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「世界中医薬学会連合会」事務局長が語る、中医学の普及と発展

STUDY中医学の基礎

「世界中医薬学会連合会」事務局長が語る、
中医学の普及と発展

2016.08.16 UPDATE

「世界中医薬学会連合会」事務局長、李振吉さんインタビュー

中医学発祥の地、中国の首都北京に事務局を置く「世界中医薬学会連合会」は世界中の多くの中医学学術団体が加盟している組織であり、中医学の普及と国際標準化を推進しています。

 

中医学の情報を専門に発信するポータルサイト「COCOKARA中医学」は、今年5月25日から運営を開始しました。

今回、中医学を普及するにあたり、世界中医薬学会連合会の本部を訪問し、事務局長の李振吉(り しんきち)さんに当サイトを紹介し、中医学の普及について今後の展望などをうかがいました。

中医学を熱く語る「世界中医薬学会連合会」事務局長、李振吉さん

世界67ヶ国に20万人を擁する学術組織

──まずおうかがいしますが「世界中医薬学会連合会」の名称にある「中医薬」とは、何を指しているのでしょうか。

 

李さん 中国で中医薬とは、中医学と中薬(生薬および製剤)の両方をさします。中国の伝統医学である中医学とそれに用いる薬のことです。

 

──私たちは、中医学を普及するために中医学の専用Webサイト「COCOKARA中医学」を立ち上げ、運営を開始しました。いまや中医学は、世界各地に広がりをみせていますが、「世界中医薬学会連合会」は中医学の普及においてどのような役割りをされているのでしょうか。

 

李さん 「世界中医薬学会連合会」は、2003年に設立された国際的に活動を行っている民間の組織です。事務局はここ北京にありますが、中国以外の世界各地に会員20万人以上を有し、現在、日本を含め67の国と地域から251団体が加盟しています。加盟しているのは、中医薬の学術活動を行っている団体が中心となっています。

 

また、中医学普及のため、各国および「世界保健機関」(WHO)や他の国際組織等とも正式な連携関係を結んでおり、100以上の専門委員会が活動しています。

 

「世界中医薬学会連合会」は学術組織として国際的な活動をしており、研究や交流、人材育成、教育認定や雑誌・書籍出版などをおもに行っています。また、世界各地で年間100回以上、学会やシンポジウムを開催しています。週末は、さまざまな勉強会が開かれており、その内容も中医学の基礎、臨床、中薬(生薬および製剤)、鍼灸、推拿按摩(すいなあんま)、生薬の栽培、生薬の管理など幅広いものとなっています。

 

最大の交流の場としては「世界中医薬大会」があり、これまでに中国、北京を皮切りにパリ、トロント、シンガポール、マカオ、メルボルン、デン・ハーグ、ロンドン、東マレーシア、カリフォルニア、サンクトペテルブルク、バルセロナといった都市で12回開催されました。今年11月にはニュージーランドのオークランド、来年はハンガリーで開催を予定しています。毎回1,000人以上の参加者が集い活発に交流しています。

 

この他にも地域レベルでの大会がタイ、ドイツ、南アフリカ、イギリスなどで開催されました。また、専門委員会レベルでの各学科、研究項目、研究課題についても交流を深めています。

中医薬の国際標準化のため、中医学の基本用語は7~8種の言語に翻訳されています

基準の国際標準化と、質を重視した普及活動

──「世界中医薬学会連合会」が推進している、中医薬の国際標準化についてお教えください。

 

李さん 私たち連合会は中医薬の国際標準化に力を入れています。いままで制定して公表した国際標準はすでに16あり、中医学の基本用語は、すでに英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ハンガリー語、ロシア語など7~8種類の言語に翻訳されています。残念ながら日本語はまだありません。

 

この他に人材育成施設、診療所、中医薬大学などの基準や、国際中医師など資格認定の標準も作っています。国際標準化機構(ISO)とも協力関係を持ち、商品やサービスの品質にも重点をおいています。

 

中医学の教育レベル認定の国際標準化としては、中医薬事業に携わる人材に対しての取り組みもあります。「世界中医薬学会連合会」が2003年に設立されるより10年以上前のことになりますが、世界各地で中医学のレベルに差が生じており、治療効果の評価など、さまざまな問題が発生していました。そこで中国政府が、中医学の能力を認定するために、国家中医薬管理局のもとで1991年から認定制度を開始しました。

