中医学で考える秋を上手に過ごすための心の持ち方 - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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中医学で考える
秋を上手に過ごすための心の持ち方

2020.10.20 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

「スポーツの秋」「文化の秋」と言いたいところですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、今までのような賑やかなスポーツ観戦や演劇鑑賞ができないのが今年の秋。終息が見えず、経済面も安定しない社会状況から、息切れ・憂鬱・不安・気持ちが落ち込みやすい人が増えています。

中医学で、秋は肺とつながりの強い季節とされています。寂しさや悲しさを感じる時期でもあるので、肺の養生をしながら心のケアもしていきましょうね。

秋は肺の季節。悲・憂との関係

宇宙や自然界など、ものごとを構成する全てのものは「木(もく)・火(か)・土(ど)・金(こん)・水(すい)」のいずれかの特性を持つとする『五行学説』では、季節は「臓腑」や「情緒」と関係していると考えます。

秋は臓腑の「肺」、情緒の「悲・憂」と密接な関係にあるとされています。肺は、気・呼吸・昇発粛降(しょうはつしゅくこう)を主る臓腑で潤う環境を好むので、乾燥しやすい秋の季節は肺の呼吸機能を傷つけやすいです。

天高く馬肥ゆる秋は、呼吸機能を高めるには最適な運動の季節。しかし、新型コロナウイルス感染症防止のため、多くの運動が制限されている状況です。また、外出時には常にマスクをしなければならないので、通年に比べて肺機能を鍛える時間が少なくなり、息切れや呼吸が苦しい、空咳などの症状が多くあらわれてしまいます。

落ち込むと肺の機能が消耗しやすい?

中医学では「形神合一」(心身一如)という言葉があり、形は肉体面、神は精神的な面を指し、肉体と精神は互いに影響し合うと考えます。秋分を過ぎると、日照時間がだんだん短くなり、木の葉が枯れて落ちます。その晩秋の情景につられて、寂しさや悲しさを感じる人も多いですよね。

また、「悲則気消」といわれるように、気持ちが悲しく落ち込むと、肺気を消耗して肺機能が弱くなります。とくに大人数でのイベントや旅行など娯楽の制限などにより、コロナ鬱、悲観的に落ち込みやすい人も増えました。

このような状況下では、息切れ・呼吸が苦しい・空咳のほかに、胸が苦しい・倦怠無力・やる気が出ない・悲しくて涙がとまらないなどの症状が出ることも少なくありません。

秋を元気に過ごすためのWithコロナ養生法

(1)早寝早起きを心がける
秋は日照時間が短くなり、昼間は短く、夜は長くなります。そのため、秋の肺養生では、早寝早起きにより十分に休息を摂り、夏の疲れを取り払い、肺気・肺陰を養い、気持ちを平穏にさせることが大切です。
夜遅くまでの仕事やゲームなどの遊びをやめ、23時頃までには寝るように心がけて朝早く起床するのがおすすめ。寝つきが悪く、中途覚醒(夜中に目が覚めてしまう)になりやすい人は、寝る前に部屋にラベンダーやカモミールの精油を焚いてリラックスする、昼間に適度な運動をする、午後からの飲み物はノンカフェインのカモミールティーなどにして、カフェインの入った飲み物を控えると良いでしょう。
(2)体を動かして気分を上げる
中国最古の医学書の『黄帝内経(こうていだいけい)』には「動則生陽、静則生陰」という言葉があり、憂鬱や不安、悲しい時はアクティブに身体を動かせば、陽気を生じさせ、気分を晴らすことができると記されています。
近年の研究においても、汗をかくような運動をすると、脳内に「楽しい」「気持ちいい」というドーパミン神経伝達物質が出てきて、不安感が緩和され、気持ちが前向きになる作用が報告されています。
厚生労働省が提唱している新しい生活様式でも、明け方や夜など人の少ない時間、公園など人との距離をとれる場所を選び、歩くことやジョギングすることをすすめています。外出できない場合は、自宅でヨガ、ストレッチ、筋トレも良いですね。運動中は、積極的に水やミネラルを補給するようにしましょう。
(3)甘味や酸味の食材で肺気、肺陰を養う
肺は潤いを好む臓腑です。運動で肺の陽気を生じると同時に、食事で肺の陰液を積極的に補うようにしましょう。収穫の秋に旬の食材や果物、とくに甘味・酸味のものを取ると、肺気・肺陰を補う効果が高まります。
【おすすめの食材】
蓮根、茄子、銀杏、さんま、あじ、いわし、牡蠣、大根、豆乳、牛乳、ヨーグルト、蜂蜜、白きくらげ、菊花、梨、マスカット、ぶどう、みかん、びわ、メロン、金柑、杏、かりん など
【症状別のおすすめレシピ】
●乾燥肌:白きくらげとクコの実のスープ、杏仁豆腐(杏・クコの実など)
●呼吸が苦しい、から咳がでる:梨、びわ、銀杏
●気持ちが落ち込む、憂鬱:陳皮と菊花入りのお茶
体力がない人はまずは食事から整えると良いでしょう。また、適度な運動量は人によっても違い、腹筋やダンス、ヨガなど好みのスポーツもさまざま。自分のペースで好きな運動を行い、心地良く感じる感覚で行いましょうね。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。