監修:楊 敏 先生(中医学講師)
よくわかる中医学vol.21
前回ご紹介した「陰陽説」と同じく、中医学の基本となっている「五行説」を聞いたことがあるでしょうか?五行説とは自然界のすべてのものを概ね5つの性質「木・火・土・金・水」に分けた考え方のことです。
今回は「五行説」について、その概要と属性をご紹介しながら、中国に数千年前から伝えられてきた考え方をご紹介します。
古代の中国では自然界に存在するものの働きを5つにわけ、それぞれの性質を分かりやすくするために「木・火・土・金・水」という身近なものになぞらえて表現しました。
ここからは「木・火・土・金・水」それぞれの性質に基づいた考え方と養生ポイントを詳しくみていきましょう。
木の幹や枝のように天に向かって成長する「木」
「木(もく)」は属性として、木のようにのびのびと成長するイメージのあるものが当てはめられています。「五臓」では「肝(かん)」(肝臓)、「五季」(季節)では「春」です。
春は暖かくなり、植物ものびのびと成長する季節ですが、三寒四温の気候や環境の変化などが影響してストレスが溜まりやすく、うつうつとした気分になりやすい季節でもあります。
「肝」はストレスの影響を受けやすい臓腑なので、春は特に養生するといいでしょう。「肝」の食養生として、「五味」にあるように「酸」の味に属する酸っぱいものを摂るのがおすすめです。「李」(すもも)も酸っぱい果実の代表として「五果」に属しています。
燃えて上に向かい熱を起こす「火」
「火(か)」は属性として、火のように体を温めるイメージのあるものが当てはめられています。「五臓」では「心(しん)」(心臓)、「五季」では「夏」です。
心を養うらっきょう
死滅したものを迎え入れ、新しい命を生み出す基盤「土」
「土(ど)」は属性として、土のように栄養を与える基盤のイメージがあるものが当てはめられています。「五臓」では「脾(ひ)」(胃腸)、「五季」では「長夏」です。
「五菜」の「葵」は、オクラなどのアオイ科の植物であるとする説などさまざまあります。また、「五果」の「棗(なつめ)」は気血を補い、脾を養う作用がある食材です。
脾を養うなつめ
鋳型(いがた)に合わせてさまざまな形に変形する「金」
「金(ごん)」は属性として、鉱物に水が溜まるように水分をコントロールするイメージのあるものが当てはめられています。「五臓」では「肺」、「五季」では「秋」です。
下方に流れてさまざまなものを溶かす「水」
「水(すい)」は属性として、冷たく潤すイメージのあるものが当てはめられています。「五臓」では「腎」、「五季」では「冬」です。
腎を養う食材は「五穀」にある「豆」。豆は女性ホルモンになるイソフラボンを豊富に含むため、特に更年期には多く摂り入れるようにしましょう。豆そのものはもちろん、豆の苗(豆苗、もやしなど)もおすすめです。
また、「腎虚(じんきょ)」の代表的な症状は腰痛です。「五果」の「栗」や「五畜」の「豚」を使った角煮は、腎を養い腰痛緩和を助ける作用があります。食卓に取り入れてみましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。