監修:陳 志清 先生(中医学講師)
冷えと生理痛の対策で体質が変わる
美しい女性の条件は、温めること
女性なら誰もが一度は経験したことがある生理にまつわるお悩み。痛みが苦しくて仕事が進まなかったり、休みの日には折角の予定が台無しになってしまったり、生理トラブルのせいでつらい思いをしたこと、ありますよね。
その生理トラブル、実は冷えによるものが多いんです。
美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを例えたことばに「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」があります。実はこの3つの花は、漢方薬に使われる生薬で、それぞれ補血、血行の改善、精神の安定、睡眠の改善などに効果的です。美人を作る生薬とも言えるこれらの花は、いずれも春から夏の暖かい時期に咲く花。これらの花のように、女性にとって暖かさ(温かさ)は美しさの条件とも言えます。
これからどんどん寒くなる時期。今からでも実践できる「冷え」による生理トラブルの中医学的攻略法をお伝えします。
攻略法(1)まずは「冷え」に気づき、その悪影響を認識すること
体の「冷え」はさまざまな不調を招きます。これは冷えによって「気」(エネルギー)と「血(けつ)」の巡りが乱れてしまうためです。気血の巡りはさまざまなホルモンの伝達と働きに関連しています。月経は脳から卵巣、子宮の間のホルモン伝達がなされて起こるため、気血の巡りを良くすることは特に女性にとって大切です。
・冷えによって起こりやすい、悪化しやすい症状
生理痛、立ちくらみ、かぜ、花粉症、肩こり、卵巣機能の低下、生理不順、子宮筋腫、チョコレート嚢胞(のうほう)、不妊 など
※卵巣機能の低下により更年期の症状が早く出てしまうことも
気血の滞りによる症状がひどくなる前に、冷えに結びつく生活習慣を改める必要があります。自覚症状がなくても冷えている「隠れ冷え」もあるので、まずは思い当たる生活習慣の改善から始めましょう。
・冷え体質さんによくある生活習慣
□冷たいものをよく飲む
□冬でも薄着をしている
□過剰なダイエット
□ストレス過多
□夜更かし
□睡眠不足
□運動不足
女性はなぜ冷えやすい?保温と気血の関係
「血」には体を巡って栄養を与え温める働きがあるため、体の温かさを保つために「血」はとても重要です。しかし、女性は月経、妊娠、出産、授乳といった生理機能によって「血」を消耗してしまうため、一生を通じて常に「血」が不足しがち。特に月経は、初潮から閉経まで平均で約35年間といわれ、その間毎月「血」を消耗しています。
また、女性ホルモンである「エストロゲン」は量が多すぎると血流の滞りを招いてしまいます。ホルモン量もバランスが大切です。
「血」は「気」によって生み出され、「気」の作用は「血」によって維持されます。気血はお互いが密接に連携し、依存し合う関係です。そのため、どちらかが不足したり滞ったりすると、もう一方にも影響してしまいます。
「血」が不足しがちな女性は、同時に気が不足、停滞している場合が多く、血流の悪化から冷えやすくなってしまうのです。
気血を補う方法、その巡りを良くする方法はカラダの中から「冷え」を改善!冷え性対策をご覧ください。
攻略法(2)生理トラブルを我慢しないこと
女性が抱える生理トラブルはさまざま。最も多いのが生理痛です。その他、生理不順、無月経、PMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)、ニキビ、吹き出物などがあります。
生理痛の中でも、特に強く痛む「子宮内膜症」。これは、本来なら子宮の中にある子宮内膜が、子宮以外の場所にできてしまう症状のこと。特に卵巣に内膜ができてしまうことを「チョコレート嚢胞(のうほう)」といいます。
子宮内膜症は着床障害、排卵障害や卵管の癒着などに繋がる可能性があり、不妊と非常に関係が深い症状です。
子宮内膜症の治療法として、生理を止める方法がありますが、それは妊娠を希望されている方にとって逆効果になることもあることを覚えておきましょう。
我慢して放置した生理トラブルは、悪化して、不妊へと繋がることがあります。
生理痛が「当たり前」だと思わずに、まずは「血」を補うこと、巡りを良くすることから始めてはいかがでしょうか。血は貯金と同じで、補わないでいると血の残高がどんどん減ってしまいます。銀行口座の役割となる血の貯蔵庫「肝(かん)」(肝臓)の機能も「血」の残高と一緒に低下してしまい、気の巡りの滞りに繋がります。
生理トラブルを根本から解決するには?体質を知って対処する
さまざまな症状の原因となる「冷え」は体質から改善することが大切です。その対処法は体質、年代によってさまざま。まずは自分の体質を知ることが重要です。
これから寒くなる季節、自分の「冷え」がどの体質のタイプなのかを知って早めの対策をとりましょう。
【COCOKARA中医学関連リンク】
まずは体質チェックから、
自分の冷え体質がわかったら、
カラダの中から「冷え」を改善!冷え性対策
※本記事は、2018年6月17日開催の講演会「今から始める女性のための漢方レッスン」(共催:イスクラ産業株式会社、日本中医薬研究会、朝日新聞出版)での講演内容を一部抜粋し紹介したものです。
この記事を監修された先生
中医学講師陳 志清 先生
陳 志清(ちん しせい)
日本中医薬研究会専任講師。日本不妊カウンセリング学会評議員。不妊カウンセラー。
1984年、南京中医薬大学卒業。1987年、陜西中医薬大学大学院修了。1993年、来日。2002年、広島大学大学院で薬学博士号取得。
共著に「やさしい中医学シリーズ5 心と体にやさしい不妊治療」(文芸社)。