監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.44
ガサガサでひび割れたり、皮がめくれたり……。唇が荒れていると口紅もきれいに塗れず、せっかくのメイクが決まらないことも。つきまとう不快感や痛みもストレスになり、なんとかしたい!と悩んでいる人も多いのでは?
空気が乾燥する冬は唇の荒れも悪化しやすい時期。きちんとケアをして、ふっくらうるツヤ唇をめざしましょう。
唇は乾燥しやすくデリケート
唇の構造は皮膚と同じで、角質層や表皮、真皮などから成り立っています。ただし、唇には皮脂腺や汗腺がありません。そのため、表面に皮脂膜ができず、水分保持機能が低い状態に。
また、角質層が薄くバリア機能が弱いため、乾燥や紫外線のダメージを受けやすいことも唇の特徴です。
このように、唇は顔の中でも特に乾燥しやすく、デリケートなパーツです。肌は念入りにお手入れするけれど、唇はリップクリームだけ。そんな人は意外と多いと思いますが、トラブルのない唇を保つためには、肌と同じように丁寧なケアが必要なのです。
体内の不調も、唇の荒れの原因に
繰り返す唇の荒れを改善するためには、体の中から整えることも大切。中医学ではすべての臓器や組織は互いに影響しあっている(全体観)と考えていて、唇のトラブルにも体内の不調が反映されていると捉えます。
唇の状態と深く関わるのは、食事の栄養から「血(けつ)」を生み出す「脾胃(ひい)」(胃腸)と、体内の潤いの源となる「腎」です。これらの臓器に不調があると、唇に十分な栄養や潤いが行き届かず、乾燥や荒れが起こりやすくなります。
体質からみると、「血虚」(血不足)、「陰虚」(潤い不足)、「瘀血」(血行不良)、「熱毒」(乾燥が強く炎症もある状態)などの不調が唇のトラブルを起こす要因となります。
毎日続けて。潤いキープの唇ケア
しゃべったり食事をしたり、唇は日常生活の中で常に刺激を受けています。潤いも失われやすいので、こまめなケアを心がけましょう。
【基本のケア】
(1)清潔をキープ
唇は呼吸をすることで雑菌が付いたり、食事の汚れが残っていたりするもの。食後には唇を水で洗う、濡れたティッシュでやさしく拭くなど、清潔な状態を保ちましょう。
(2)しっかり保湿
潤い成分配合のリップクリームでしっかり保湿を。ジェルタイプ、チューブタイプなど、柔らかくて浸透しやすいものがおすすめです。
(3)オイルで潤いを閉じ込める
唇は特に潤いが逃げやすい場所。保湿した後は、オイルやリップバーム、はちみつなどを塗って乾燥を防ぎましょう。
【スペシャルケア】
● しっとりスチーム
マグカップなどに熱めの湯や飲み物を入れ、唇に湯気をあてて潤いを。しっとりしたら、リップクリームとオイルで保湿して。
● 血行促進!唇エクササイズ
上下の歯の間に唇を挟み、5〜10秒ほどおいてパッとはなす。この「んぱっ」を2〜3回繰り返して血行促進を。血行が良くなると、潤いが行き届いて乾燥予防につながります。
根本から「荒れない唇」に!基本のケア
しっかり保湿をしても改善しないときは、体の中からケアを。唇の乾燥につながる不調を整え、根本から「荒れない唇」をめざしましょう。
【基本のケア】
● 「脾胃」を元気に保つ
胃腸を整えてしっかり栄養を取り、唇に栄養と潤いを与える「血」を養いましょう。暴飲暴食、冷たい飲食、辛いものや油っこい料理の取り過ぎなどは、胃腸の負担になるので気をつけて。
● 「腎」の働きを健やかに
腎は冷えに弱いため、冬は働きが落ちやすい時期。特に腰回り(腎の近く)をしっかり温めて体を冷やさないように。過度な疲労も腎を消耗させるので、休息を十分取ることも大切です。
● 食事のポイント
・体の水分を奪うもの(せんべい類、ビスケット、炒ったナッツ、乾き物など)は控えめに。
・刺激物や油っこい料理は、体内に余分な熱を生み乾燥を招くので気をつけて。
体質別・ふっくらうるツヤ食養生
(1)血が足りない「血虚(けっきょ)」タイプ
唇に栄養や潤いを与える「血」が不足しているタイプ。バランスよく栄養を取り、血をしっかり養いましょう。過度なダイエットはNGです。
・気になる症状
唇の血色が悪い、乾燥肌、疲労感、不眠、めまい、月経量が少なく色が淡い
・おすすめ食材、生薬
赤みのある肉・魚などのタンパク質、レバー、かつお、ほうれん草、りんご、なつめ、クコの実、プルーン など
(2)潤い不足の「陰虚(いんきょ)」タイプ
津液(潤い)が不足して、体が乾燥しているタイプ。30代後半くらいから自然と潤いが不足しがちになるので、積極的にケアを。
・気になる症状
乾燥肌、のぼせ、ほてり、便秘がち、のどの渇き、ドライアイ
・おすすめ食材、生薬
長芋、白きくらげ、ぶどう、梨、すっぽん、手羽先、豚足、魚(刺身やお寿司など)、哈士蟆油(はしまゆ) など
(3)血流が悪い「瘀血(おけつ)」タイプ
血流が滞り、唇に十分な栄養や潤いが行き届かないタイプ。冷えは血行を悪化させるため、入浴や温かい食事で体をしっかり温めて。適度な運動も血行を促すポイントです。
・気になる症状
唇が黒っぽい、色素沈着しやすい、くま、頭痛、生理痛、しこり
・おすすめ食材、生薬
青魚、サフラン、玉ねぎ、桃、ローズティー、紅沙棘(ホンサージ) など
(4)乾燥が強い「熱毒(ねつどく)」タイプ
亀裂や炎症が起こる口唇炎、ガサガサ皮剥けを繰り返す剥奪性口唇炎など、強い乾燥症状が起こりやすいタイプ。体に溜まった過剰な熱を下げることが養生の基本です。
・気になる症状
保湿しても乾燥が続きヒリヒリ痛む、唇の皮が剥ける、唇が赤い、口の渇き、のどの痛み、胃痛、にきび、口内炎
・おすすめ食材、生薬
れんこん、小松菜、大根、白菜、セロリ、緑豆、鶏肉、豚肉、緑茶、菊花、ミント、五行草 など
タイプに合わせた対策を心がけ、「ふっくらうるツヤリップ」を目指しましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など