よくわかる中医学vol.20-「陰陽」バランスを整えて健康を保つ方法- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

STUDY中医学の基礎

よくわかる中医学vol.20
-「陰陽」バランスを整えて健康を保つ方法-

2019.04.16 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.20

前回の記事「よくわかる中医学vol.19-すべてのものに宿る「陰陽」-」で、陰陽学説の基礎についてご紹介しました。今回は前回の内容を踏まえて、中医学で応用した体を養う方法をみていきます。

健康とは、体の中の陰陽のバランスが保たれていること

私たちの体は、体の中に備わっている物質的な陰(例えば血や津液)と、機能的な陽(例えば気)のバランスを保つことで健康を維持しています。

下の図を参考に、陰陽のバランスによる症状と対策を見ていきましょう。

中央のグラフが「陰陽平衡(いんようへいこう)」と言われる、陰陽のバランスがとれていて体が健康な状態です。図では陰と陽がぴったり等しくなっていますが、陰陽は常に変動していて、変動が正常の範囲内であれば健康であると言えます。

その他4つのグラフは陰陽のバランスが崩れてしまっている状態です。陰または陽が正常範囲よりも高まることによる症状を「実証(じつしょう)」、反対に陰または陽が正常範囲よりも不足していることによる症状を「虚証(きょしょう)」と言います。

(1)陽が正常範囲よりも高まっている「陽盛(ようせい)」タイプ

図の(1)が「陽盛」タイプです。正常範囲よりも陽(熱)が高まっているので「実熱証」がみられます。
陽盛になる原因としては、食べ過ぎ、飲み過ぎ、熱中症などによって、体の中に余分な熱がこもっていることが挙げられます。
【このタイプに多い傾向】
□顔が赤い
□皮膚のできものが赤く腫れて化膿しやすい
□口が渇きやすい
□濃い色の尿が出て、量は少ない
□辛いものや甘いものを好んで食べたり飲んだりする
□舌の色が紅く、舌苔が黄色い
【おすすめの対策】
余分な陽を取り除くことが基本となります。過剰な熱を取り除き熱を冷ます作用のある苦瓜、きゅうり、スイカなどがおすすめ。

(2)陰が正常範囲よりも高まっている「陰盛(いんせい)」タイプ

図の(2)が「陰盛」タイプです。正常範囲よりも陰(寒)が高まっているので「実寒証」がみられます。
陰盛になる原因としては、冷たいものの飲み過ぎ、食べ過ぎ、気温やエアコンによる体の冷えなどによって、体の中から冷えてしまっていることが挙げられます。
【このタイプに多い傾向】
□しもやけができやすい
□寒がり、冷え性
□尿や鼻水が薄く透明で量が多い
□強張り、痛みが表れやすく、温かくなると楽になる
□冷たいものを好んで食べたり飲んだりする
□舌の色と舌苔が白い
【おすすめの対策】
余分な陰を取り除くことが基本となります。発汗によって余分な陰寒を取り除いて体を温める作用のあるしょうが、ねぎ、フェンネル、八角などがおすすめ。

(3)陰が正常範囲よりも不足している「陰虚(いんきょ)」タイプ

図の(3)が「陰虚」タイプです。正常範囲よりも陰(寒)が不足しているので「虚熱証」がみられます。
陰虚になる原因としては、過労、徹夜、寝不足、辛いものの食べ過ぎ、水分不足、乾燥などによって、体を潤し冷ます力が不足してしまっていることが挙げられます。陰が正常よりも低く、相対的に陽が高くなるため、「虚熱」という熱を発するのが特徴です。
【このタイプに多い傾向】
□のぼせ、ほてり
□夕方から微熱が出やすい
□寝汗をかく
□便がコロコロしていて便秘ぎみ
□目・のどが乾きやすく、肌がカサカサしている
□舌が紅く裂け目があり、舌苔が少ない、またはない【おすすめの対策】
(1)の陽盛タイプと似た症状が見られますが、症状が起こる原因が異なるため対策も異なります。

不足している陰を補うことが基本となります。このタイプに最もおすすめな食材の一つは「すっぽん」です。不足してしまった陰を補い、さらに熱を冷ます性質を持ちます。そのほか、陰を補う鴨肉、クコの実、黒ごま、黒豆、白キクラゲなどがおすすめです。ごはんのふりかけとして黒ごまを使うなど、普段の食卓に簡単に摂り入れることができます。
また、ほてりが強い場合には、熱を冷ます作用を持つきゅうりなどをプラスして食卓に取り入れましょう。

(4)陽が正常範囲よりも不足している「陽虚(ようきょ)」タイプ

図の(4)が「陽虚」タイプです。正常範囲よりも陽(熱)が不足しているので「虚寒証」がみられます。

陽虚になる原因としては、過労、運動不足、性生活の乱れなどによって、体を温める力が不足してしまっていることが挙げられます。日常的に冷たいものを飲み続ける、食べ続けることも陽虚の原因の一つです。

【このタイプに多い傾向】

□冷え性
□顔色が青白い
□むくみやすい
□頻尿、夜間尿、軟便、下痢
□月経周期が遅くなり、月経痛・不妊症になりやすい
□舌が白くむくんでいて、歯形がつく
【おすすめの対策】
(2)の陰盛タイプと似た症状が見られますが、症状が起こる原因が異なるため対策も異なります。
不足している陽を補うことが基本となります。補って体を内側から温める作用のある羊肉、鶏肉、山芋などがおすすめ。冷えがあるので、陰寒を取り除くしょうが、ねぎ、フェンネル、八角などを摂るのもいいでしょう。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。