監修:和田 暁 先生(一般社団法人薬膳アカデミア理事長)
【難易度★☆☆】山芋は肌荒れ、長引く風邪、慢性の咳、食欲低下
慢性下痢、頻尿の対策に役立ちます
山芋 平性/甘味 消化吸収、呼吸機能を健やかにする、滋養強壮、スローエイジング など
山芋は紀元前の栽培開始以来、薬用や食用として幅広く利用されてきました。中医学では健脾養胃(消化を助ける)、生津益肺(津液を生み出し、肺を潤す)、補腎渋精(腎を補い、精が漏れ出るのを防ぐ)作用に優れるとされます。胃腸の虚弱による食欲不振や慢性下痢、呼吸器の虚弱による慢性的な咳や喘息、生殖泌尿機能の低下による遺精、おりものの増加、頻尿などの対策に効果的です。栄養学的には、アミラーゼ、食物繊維、ビタミンB、アルギニンなどが豊富で、腸内環境を整え、疲労回復、滋養強壮の働きがあると考えられ、中国伝統医学の認識と一致している部分が多いと言えるでしょう。
参考:『中薬大辞典』『中華本草』
山芋とかれいの煮凝り
RECIPE
10月上旬、二十四節気の寒露を迎えます。秋分を過ぎ、気温がぐっと下がって、秋の乾燥の空気と混じり、涼燥の天候となります。秋特有の乾燥は、呼吸器や皮膚を傷める特徴を持っており、この時期は風邪をひきやすく、風邪が長引くことも多く、咳や喘息が起こりやすくなります。また、体力が低下することで胃腸の消化吸収機能が弱まり、食欲不振や軟便、下痢の症状もよく見られます。その際の食養生のポイントは「養陰防燥、潤肺益胃、補肺健脾(呼吸器と皮膚に潤いを与え、消化吸収機能を健やかにする)」です。今回のレシピのメイン食材である山芋は、「肺」を潤すことで、肺機能を健やかに保ち、「脾気」(胃腸のエネルギー)を補うことで、消化吸収を助け、「腎」を滋養し、精力アップを図ります。さらに元気を補うかれい、津液(潤い)を益すおくら、血と津液を養う枸杞の実を加え、たっぷりのしょうがで胃腸を整える今回のレシピは、秋の乾燥を乗り越えるためにおすすめの一品です。
調理時間15分
材料
【2人分】
山芋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80g
かれい・・・・・・・・・・・・・・・・・・1切れ
昆布だし・・・・・・・・・・・・・・・・270ml
枸杞の実・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ1
おくら・・・・・・・・・・・・・・・・・・3本
ゼラチン・・・・・・・・・・・・・・・・5g
しょうが・・・・・・・・・・・・・・・・25g
酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ1
塩麹・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ1
COOKING
- 1山芋の皮を剥き、粗みじん切りにする。しょうがはすりおろす。おくらは塩揉みをして、さっと茹で、輪切りにする。
- 2鍋に昆布だし、かれいの切り身、酒、すりおろしたしょうがを入れ、10分ほど煮て、かれいを取り出す。
- 3かれいから骨を取り除き、鍋に戻し、山芋、おくら、枸杞の実を加え、さっと茹で、塩麹で味を調え、ゼラチン液を溶き入れる。
- 4器に入れ、粗熱を取って、冷蔵庫で冷やし固める。
料理のポイント
- point! 山芋の処理中の手の痒みは、シュウ酸カルシウムによるものです。レモン水や酢水で洗えば解消できます。
- point! ゼラチンを寒天で代用することも可能です。
- point! かれいは、ほかの白身魚で代用することも可能です。
この記事を監修された先生
一般社団法人薬膳アカデミア理事長和田 暁 先生
和田 暁(わだ しゃお)
上海中医薬大学中医学部卒、同大学付属病院勤務。昭和大学研修中、日本医食同源第一提唱者の新居裕久教授と出会い、中医学を毎日の食卓へ届けることを目指し、薬膳普及の道へ進む。
2015年、世界中医薬学会連合会より世界初の高級中医薬膳伝授師称号を授与。現在、一般社団法人薬膳アカデミア理事長・世界中医薬学会連合会常務理事、日本国際中医薬膳管理師会会長、上海中医薬大学日本校教授、東京栄養士薬膳研究会顧問。
主な著書に『薬膳で治す』(時事書房・共著)『まいにち養生ごはん』(学陽書房・監修)『中医婦人科学』(上海科技出版社・共著)雑誌『助産雑誌』連載執筆など。