監修:楊 敏 先生(中医学講師)
高温多湿な梅雨や夏は、ウイルスや細菌、寄生虫などの食中毒・食あたりが増える季節。なかでもカンピロバクターなどの細菌性食中毒が増加し、嘔吐、下痢、腹痛、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などのつらい症状を引き起こします。
今回は、そんな食中毒・食あたりを予防する中医学の知恵をみていきましょう。
脾が健やかになると腸管力も高まる
腸は胃で消化されたものを受け入れ栄養を吸収しながら、異物や病原菌の感染を予防します。
中医学で腸は、飲食物から栄養素を消化吸収し、良いもの(清)を心肺や全身へ運び、悪いもの(濁)を下に降ろし、外へ排泄するという、脾胃の働き「運化」・「昇清(しょうせい)」・「降濁(こうだく)」を担うと考えます。つまり、脾胃の運化機能が強ければ、腸管の消化吸収力や免疫力は強くなると考えるのです。
脾は温かい場所を好む!特徴に合わせた食中毒の予防法
現代医学でも、消化酵素が活発に動く温度は37度前後と言われています。つまり、脾(胃・腸)が温かいと活発に動き、冷えると働きが鈍くなり異常をきたしやすいのです。お腹が冷えた状態だと、脾(胃・腸)の働きが低下し、食中毒や消化不良などの胃腸疾患にかかりやすくなってしまいます。
(2) 生ものは控え、サラダはドレッシングで工夫する
冷たいものを食べるときは、体を温め殺菌効果のある食材を活用しましょう。
●しょうが、ミョウガ、ねぎ、玉ねぎ、にんにく、大葉、梅干しなどの薬味、わさび、唐辛子、お酢などの調味料 など
エアコンは28℃くらいに設定、風向きにも注意し、適宜空気の入れ替えをするなど外の空気を感じましょう。夏に汗をかくと体の新陳代謝も高まるので、たまにはエアコンを切って体を自然に任せてみてくださいね。
脾は湿気が苦手?多湿な環境から脾を守る方法
(1)水分の摂りすぎに注意する
※清暑利湿・健脾安神:暑気をうち払い湿を取り除く、脾を健やかにして精神を穏やかにする
夏こそ胃腸を温め、食中毒を予防しよう!
しょうがは漢方薬の生姜(しょうきょう)としても使われ、脾胃の消化機能と肺の呼吸機能をよくしてくれる食材。
散寒解表(さんかんげひょう・風邪の治療)・温胃止嘔(おんいしおう・脾胃を温めて嘔吐下痢の治療)・化痰利水(かたんりすい)などの効能があり、とくに解毒作用もあるため、魚介類の食中毒(嘔吐や下痢など)にも使われてきました。食中毒予防のためにしょうがを薬味として、毎日の献立に活用してくださいね。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。