監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.39
顔に汗や脂が浮き出る時季になると気になる「メイク崩れ」。実は化粧の崩れやすさにも体質が関係しています。メイク直しをなるべく減らし、いつまでも清潔な肌を保つためにも、メイク崩れしやすい体質とその対処法を見ていきましょう。
中医学で考えるメイク崩れを引き起こしてしまう原因
特に夏は暑熱(しょねつ)が影響し、さらに化粧が崩れやすくなるのです。
まずはここから実践!メイク崩れを防ぐ3つの基礎ケア
洗顔後、2~10分間冷パック。化粧水・保湿乳液・美容液をつけ、しばらく置いてから化粧をしましょう。
【中医学の考え方を取り入れたオーガニックパック】
・五行草(スベリヒユ):潤い、ひきしめ
・紫根:シミ、赤みの緩和
・緑茶:熱を冷ます
・地楡(ワレモコウ):赤みの緩和
上記いずれかの生薬10gを1,000mlの水に10~20分間つけて、加熱します。沸騰したら弱火で10分煎じ、火を止め薬液が冷めたらシルクのタオルやパックにできるシートを浸して使います。薬液は冷蔵保存することで、約3日間使用できます。
下記のツボを一回各30秒~1分間押します。1日2~3セット実践するといいでしょう。
・熱、炎症を緩和する「曲池(きょくち)」:ひじを曲げた時にできる、シワの終わるところ
・心を落ち着かせる「内関(ないかん)」:手首から肘に向かって指3本分置いたところ
・口元・顔のトラブル対策「合谷(ごうこく)」:手の甲、人差し指の骨のキワ
(3)瞑想
メイク崩れに瞑想?と思われるかもしれませんが、中医学では「心を落ち着ければ自然と涼しくなる」という言葉があります。涼しい風景を思い浮かべたり、静かにリラックスすることは、体の熱を冷ます意外な方法の一つです。
中医学的メイク崩れしやすい体質チェック
それでは、主な症状からみるメイク崩れしやすい体質チェックです。主な体質は4つ。タイプは複数当てはまることもあります。
(1)暑がりの「素体陽盛血熱(そたいようせいけつねつ)」タイプ
顔が赤い、肌の炎症が起こりやすい、粘膜の炎症が起きやすい、毛穴が粗い、口が渇く、汗っかき
(2)あがり症・イライラの「肝鬱気滞血熱(かんうつきたいけつねつ)」タイプ
緊張すると顔が赤くなる、ニキビ・吹き出もの・シミができやすい、イライラしやすい、怒りっぽい、便通が悪い、お腹が張る、のぼせ
(3)更年期に多いのぼせ・発汗の「肝腎陰虚血熱(かんじんいんきょけつねつ)」タイプ
のぼせ、首から上の発汗、顔が赤い、毛穴が粗い、五点分布が脂っぽい、寝汗、口が渇く
(4)焦燥・不安感が多い「心腎不交血熱(しんじんふこうけつねつ)」タイプ
常にそわそわと落ち着かず焦りがある、顔が赤い、毛穴が粗い、五点分布が脂っぽい、口の渇き、不安感、便秘気味、寝汗
タイプ別メイク崩れの対処法
体質をチェックできたら、それぞれの対処法をみていきましょう。複数のタイプが当てはまった方は、まずできることから対策を。
(1)暑がりタイプ
・体にこもった余計な熱を冷ます「清熱涼血整肌(せいねつりょうけつせいき)」
体の熱をさます性質がある緑茶、きゅうり、れんこん、白菜、大根などの食材がおすすめ。味の濃い食べ物、天ぷらなどの揚げ物、カレーライスなどの刺激のある食べ物は熱を生じやすいので気をつけて。
(2)あがり症・イライラタイプ
・気持ちの凝りをほぐしてリラックス「清熱疏肝理気(せいねつそかんりき)」
自律神経が乱れやすい方が多いので、まずおすすめしたいのが睡眠のリズムを守ること。交感神経と副交感神経のスイッチの入れ替わりがスムーズになり、さまざまな症状が和らぐでしょう。余分な熱を取る青い葉野菜や、柑橘系の食材、香りの良いしそ、パクチー、セロリ、ジャスミン茶などの食材がおすすめ。
(3)更年期に多いのぼせ・発汗タイプ
・無理しすぎない、疲れすぎない「清熱補益肝腎(せいねつほえきかんじん)」
黒ごま、黒豆、黒きくらげなどの腎を養う黒い食材、スイカ、牛乳、豚肉、チーズなどの食材がおすすめ。特に17〜19時は「腎」のエネルギーを効率よくチャージできる時間です。例えば小豆の入ったおやつをつまむなど、腎を補い、頑張り過ぎない生活を心がけましょう。
(4)焦燥・不安感が多いタイプ
・リラックスで「心(しん)」を養い、「血(けつ)」を補って余計な熱を冷ます「清熱滋養心腎(せいねつじようしんじん)」
焦燥感は熱を増やしてしまう原因になります。昼は「心」を養う時間なので、焦りや不安を鎮めるためにも、ほんの10~30分程度でも昼寝をしましょう。目をつむっているだけでも「心」を養うことができます。また、トマトや赤身肉など赤い食材を食事に摂り入れたり、リラックスした音楽を聴いてゆっくり休息をとるといいでしょう。
テレビやインターネットでは、メイク崩れを防ぐ方法がさまざま紹介されていますが、自分の体質を知って、自分に合った対策をとることが大切です。中医学を取り入れて、夏の暑さと上手につきあっていきましょう。
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この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など