漢方好きの薬剤師が、本場中国の薬局へ行ってみた!
こんにちは、柳沢です。昨年まで数年間、漢方専門の薬局で働いていた漢方好きの私ですが、3月末に漢方の本場中国にいってきました。今回は現地の薬局事情と、中国で親しまれていて日本の薬局でも購入できる「家庭のかぜ薬」をご紹介したいと思います。
風邪薬だけで200種類も!中国の薬局事情
滞在中に「日本と中国の薬局事情を比較してみよう」と思い、漢方専門の薬局でなく一般的な薬局(西洋薬・漢方薬の両方を取り扱う日本でいうドラックストアのようなところ)にも足を運んでみました。
さっそく、店頭の薬剤師さんに、「漢方のかぜ薬をみせてください」と言ってみました。薬局の薬剤師さんの答えは、「200種類以上あって全部見せられないですよ」とのこと。
「漢方専門の薬局でないのに、そんなにあるの?」と驚き、ふと壁際の商品陳列棚を見ると、壁一面に感冒(かんぼう:かぜのこと)の薬があります。棚にずらっと並んだ薬を数えてみると、確かに200種類を超える商品がありました。ちなみに、西洋薬も100種類程度ありました。
販売されている漢方薬の中には、日本で使われている処方もあり、見つけると毎回嬉しくなります。手前から解毒するもの、熱を冷ますもの、炎症を抑えるものなどずらっと薬が並びます
かぜ薬=葛根湯でない
みなさん、かぜの漢方薬と聞くと何を思い浮かべますか? かぜといったら「葛根湯(かっこんとう)」という方が多いのではないでしょうか。
「家庭のかぜの漢方薬」として、日本では非常に有名で定着している葛根湯ですが、実は中国では日本ほどメジャーではありません。
なぜかというと、かぜを引いた時には、悪寒がある時、熱が高い時、喉が痛い時、鼻水がでる時、など症状によって漢方薬の使い分けをすることが、一般的な家庭でも普通に行われているからです。症状に合わせて使い分ける、これが漢方薬の本来の姿なんです。そうすることで素早く症状にアプローチできるのです。
日本では症状に合わせた漢方薬の使い分け、という文化はまだないかもしれませんが、中国では家庭に漢方の知恵が根付いていて、家庭でも状況に応じて対応しているのです。
ちなみに、葛根湯は、ぞくぞくっと寒気がして発汗がすくないかぜの初期症状に服用すると効果的ですが、肩こりなどにも使われるものです。中国の薬局では葛根湯を置いていないこともあります。そういった時、寒気のあるかぜには、体表の血管を拡張し発汗させて症状を取り除く処方が使われることが多いようです。
お腹のかぜによく使われる漢方薬。アンプル剤や錠剤、顆粒剤など剤形がさまざまで多くの人に愛用されています
家庭にあると便利なかぜの漢方ベスト3は?
では、中国の家庭で実際によく使われるかぜ薬はどんなものでしょうか。今日は日本でも販売されている3種類をご紹介したいと思います。
・喉のかぜ対策に!銀翹散(ぎんぎょうさん)
のどの痛み・頭痛など炎症がある時や、口(のど)の渇きなど発熱時によく使われるタイプの漢方薬です。日本では「涼解楽(りょうかいらく)」「天津感冒片(てんしんかんぼうへん)」という名前で販売されています。
・お腹のかぜ対策に!藿香正気散(かっこうしょうきさん)
お腹のかぜに有名な漢方薬です。特に、吐き気・下痢の時よく飲まれます。中国では液体・粉薬・粒とさまざまな剤形で販売されていますが、日本では顆粒剤で「勝湿顆粒:しょうしつかりゅう」という名前で販売されています。
・かぜの予防に!板藍根(ばんらんこん)
板藍根はホソバタイセイ(又はタイセイ)というアブラナ科の植物の根を乾燥させた生薬で、板藍根はかぜの予防や喉の痛みに、子供からお年寄りまで愛用されています。日本では板藍根のエキスを抽出したお茶や食品(「板藍茶」「板藍のど飴」)などが販売されています。
いかがでしたか?
今回は、本場中国の薬局事情と中国の家庭でよく使われている漢方薬のご紹介でした。みなさんに、「かぜのタイプによって、漢方薬を変えることで早く治せる」と覚えていただけたら幸いです。
中国に行くのは4回目ですが、お店で冷たい水は出てこない、季節で飲むお茶を変えている、など中国に行く度に生活養生のレベルの高さに毎回驚きます。
また本場中国の病院事情や食に関してお伝えできればと思います。
(COCOKARA中医学編集部 薬剤師・国際中医専門員・中医アロマセラピスト 柳沢侑子)