眠れない、憂うつ……。 その不調「夏季うつ」かも - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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眠れない、憂うつ……。
その不調「夏季うつ」かも

2022.07.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

キラキラと太陽が輝く夏は、ココロも元気に……。そんなイメージがある反面、夏は“眠れない、憂うつ、食欲がない”といった精神不調が起こりやすい時期でもあります。夏バテかも? と見過ごされがちな症状ですが、放っておくと心身ともにダメージを受けてしまうので要注意。不調を感じたら積極的にケアをして、夏を元気に乗り切りましょう。

夏バテと間違えやすい「夏季うつ」

最近耳にすることも増えた“季節性のうつ”。日照時間の短い冬のうつ(冬季うつ)はよく知られていますが、実はたくさん日光を浴びる夏にも精神不調(夏季うつ)が起こりやすいことがわかっています
“夏季うつ”の原因は明確ではありませんが、高温多湿の気候、強い日光などで体が疲弊し、これが精神状態にも影響して不眠、不安感といった不調を招くと考えられています。
【“夏季うつ”の主な症状】
・不眠(寝つきが悪い、睡眠が浅い)
・食欲不振
・不安感
・気分の落ち込み
・やる気が出ない
こうした不調は夏バテとも症状が似ているため、気づかずがまんしてしまうことも。特に理由もないのに、落ち込んだり不安感があったり……。そんな状態が長く続く場合は“夏季うつ”と考えて、疲れた心身をケアしてあげましょう。

「心」のダメージが夏の精神不調を招く

中医学では、“夏季うつ”の症状は五臓の「心」の不調から起こると考えます。心の主な働きは、「血」を全身に巡らせること。また、精神活動とも深く関わり、心の「気(エネルギー)」「血」が充実していれば、精神も安定した状態が保たれます。
こうした心の働きがダメージを受けやすいのが、夏の時期。中医学では“汗は心の液”と言われ、汗をかき過ぎると心に影響すると考えます。これは、多量の発汗で体内の水分が不足すると、ドロドロ血を招き心に負担がかかるため。また、汗をかくと気・血も消耗するため、心に供給される気・血も不足しがちになります。その結果、精神を安定させる働きが弱くなり、不眠、不安感、落ち込みやすいといったメンタル不調が起こりやすくなるのです。
暑い夏は、自然とたくさんの汗をかいているもの。疲れも溜まりがちなので、日々のケアで心身を元気に保つよう心がけましょう。

体の中から夏のメンタルケア

この時期のケアは、まず「心」の働きを守ことが基本。また、「気」の巡りが悪いとイライラやストレスを感じやすいため、気をスムーズに巡らせることも意識しましょう
【夏の食養生】
心を養う
汗で消耗しがちな気・血を養い、心の働きを整えます。
●補気の食材
長芋、じゃがいも、枝豆、そらまめ、いんげん豆、大豆製品(豆腐、納豆など)、にんじん、キャベツ、オクラ、きのこ類、牛肉、豚肉、うなぎ、はも、かつお、鮭 など
●補血の食材
レバー、ほうれん草、モロヘイヤ、トマト、金針菜(きんしんさい)、ひじき、卵、牡蠣、ゆり根、プルーン、ブルーベリー、ぶどう、桃、いちご、棗(なつめ)、枸杞の実、黒豆、黒ごま、黒砂糖、 など
〜おすすめメニュー〜
・長芋とおくらの梅和え(ゆでた豚肉を加えるのもおすすめ)
★熱中症予防にも効果あり
・金針菜、きゅうり、にんじんのサラダ
★金針菜は「忘憂草(ぼうゆうそう)」とも呼ばれ、精神安定の代表食材
・ゆり根(乾燥ゆり根)と枸杞の実入り茶碗蒸し
★ゆり根は心の熱を冷まし、精神を安定させます。
・五味子茶
★五味子は汗を抑え、心を養う生薬。水に五味子を入れて1日ほど置けば完成です。
気を巡らせる
体内の気を巡らせて、自律神経を整えます。
●理気の食材
春菊、セロリ、香菜、パセリ、ピーマン、苦瓜、いか、たこ、あさり、オレンジ、グレープフルーツ、ミント、バラ、ジャスミン、ラベンダー、カモミール など
〜おすすめメニュー〜
・セロリといかの炒めもの
★セロリの代わりに苦瓜もおすすめ
・ミント入りグレープフルーツゼリー
★ミントの香りで気持ちをリフレッシュ

日々の養生で夏を健やかに

【暮らしの養生】
・生活リズムを整えて。夏は早起きを心がけ、朝食もしっかり取りましょう。
・ヨガや深呼吸を習慣にして、自律神経のバランスを整えましょう。
・アロマオイルなど、香りを上手に取り入れて気持ちを穏やかに。
・適度な運動を心がけましょう。体をしっかり動かすことで睡眠の質も良くなります。
・眠れない時は14時以降のカフェインを控えて。飲みものはハーブティーがおすすめです。
・ココロの不調を感じた時は、一人で悩まず親しい人に話をしてみて。
 必要を感じたら、迷わず医療機関や専門家に相談することが大切です。
【ツボ押しケア】
・眠れずイライラする時は……深呼吸しながら「神門」のツボをマッサージ
・動悸がする時は……「内関」のツボをマッサージ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。