 

日本では1996年から国際中医師(※)試験が行われていますが、2004年からは、私たち「世界中医薬学会連合会」が試験管理を行っています。

(※国際中医師という名称は、日本では医師と混同されやすいため国際中医専門員という資格名が使われています。)

 

また、中医学の交流を活発に推進するため、国際貢献賞を設け審査しています。すでに5回行い、現在は6回目を審査しているところです。毎回中医学の交流に貢献する団体および個人3名を選び、1万ドルの賞金を授与し活動をサポートしています。

欧米を中心に世界で関心を集め、現在アメリカには24,000人の中医学専門家がいます

ノーベル賞受賞で、欧米を中心に世界で注目される中医学

──今後の中医学普及の展望をお聞かせください。

 

李さん まず、中医学は西洋医学とは違うシステムであり、それぞれのメリットとデメリットがあります。お互いにどちらも欠かすことのできない存在であることから、現在、世界中から中医学への関心が高まっています。

 

一番発展しているのは中医学を用いて診療する中医診療所で、欧米にはすでに多くの中医診療所が存在しています。人々に認められている理由は、やはりその治療効果で、とりわけ西洋医学が有効でない場合です。

 

現在アメリカには24,000人もの中医師・鍼灸師がいて、数多くの中医診療所・薬局が地域医療に貢献しています。イギリスも同様で、これは欧米における中医学の有効性の証だと確信しています。

 

さらに中医学の人材を育成する教育施設も増えています。中国以外にも、世界各地に中医学院あるいは中医学大学は691校あり、ハーバード大学やケンブリッジ大学をはじめ多くの研究センターが設置され、企業も開発投資しています。

 

「中国中医研究院」の屠 呦呦(と ゆうゆう)主席研究員がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで世界的に新たな中医学ブームが起こっており、中医学の未来はさらに輝くと信じています。

 

それは中医学の基礎は長い歳月の中でまとめられ、実践によってその効果が検証され、多くの問題を解決できており、今後淘汰されるものではないと考えているからです。

 

中医学で使われる生薬は、薬効のある動・植物(根・茎・実・花など)や鉱物を、保存しやすいように乾燥や簡単な加工を施したものです

超高齢化社会にこそ必要な医療体系

──中医学の特徴、とくにこれからの医療で役に立つと感じられるのはどんなことでしょうか。

 

李さん まず考え方ですが、中医学では体の全体の状態を整えていくことです。ある専門家の話を引用するとミクロ的に細かくみるのは西洋医学、マクロ的に全体を見るのが中医学であり、経済の考え方と同じ、中医学の優位性といえるでしょう。

 

とくに「天人合一」の考えは人間と自然界の一致、協調しなくてはいけないという考え方です。養生(生活に留意して健康の増進をはかること)の方法もたくさんあり、とくに近年は「未病先防(みびょうせんぼう)」といって予防をすることによって病気を進行させないという観点や、「既病防変(きびょうぼうへん)」(すでに病気にかかっている場合に重症化を防ぐこと)などの考えに対応する養生もあります。

 

中国では国民の健康に対する意識向上のため、養生を中心とした取り組みを行っています。治療の場合は「弁証論治(べんしょうろんち)」を用いオーダーメイドで対応しています。治療に使う生薬は自然のものですし、鍼灸・マッサージなどの施術なども環境を汚染しないため、エコ(自然環境保全)と言えます。

 

中医学が対応できる病気は慢性病、免疫性疾病、西洋医学でも治療効果がなかなか得られないような難病まで幅広くカバーしています。こんな素晴らしい特徴があるからこそ、現代社会に求められ、重要な存在感を示しているのではないでしょうか。

とくに高齢化が急速に進んでいる日本で、中医学の普及と発展が進むことは、更なる国民の健康増進と医療費削減につながると言えます。

 

その点からも、「COCOKARA中医学」のような中医学専門ポータルサイトができた事で、より多くの皆さんに中医学を知っていただく機会となることは喜ばしいことです。今後、人材育成、学術交流など支援を必要とされるときには、我々も全力で応援しますので、ともに中医学の発展のため相互協力を推し進めましょう。

 

(インタビュー:編集スタッフ 吉田)

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