監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.49
新緑がまぶしい季節になりましたが、今年は「ステイホーム」が合言葉。外出しにくい環境の中、さまざまな不安も重なってストレスが溜まりがちになっていませんか?
過剰なストレスは心身にダメージを与えるだけでなく、“美容の大敵”にもなるので要注意。不調のサインを見逃さず、日々のケアでココロも肌も元気にキレイをめざしましょう!
「ストレス」「肝」「肌」の密接な関係
中医学で、ストレスと肌の関係には五臓の「肝(かん)」(肝臓)の働きが影響すると考えます。【「肝」の主な4つの働き】
・「血(けつ)」を貯蔵する
・「気」(エネルギー)の巡りを整える
・ストレスを発散させる
・筋(腱、筋膜、じん帯など)や目の機能を維持する
肝の蓄える血が十分にあれば、肌にも血の栄養や潤いがしっかり行き届きます。さらに、全身を巡る血は老廃物の回収も担っているため、肌の状態は健やかに保たれるのです。
また、肝の働きが良いとストレスや気の巡りも上手くコントロールできるため、精神も安定しやすくなります。
一方、肝は過剰なストレスがダメージとなり、その機能が低下してしまうことも。すると、血が十分に運ばれず肌の栄養や潤いが不足しがちになり、老廃物も溜まって肌の不調が起こりやすくなるのです。
また、ストレスが溜まりやすく、気の巡りも停滞してしまうため、イライラやうつ症状などの精神トラブルも起こりやすくなります。
症状でチェック!「肝」のSOSサイン
「肝」は人体の解毒器官。食事に含まれる有害成分や薬物などは、肝の働きで解毒されます。そのため、過剰なストレスなどで肝の機能が落ち、毒素が正常に排出されなくなると、そのサインとして皮膚にさまざまな症状が現れます。
(1)黄疸(おうだん)
肝の働きが落ちると、血中の「ビリルビン」という成分が上手く代謝されず増加してしまいます。その結果、皮膚や眼球結膜(白目の部分)に黄色っぽい色(オレンジ色に近いことも)がつくようになります。
肝の働きが落ちると、血中の「ビリルビン」という成分が上手く代謝されず増加してしまいます。その結果、皮膚や眼球結膜(白目の部分)に黄色っぽい色(オレンジ色に近いことも)がつくようになります。
(2)赤い湿疹
肝のデトックス機能が低下すると、急な紅斑やかゆみなどの症状が現れやすくなります。そのほか、食欲不振(肉や脂っこいものへの食欲が落ちる)、お腹の張りといった胃腸トラブルにつながることも。
(3)ニキビ・吹き出物
お酒の飲み過ぎ、過労、過度なストレスなどによって「肝」のデトックス機能が低下すると、さまざまな毒素が溜まって毛穴の詰まりが出てきます。その結果、ニキビや吹き出物ができやすくなるのです。
(4)肌のくすみ
「肝」に貯蔵される「血」が不足する「肝血虚(かんけっきょ)」の状態になると、皮膚に十分な栄養が行き届かず“くすみ肌”の要因に。また、肝機能の低下で解毒が十分にできない状態も、肌のくすみと関係しています。
(5)クモの巣状の赤み
毛細血管が何らかの理由で過剰に拡張すると、皮膚に細い糸やクモの巣のような赤みが現れます。こうした症状がある時は慢性肝炎なども疑われるため、肝からのSOSと受け止めてしっかり対処しましょう。
(6)手掌紅斑(しゅしょうこうはん)
手のひらの外周が赤く、中心は白っぽくなる症状です。赤い斑点が表れ、圧迫すると赤みが消えますが、すぐに戻ります。「肝」機能の低下や、慢性肝炎や肝硬変など「肝機能障害」のサインかもしれないので注意が必要です。特に(1)(5)(6)の症状がある場合、病院で検査することをおすすめします。
手のひらの外周が赤く、中心は白っぽくなる症状です。赤い斑点が表れ、圧迫すると赤みが消えますが、すぐに戻ります。「肝」機能の低下や、慢性肝炎や肝硬変など「肝機能障害」のサインかもしれないので注意が必要です。特に(1)(5)(6)の症状がある場合、病院で検査することをおすすめします。
●その他の肝機能不調のサイン
イライラしやすい、目の疲れ・充血、ふらつき・めまい、睡眠障害、頭頂部・こめかみ・後頭部の頭痛、PMS(月経前症候群)、排便異常(便秘や下痢)、足の痙攣 など
イライラしやすい、目の疲れ・充血、ふらつき・めまい、睡眠障害、頭頂部・こめかみ・後頭部の頭痛、PMS(月経前症候群)、排便異常(便秘や下痢)、足の痙攣 など
“ストレス肌荒れ”を防ぐ4つの「肝」ケア
ストレスによる肌トラブルを防ぐためには、「肝」の働きを整えることが大切。だれでも簡単にできる4つのケア習慣をご紹介します。
(1)十分な睡眠をとり睡眠リズムを守る
体内を巡る「血」は睡眠中に「肝」へと戻ってデトックスされ、きれいになって再び全身に行き渡ります。そのため、睡眠を十分にとることはとても大切なこと。毎日23時を目安に就寝し、6〜7時間の睡眠を確保するよう心がけましょう。
夜の睡眠が足りない時は、昼寝(30分程度)も上手に活用するのもおすすめ。また、生活リズムを守ることも、質の良い睡眠を保つためのポイントです。
(2)目の使い過ぎに注意
目を酷使すると、「肝」に蓄える「血」を消耗してしまいます。また、中医学には「閉目養神(へいもくようじん)」という言葉があり、目を閉じて視覚による刺激を少なくすることは、精神を休めることにつながると考えます。
現在の生活ではスマートフォンやパソコンなどでつい目を酷使しがちです。疲れたなと感じたら、1〜2分程度目を閉じて休める習慣をつけましょう。
(3)少食を心がけて
食べ過ぎ(特に肉や脂っこいもの)、アルコールの取り過ぎなどは、「肝」を過剰に働かせる要因に。こうした食生活が続くと、肝が疲れて機能が落ちてしまいます。日頃から腹八分目を意識して、特に夜の食事は少なめを心がけましょう。
【積極的に取りたい食材】
香りのある食材、青い葉の野菜、黄色い根菜類
※にんじん、かぼちゃ、玉ねぎ、春菊、パクチー、みかん、琵琶 など
※にんじん、かぼちゃ、玉ねぎ、春菊、パクチー、みかん、琵琶 など
【お茶でストレスを和らげて】
10時と15時を目安に、ティータイムでリラックスする習慣を。お茶は、紅茶にバラや菊花、クコの実などを加えたブレンドティーがおすすめです。
(4)身体のリラックス習慣を
朝目覚めたら、起き上がる前に四肢と背骨を伸ばすことで自律神経が整います。
また、夜ふとんに入る直前に、目を閉じて3〜5回深呼吸。気持ちが落ち着いて、眠りやすくなりますよ。
習慣はちょっとした心がけ次第です。4つのケアでストレスに負けない体質をつくりましょうね。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など