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毎日チェック!「舌」は健康のバロメーター

2022.05.17 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

自分の体質を知ることは、健康管理の第一歩。そのためにぜひ取り入れてほしいのが舌のチェック(舌診)です。舌の状態を見れば、気づいていない体内の不調がわかることも。鏡で見るだけの手軽な方法なので、朝晩の歯磨き後など、毎日の習慣にしてみてください。

「舌」は体質や内臓を映す鏡

中医学の診察は、患者の状態をしっかり観察し、訴えを聞く四診(望診(見る)、聞診(声や匂いを観察する)、問診(聞く)、切診(触れる))が基本。中でも舌の状態を見る「舌診(望診の一つ)」は、体内の状況を知る上でとても重要な診察とされています
これは、舌が体質や内臓の状態を映し出す“鏡”のような器官だから。舌には臓器とつながる経絡(気・血の通り道)が数多く巡り、その表面は粘膜に覆われています。そのため、体内の臓器や「気(エネルギー)」「血」「津液(水分)」の状態が反映されやすく、不調があれば舌の状態にも現れるようになるのです。
舌を見るポイントは、色、大きさ、舌苔など。以下に舌の状態と体質の関係を紹介するので、鏡で舌を確認し、自分の体質をチェックしてみましょう。毎日見ることで変化にも気づきやすいので、習慣にするのがおすすめです。
注)コーヒーやチョコレートなどの飲食物の着色が舌の色に影響するので、観察する前の飲食は避けましょう。

舌と臓腑の関係

体質は変えられるもの

体質の基本には、親から受け継ぐ遺伝的要因があります。そこに生活習慣や環境などの後天的要因が加わり、現在の体質がつくられています。
食事、睡眠、ストレスといった後天的要因は体質に大きく影響しますが、自分でコントロールすることもできるもの。生活を整えることで体質は改善していけるので、積極的な養生を心がけ、後天的要因を体にプラスになるよう変えていきましょう。

「舌」の状態から体質をチェック

舌は体の状態を映す“健康のバロメーター”。舌に変化があれば体質のバランスが崩れているサインと捉え、早めの改善を心がけて。
【 虚証タイプ(足りない体質) 】
●気虚体質
身体の根本的なエネルギーとなる「気」が不足しているタイプ。エネルギー不足で舌を養うことができず、筋肉の張りも弱いため、色が淡く歯の跡が付きやすくなります。
[主な症状]
疲労・倦怠感、息切れ、声が弱々しい、かぜを引きやすい、汗が出やすい、冷え、食欲不振、軟便または下痢、頻尿、夜間尿
●陽虚体質
体内の活動を支える「陽気(体を温めるエネルギー)」が不足しているタイプ。エネルギー不足で舌を十分養えず、水分代謝も悪化して、色の淡いむくんだ舌になります。
[主な症状]
「気虚体質」+ 強い冷え、しもやけ、レイノー現象、強いむくみ、女性は不妊症・男性はインポテンツになりやすい
●血虚体質
身体に栄養や潤いを与える「血」が不足しているタイプ。血不足で舌に十分な栄養が行き届かず、色の淡い小さな舌になります。
[主な症状]
めまい、立ちくらみ、動悸、かすみ目、疲れ目、ドライアイ、手足のしびれ、肌や髪の乾燥、爪が割れやすい、抜け毛、白髪、月経量が少ない
●陰虚体質
身体に潤いを与える「津液(水分)」が不足しているタイプ。潤い不足で舌に亀裂ができ、舌苔も少ない状態に。また、水分不足で熱をうまく冷ませず、赤みの強い舌になります。
[主な症状]
痩せ型、微熱が出やすい、ほてり・のぼせ、耳鳴り、ドライアイ、口の乾燥、空咳、皮膚の乾燥感、便秘気味、寝汗が多い
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虚証タイプの舌
【 実証タイプ(過剰な体質) 】
●気滞体質
「気(エネルギー)」の巡りが悪くなっているタイプ。エネルギーが停滞して過剰な熱がこもり、舌の赤みが強くなります。気の巡りは「肝」と関わるため、特に肝の経絡が集まる舌の側面に症状が現れやすくなります。
[主な症状]
イライラ、憂うつ、不安感、不眠、のどの詰まり、片頭痛、肩の張り、乳房や脇の張り、胃や腹部が張りガスやゲップが出やすい、口の中の苦み、PMS(月経前症候群)の症状が重い
●瘀血体質
血の巡りが悪く「瘀血(血行不良)」を起こしているタイプ。血行が悪いため舌の色が暗く、シミのような瘀点・瘀斑が見られ、舌裏の静脈が太く見えるようになります。
[主な症状]
顔や唇の色が暗い、シミが多い、慢性的な肩こり、頑固な頭痛や関節痛、動悸、胸苦しい、手足の冷え、冷えのぼせ、便が黒い、月経痛、月経血の色が暗く血塊が多い。
●痰湿体質
水分代謝が悪く、体内に「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まっているタイプ。過剰な水分の影響で舌がむくみ、厚くベタベタとした舌苔がつくようになります。
[主な症状]
太り気味、オイリー肌、にきびや吹出物ができやすい、頭重、体が重だるい、めまい、吐き気、むくみ、痰が多い、軟便や下痢
●湿熱体質
体内に「痰湿(余分な水分や汚れ)」が溜まり、余分な「熱」がこもっているタイプ。過剰な水分と熱の影響で、舌の赤み、むくみ、黄色の舌苔のベタつきなどの症状が現れます。
[主な症状]
「痰湿体質」の症状 + 肌の赤みが強く脂っぽい、にきびや吹き出物が多く化膿しやすい、体臭や口臭が強い、排泄物(便、尿、痰、おりもの等の色が濃く臭いが強い)
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実証タイプの舌

生活習慣を改善して体質バランスを整える!

体質を整える基本は、不調を招く生活習慣を改善すること。食事、睡眠、運動に気を配り、ストレスを溜めない生活を心がけましょう
<暮らしの養生>
1.日々の食事は体づくりの基本。栄養をバランスよく取って。
[食材のポイント]
虚証の人は:気血を養う食材を。いも類、卵、肉類、レバー、ほうれん草、黒ごま など
実証の人は:排泄、巡りを促す食材を。香りの強い野菜、緑豆、はと麦、根菜、海藻、青魚 など
2.朝早く起きる、日中は活動する、夜は十分眠る。正しい生活リズムを保ち、体のバランスを整えましょう。
3.ウオーキング、ヨガなどで体を動かす習慣を。適度な運動は気血を巡らせ、ストレス発散にもつながります。
4.日頃のストレスは上手に発散し、気持ちをリラックスさせましょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。