かつお、さんま、羊肉 など
☆冷たい飲食物は避けるのが基本。サラダも温野菜にして。
〈おすすめ料理〉
・羊肉のしゃぶしゃぶやジンギスカン
・香味野菜たっぷりの鍋料理、つみれ入りのおでん
・シナモン入りの紅茶
〈冬の薬膳酒レシピ〉
ホワイトリカー(1~1.8L)に棗、クコの実(各100g)、氷砂糖(200g)を入れて3カ月程度漬ける
●ワンポイント
冬におすすめの薬膳酒なので、今年間に合わなければ来年チャレンジを。ただし、夏も冷房などで冷えがちな人は通年飲んでもOKです。
薬膳酒
暮らしの養生で冷えないカラダづくり
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。