ドキドキ、バクバク……。 不安な「動悸」を和らげる - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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ドキドキ、バクバク……。
不安な「動悸」を和らげる

2023.03.21 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

激しい運度をしたわけでもないのに、心臓がドキドキ、バクバク……。そんな「動悸」の症状を繰り返し、不安や悩みを感じている人は多いと思います。病院では特に異常が見つからないことも多い症状ですが、こうした状態が続くのはつらいもの。体質を整えることで症状の緩和につながるので、諦めず積極的に対処しましょう。

「動悸」は多くの人が感じる症状

動悸は心臓の拍動を感じ、不快感や違和感を覚える状態のこと。ドキドキと脈を早く感じる、ドクンドクンと強い鼓動を感じる、脈が飛ぶように感じられる、といった症状が現れます。動悸の要因は、貧血、更年期のホルモンバランスの乱れ、精神疾患などさまざまで、心臓のリズムの乱れ(不整脈)によって起こることも少なくありません。不整脈は心疾患のない人にも見られる害のない症状で、その結果生じる動悸も多くの場合は無害です。そのため、動悸を感じても深呼吸などですぐに落ち着く場合は、過剰に心配しなくても大丈夫。一方、頻繁に脈の飛びや乱れを感じ、胸の痛みや胸苦しさを伴うといった場合は、重い病気が隠れている可能性もあるため早めに医療機関を受診することが大切です。
<動悸を感じたら脈をチェック!>
まずは安静時の脈を確認。一般成人の正常な脈拍は1分間に60~90回程度で(個人差があり、脈拍は1分間に60~100回人もいます。)、脈の間隔は一定です。その後、動悸を感じた時にも脈のチェックを。脈拍が安静時より早すぎたり遅すぎたり、またリズムが乱れたりしている場合は不整脈と考えられます。
[脈の測り方]
手の平を上に向け、手首のすぐ下の橈骨(とうこつ)動脈に指を当てて測ります(安静状態で2分間程度)。

脈の測り方

「心・肝・脾」の不調が原因に

中医学では、動悸は心臓の拍動と関わる「心」「肝」「脾」の「気(エネルギー)・血」の異常から起こる症状と考えます。
原因[1]気滞血瘀・寒凝血瘀
体内の気は、血を巡らせるエネルギーとなります。そのため、ストレスなどで肝(気の巡りをコントロールする臓器)の働きが低下すると、気の巡りが停滞して血流も悪化しがちに。こうした状態が脈拍にも影響し、動悸の症状が現れやすくなります。また、体の冷えによる血流の悪化も、動悸を引き起こす要因となります。
原因[2]心脾両虚
「心」は血を全身に送り出し、「脾」は食事の栄養から気・血を生み出す臓器。その働きが低下すると、血を巡らせるエネルギー(気)と、血管を満たす血がともに不足し、拍動の力が弱くなって動悸が起こりやすくなります。

体質別ケアで動悸を改善

特に病気の心配がなくても、動悸の症状はやはり不快で不安なもの。気持ちよく毎日を過ごすためにも、体質を整えて動悸の起こりにくい体づくりをめざしましょう
「気滞血瘀・寒凝血瘀」タイプ
滞った血流を改善し、ストレスを発散させて気の巡りをスムーズに保ちましょう。
<よくある症状>
動悸(脈拍の乱れ、強い拍動など)、胸の不快感と胸痛(刺すような痛み、圧迫感など)、イライラ、不安感、手足の冷え(または冷えのぼせ)、不眠、月経周期の乱れ、PMSや月経痛が強い、舌の色が紫っぽく瘀斑がある、舌下静脈の怒張
< おすすめ食材 >
体を温めて血流を良く:玉ねぎ、ねぎ、しょうが、らっきょう、にんにく、青魚、黒きくらげ、山椒、黒酢、桃、山査子、シナモン、紅花、ローズ、ウコン、田七、丹参 など
肝を整え、気を巡らせる:春菊、三つ葉、セロリ、みょうが、バジル、いか、たこ、あさり、しじみ、柑橘類、ミント、ラベンダー、カモミール、クチナシ、サフラン など
☆生薬:薤白(らっきょう)
「心臓の野菜」と言われ、心の陽気を温め、気の巡りをよくする作用があります。酢と一緒に取ると効果アップが期待できるので、“らっきょうの黒酢漬け”は特におすすめ。
〜おすすめメニュー〜
・イカ、セロリ、黒きくらげのガーリック炒め
・みょうが、大葉入りイワシのつみれ汁
・らっきょうの黒酢漬け(紅花を少量加えて)☆1日2粒を習慣に!
・田七人参茶、丹参の薬酒
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「心脾両虚」タイプ
日々の食事でバランスよく栄養を取り、不足しがちな気・血をしっかり養いましょう。
<よくある症状>
動悸(脈拍が乱れて拍動が弱い)、疲労で動悸がひどくなる(胸苦しさ、シクシクとした痛み)、疲れやすい、めまい、息切れ、顔色が白い、艶がない、食が細い、軟便、睡眠が浅い、月経量が少ない、舌の色が淡く歯痕がある、
< おすすめ食材 >
気・血を養う:長いも、じゃがいも、かぼちゃ、にんじん、キャベツ、ほうれん草、小松菜、そらまめ、いんげん、レバー、鶏肉、牛肉、まぐろ、卵、牡蠣、ひじき、大豆、黒豆、金針菜、栗、ごま、ブルーベリー、レーズン、プルーン、蓮肉、棗(なつめ)、竜眼肉、五味子 など
※「気滞血瘀・寒凝血瘀」タイプの食材も合わせて取ると効果的
☆生薬:竜眼肉
胃腸を強くして気・血を養い、精神を安静にする作用があります。甘みのあるフルーツなので、お茶やおやつにもおすすめです。
〜おすすめメニュー〜
・さつまいも、栗、棗の甘露煮
・玉ねぎ、にんじん、牛肉の炒めもの
・竜眼肉、ブルーベリー入りの紅茶
・らっきょうの黒酢漬け(紅花を少量加えて)※1日2粒を習慣に!

生活習慣のポイント

1.暴飲暴食、冷たい飲食、過度な飲酒、喫煙は避けて!
2.過労、寝不足は心臓の負担に。疲れを溜めないよう生活リズムを整えましょう。
3.適度な運動習慣で、気・血の巡りを促しましょう。
4.ストレスも動悸の一因に。日々のストレスはこまめに発散を。
動悸が起きたら“深呼吸&ツボ押し”でケア
動悸が起きて焦りや不安を感じると、さらに症状が悪化してしまうことも。まずは深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、ツボ押し(20秒程度)で症状を和らげましょう。
・心臓と関わるツボ:内関、神門

心臓と関わるツボ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。