冷たい手足をなんとかしたい! 冬の「末端冷え症」対策 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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冷たい手足をなんとかしたい!
冬の「末端冷え症」対策

2022.01.18 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

手足が冷えて眠れない、揉んでも温めてもすぐ冷たくなる……。冬になると、そんな末端の冷えに悩まされる人は多いもの。冷え症自体は病気ではありませんが、放っておくとさまざまな不調を招く要因となります。体の中から“温活”をする中医学の養生で、冬でもぽかぽか体質をめざしましょう

 

冬の手足が冷えやすいワケ

冬は気温が下がるため、手足の表面がある程度冷えるのは普通のこと。一方、温めてもすぐ冷たくなる、慢性的に手足が冷たい、足先が冷えて寝つきが悪い、といった感覚がある場合は「末端冷え症」と考えられます。
人の体は、寒さを感じるとまず内臓を温めようと体の中心に血液を集めます。そのため末端まで血液が行き渡りにくく、手足の冷えを感じやすくなるのです。こうした状態に寒さによる血行不良が重なると、慢性的な手足の強い冷えを招くようになります。
末端の冷えは、症状が重くなるとレイノー現象(指先のしびれ、痛み、蒼白)やしもやけなどにつながることも。冷えを悪化させないためにも、こまめなケアを心がけましょう。

「血」と「陽気」の不調が冷えを招く

中医学では、手足の冷えは「血」や「陽気(体を温めるエネルギー)」の状態と深く関わっていると考えます。冬の末端冷え症は、次の3つが主な要因に。

 

【1】寒さによる血行不良

寒さには“収縮させ、流れを滞らせる(収引・凝滞)”という性質があるため、冬は血管が収縮して血流が滞りがちになります。そのため、末端まで血が十分巡らず、手足の冷えが起こりやすくなります。

 

【2】陽気の不足

“体の中の太陽”とも言われる「陽気」は、体を温め、血流を促すエネルギー源。そのため、寒さのダメージで陽気が不足すると、体を温める力が足りず、血流も滞り、手足まで冷えるようになります。

 

【3】血の不足

体を温める「陽気」は、「血」の流れに乗って体のすみずみまで届けられます。そのため、体内の血が不足して血流が悪くなると、手足まで血や陽気が十分に行き届かず、冷えが起こりやすくなります。

 

体の冷えは、中医学で考える「未病(病気になる一歩手前)」の状態。そのままにしていると、頭痛や肩こり、生理痛、便秘といったさまざまな不調を引き起こす要因となります。免疫力が落ちてかぜを引きやすくなることもあるので、積極的に体質を改善することが大切です。

“ぽかぽか体質”をつくる冬の食養生

末端冷え症の人は、体を温める「陽気」と「血」が不足しがち。日々の食養生で陽気と血をしっかり養い、寒さに負けない体づくりをめざしましょう。

 

【養生の基本】

陽気と血を養う(補陽養血)。

冷えを取り除き、体を温める(温経散寒)。

 

【食養生】

気・血を養い、体を温める食材を積極的に。

体を温める:ねぎ、玉ねぎ、しょうが、にんにく、唐辛子、シナモン、八角、小茴香 など

気を養う:長いも、さつまいも、じゃがいも、かぼちゃ、にら、にんじん、牛肉 など

血を養う:レバー、小松菜、ほうれん草、棗、クコの実、かつお、さんま、羊肉 など

☆冷たい飲食物は避けるのが基本。サラダも温野菜にして。

 

おすすめ料理

・羊肉のしゃぶしゃぶやジンギスカン

・香味野菜たっぷりの鍋料理、つみれ入りのおでん

・シナモン入りの紅茶

 

冬の薬膳酒レシピ

ホワイトリカー(1~1.8L)に棗、クコの実(各100g)、氷砂糖(200g)を入れて3カ月程度漬ける

 

●ワンポイント

冬におすすめの薬膳酒なので、今年間に合わなければ来年チャレンジを。ただし、夏も冷房などで冷えがちな人は通年飲んでもOKです。

 

薬膳酒

暮らしの養生で冷えないカラダづくり

日々の生活にも体を温めるポイントはいろいろ。意識して取り入れることで、冷えの予防・改善をめざしましょう。
【1】服装は保温第一!
・薄着、ミニスカートなど体が冷える服装は避けて。
・外出時はマフラーや手袋でしっかり防寒を。
・室内だからと裸足でいるのはNG。特にフローリングは冷えやすく、陽気の消耗につながります。
【2】入浴で体を温める
・入浴は就寝前(体が冷めない時間)に。手足も温まって入眠しやすくなります。
・入浴剤は温熱効果のあるものを選んで。
・お風呂上がりの水分補給は、しょうが湯、ホットミルクなど体が温まるものを。しょうがの辛みが苦手な人は、はちみつや氷砂糖をプラスするのもおすすめです。
【3】体を動かして「陽気」をアップ
適度な運動は「陽気」を養うことにつながります。反対に体を動かさないと陽気が衰えていくので、ウオーキング、ヨガなど、毎日続けられる運動を取り入れてみて。
体内の陽気は加齢とともに自然と減っていくもの。冷え予防はもちろん、元気に年齢を重ねるためにも、陽気を養い、大切に守ることを意識しましょう。
【4】手足を温めるツボ
どちらも押しやすい場所なので、気づいた時にマッサージを。冷え予防にはお灸もおすすめです。
足の冷えに
・足三里(あしさんり):膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下
手の冷えに
・合谷(ごうこく):手の甲、人差し指の骨のキワ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。