監修:楊 敏 先生(中医学講師)
よくわかる中医学vol.16
よくわかる中医学シリーズ、今回のテーマは気象や環境がもたらす病気の原因「六淫(ろくいん)」です。
私たちはどのようにして健康を保っているのでしょうか。中医学では「正気(せいき)」と「邪気(じゃき)」の力関係のバランスによって健康を保っていると考えます。正気は体が備えている抵抗力のこと。邪気は病を起こす原因のことです。
気象現象と症状が関連する「六淫」の特徴
中医学では自然界で起こる気象現象を「六気(ろっき)」といい、「風」、「寒」、「暑」、「湿」、「燥」、「火」(熱)の6つに分類します。本来正常であれば人体に無害なものです。しかし、たとえば暑すぎる、寒すぎるといった異常気象などで、これらの六気の異常が病気の原因となる場合を「六淫」といいます。「六淫」はそれぞれ「風邪(ふうじゃ)」、「寒邪(かんじゃ)」、「暑邪(しょじゃ)」、「湿邪(しつじゃ)」、「燥邪(そうじゃ)」、「火邪(かじゃ)」と呼びます。
【六淫の特徴】
「風邪」:体のあちこちに出る痛み・かゆみ、めまい、痙攣などが出やすい、他の邪気と絡み合って発症する場合が多い
「寒邪」:冷えや痛みの症状などが出やすい
「暑邪」:発熱や倦怠感などが出やすい、湿邪と絡み合って発症する場合が多い
「湿邪」:重だるい、むくみ、軟便、吐き気などが出やすく慢性化しやすい
「燥邪」:乾燥、から咳などが出やすい
「火邪」:汗のかきすぎ、発熱、皮膚の赤い腫れ、出血などが出やすい
季節性がある「六淫」、取り巻く環境によって変化も
六淫を踏まえて冬の「寒邪」対策
体を温める性質が強い食材:山椒の実、ニラ、えび、ねぎ、しょうが、羊肉 など
※体を温める作用が強い肉は順番に羊肉、牛肉、鶏肉です。【COCOKARA中医学おすすめレシピ】
冷えない体をつくる「羊肉の辛味炒め」
冷えない体をつくる「羊肉の辛味炒め」
年間を通してみられる「風邪(ふうじゃ)」対策
□上半身に出やすい
風邪はほかの邪気を伴って体に入ってくる性質があります。そのためその季節に多く見られる六淫を遠ざけることも大切です。また、六淫は皮膚(肌)から侵入します。抵抗力が下がっていると感じるときは特に、衣類で覆うなど肌を露出しすぎないようにしましょう。
【摂り入れたい食材】
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。