よくわかる中医学vol.16-気象・環境による病の原因「六淫」から体を守る- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

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よくわかる中医学vol.16
-気象・環境による病の原因「六淫」から体を守る-

2018.12.18 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.16

よくわかる中医学シリーズ、今回のテーマは気象や環境がもたらす病気の原因「六淫(ろくいん)」です。

私たちはどのようにして健康を保っているのでしょうか。中医学では「正気(せいき)」と「邪気(じゃき)」の力関係のバランスによって健康を保っていると考えます。正気は体が備えている抵抗力のこと。邪気は病を起こす原因のことです。

私たちの体がこの邪気にさらされると、正気と邪気が激しく戦います。この戦いの結果、正気が邪気に打ち勝つことができれば健康を保つことができます。一方で邪気が正気よりも強かったり、正気が弱々しくなっていたりして邪気に負けてしまうと病に陥ってしまうのです。
そこで今回は、暑い、寒いなどの自然界の気象現象、環境による邪気「六淫」についてご紹介します。

気象現象と症状が関連する「六淫」の特徴

中医学では自然界で起こる気象現象を「六気(ろっき)」といい、「風」、「寒」、「暑」、「湿」、「燥」、「火」(熱)の6つに分類します。本来正常であれば人体に無害なものです。しかし、たとえば暑すぎる、寒すぎるといった異常気象などで、これらの六気の異常が病気の原因となる場合を「六淫」といいます。「六淫」はそれぞれ「風邪(ふうじゃ)」、「寒邪(かんじゃ)」、「暑邪(しょじゃ)」、「湿邪(しつじゃ)」、「燥邪(そうじゃ)」、「火邪(かじゃ)」と呼びます。

【六淫の特徴】
「風邪」:体のあちこちに出る痛み・かゆみ、めまい、痙攣などが出やすい、他の邪気と絡み合って発症する場合が多い
「寒邪」:冷えや痛みの症状などが出やすい
「暑邪」:発熱や倦怠感などが出やすい、湿邪と絡み合って発症する場合が多い
「湿邪」:重だるい、むくみ、軟便、吐き気などが出やすく慢性化しやすい
「燥邪」:乾燥、から咳などが出やすい
「火邪」:汗のかきすぎ、発熱、皮膚の赤い腫れ、出血などが出やすい

季節性がある「六淫」、取り巻く環境によって変化も

六淫によって起こる病気は、季節性があるのが特徴です。
春は風邪による「風病(ふうびょう)」、夏は暑邪による「暑病(しょびょう)」、秋は燥邪による「燥病(そうびょう)」、冬は寒邪による「寒病(かんびょう)」が多くなります。このように季節によって起こりやすい病気が異なります。
一方で、冬は暖房によって乾燥に悩まされたり、夏は冷房によって冷えすぎていたりして具合が悪くなることがありますよね。普段の暮らしの中でよく感じる不調だと思いますが、実はこれらも六淫によって引き起こされています。
近年冷暖房などの普及によって、私たちを取り巻く環境が変化してきました。夏なのに冷房による冷やしすぎにより、冬に多くみられる冷えにかかる、といったように、この人工的な環境の変化が影響して、季節性を外れた病にかかってしまうことも起こるようになってきています。

六淫を踏まえて冬の「寒邪」対策

冬は「寒邪」の季節。寒邪による病は冬に多く見られますが、先ほども述べたように夏でも発症することがあります。外気による冷えで体を温める力を奪われないようにしましょう
【寒邪による症状】
□冷え
□手足が冷たい
□しもやけがある
□腹痛
□下痢
□顔色が白い
□肩などが凝り痛みがある
□筋肉がひきつる
【養生ポイント】
寒邪を遠ざけるポイントは体を冷やすものを避けること。年末年始には忘年会や新年会でお酒を飲む場面が多いですが、冷たいビールやハイボールははじめの一杯だけにして、あとは常温のワイン、熱燗やお湯割りなどに切り替えるのが理想です。お風呂上がりのアイスクリームなど、冷たいものを食べる習慣がある方は控えるようにしましょう。
【摂り入れたい食材】
鍋物などの温かい食事を心がけましょう。シナモンやしょうがを加えたホットドリンクもおすすめです。
体を温める性質が強い食材:山椒の実、ニラ、えび、ねぎ、しょうが、羊肉 など
※体を温める作用が強い肉は順番に羊肉、牛肉、鶏肉です。

【COCOKARA中医学おすすめレシピ】
冷えない体をつくる「羊肉の辛味炒め」

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年間を通してみられる「風邪(ふうじゃ)」対策

風邪による病は季節を問わずみられます。自然界に吹く風が隙間から吹き込んでくるように、風邪も私たちの体に邪気を招き入れる「隙間」があるとあっという間に体の中に侵入して病を引き起こします。
【風邪による症状】
□かぜにかかりやすい
□痛みやかゆみが体のあちこちに出る
□めまい
□頭痛
□痙攣
□上半身に出やすい
【養生ポイント】
風邪はほかの邪気を伴って体に入ってくる性質があります。そのためその季節に多く見られる六淫を遠ざけることも大切です。また、六淫は皮膚(肌)から侵入します。抵抗力が下がっていると感じるときは特に、衣類で覆うなど肌を露出しすぎないようにしましょう。

【摂り入れたい食材】

抵抗力を向上させる旬の食材を一品でも食卓に加えましょう。旬の野菜やくだものには、その時季を元気に過ごすための栄養がバランスよく含まれています。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。