「扶正袪邪」で免疫力アップ! 〜花粉やウイルスに負けない体に〜 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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「扶正袪邪」で免疫力アップ!
〜花粉やウイルスに負けない体に〜

2022.03.15 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

新型コロナウイルスの影響が続く中、そろそろ花粉症も気になる季節。くしゃみや鼻水などのつらい症状に、せっかくの春を憂うつな気分で過ごす人も多いのではないでしょうか。花粉症は治らないと思われがちですが、しっかり体を整えれば不調を軽くすることも期待できます。毎年のことなので、諦めずにケアをして花粉やウイルスに負けない体質をつくりましょう。

中医学では、花粉症やウイルス感染症の要因は同じ

花粉症は、アレンゲンとなる花粉が体に入り込んで起こる症状。また、新型コロナウイルス感染症やかぜ、インフルエンザなども、外からウイルスが侵入することで発症する病気です。
西洋医学で捉えると、これらはまったく異なるメカニズムで発症するもの。治療もそれぞれに応じた薬などで対処します。一方、中医学では、病気の原因となる外界の物質(花粉やウイルスなど)はすべて「邪気」と捉えます。花粉症も新型コロナウイルス感染症も、“邪気の侵入”によって引き起こされる不調。そのため、根本的な予防や対処の方法も共通していて、その基本となるのが「扶正袪邪」という考え方です。

「扶正袪邪」ってなに?

「扶正」は、“体を守る正気を強くする(=免疫力アップ)”ということ。「正気」は生命や健康を維持する体のエネルギーで、病気に対する抵抗力となります。そのため、正気が充実していれば邪気の影響を受けにくく、不調が現れても軽い症状で済むように。反対に、正気が弱いと邪気の侵入を受けやすく、症状も重くなってしまうのです。
一方、「袪邪」は不調が現れた時の対処法。文字通り、体に侵入した邪気を取り除くことで不調を改善していきます。
このように、花粉症やウイルス感染症などを予防・改善するためには、まず正気を充実させて免疫力を強くすることがポイント。また、症状が現れた時は早めに邪気を取り除き、症状の悪化や長期化を防ぐことが大切です

体のバリアとなる「衛気」にも注目

体内の「気(エネルギー)」には、元気、宗気(呼吸に関わる気)、営気(血の生成に関わる気)などさまざまな種類があります。その中で、主に病気から体を守る働きを担っているのが「衛気」です。衛気は体の表面に張り巡らされた気で、邪気の侵入を防ぐバリアのような存在。そのため、花粉症やウイルス感染症などの予防には衛気の充実は欠かせないポイントとなります。ちなみに「正気」は体全体が持つ総合的なエネルギーというイメージ。正気も衛気も、体内の臓器が健やかに働き、気血がしっかり養われることで充実するため、日頃の養生を心がけることが大切です。

「扶正袪邪」の養生で、免疫力アップ&不調の改善を

正気や衛気は、体内の「気」「血」「精(生命エネルギーの源)」を元に生み出されます。気や血は「脾胃」が消化吸収する栄養、「肺」が取り込む清気によって養われ、精は「腎」によって蓄えられるもの。そのため、脾胃・肺・腎の働きを整え、日々の食事でしっかり栄養を取ることが正気や衛気を充実させるカギとなります。
【扶正におすすめ食材】
脾胃・肺・腎の働きを整え、気血を養う食材を。
いも類:山芋、さつまいも、じゃがいも など
緑黄色野菜:かぼちゃ、ピーマン、にんじん、アスパラガス など
きのこ類:しいたけ、舞茸、えのき、しめじ など
豆類:大豆、いんげん、黒豆 など
その他、卵、鶏肉、豚肉、牛肉 など
〈おすすめの料理〉
・鶏肉と長芋、舞茸、にんじん、玉ねぎのスープ
適量の水に材料を入れてよく煮込み、塩と胡椒で味を整えて。
体のバリア機能を高める生薬「黄耆(20g程度をガーゼなどに包んで)」を入れると、効果アップが期待できます。
・牛肉とピーマン、にんじんの青椒肉絲
にんじんを定番の青椒肉絲にプラス。牛肉は気を養う効果が高く、ピーマンやにんじん(緑黄野菜)には皮膚や粘膜のバリア機能を高める作用があります。
【袪邪におすすめの食材】
体内の邪気(花粉やウイルスなど)を追い払います。
しょうが、ねぎ、玉ねぎ、みょうが、しそ、きゅうり、トマト、ごぼう、大根、豆腐、海藻類、シナモン、胡椒、八角、葛、板藍根、菊花、おおばこ茶、どくだみ茶、甜茶 など
〈おすすめのお茶〉
・板藍根茶:抗ウイルス作用、清熱解毒作用などが期待できる板藍根をお茶に。
・しょうが入り葛湯:鼻水や冷えなどの不調に。
・菊花入りおおばこ茶:目のかゆみや充血に。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。