監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty&Relax Vol.1
気分が落ち込む「うつ状態」に対し、活発すぎるのが「躁状態」。明るく元気なので一見問題はなさそうですが、気分が過剰に高ぶることで“眠れない”“攻撃的になる”などのトラブルを招くことも。この傾向が進むと「躁病」などの病気につながる心配もあるので、思い当たる人は心身のケアを心がけ、気持ちを安定させることが大切です。
「躁状態」は「陽」の過剰が招く
「躁病」は気分障害にあたる精神疾患で、気分の高揚、興奮、過剰な活動などが特徴。大声、早口、話の誇張、暴言、睡眠欲求の低下などの状態が現れます。
中医学では、こうした傾向は陰陽の「陽(温熱、動的)」が過剰な状態と考えます。人の体やこころは、「陰(寒冷、静的)」と「陽」のバランスが整うことで健やかに保たれるもの。そのため、精神面では陰が過剰になると「うつ状態」、陽が過剰になると「躁状態」といった不調が現れやすくなります。
また、精神の不調には五臓の「肝」の働きも深く関係しています。肝は、陰にあたる「蔵血(血の貯蔵、血流量の調節)」、陽にあたる「疏泄(情緒や気血の巡りのコントロール)」の働きを担う臓腑。これらの働きは季節の変化に応じていて、陰が盛んな秋冬は蔵血、陽が旺盛な春夏には疏泄の機能が活発になります。この活動のバランスが崩れ、春夏に“疏泄の過剰・蔵血の低下”という状態を招くと、躁状態が起こりやすくなります。
「陽盛・陰虚」体質の改善で精神の安定を
疏泄の働きが旺盛で、蔵血の機能が低下した状態は、体内の「陽気(体を温めるエネルギー)」の過剰、「陰液(血や水分)」の不足を招きます。こうした「陽盛・陰虚」体質の人は、過剰な熱で興奮しやすく、躁状態を招きやすいタイプ。病気(躁病、躁うつ病など)の状態ではなくても精神トラブルを起こしやすいので、体質を整えて気持ちを穏やかに保つよう心がけましょう。
〈「陽盛・陰虚」体質の主な症状〉
・春夏に精神不調が起こりやすい
・気分が不安定
・怒りっぽい
・喧嘩しやすい
・睡眠が少ない
・めまい
・頭痛
・耳鳴り
・目の充血
・口の乾燥
・便秘
〈養生の基本〉
過剰な陽気を消耗し、潤いを養うことで、陰陽のバランスを整えましょう。
〈食養生〉
熱を冷まし、潤いを養うものを積極的に!
・食材:乳製品、豆腐、鴨肉、魚類、あさり、いか、ごま、もち米、はちみつ、緑豆、梨、りんご、バナナ、ぶどう、トマト、きゅうり、もやし、セロリ、にんじん、小松菜、白きくらげ など
・お茶:緑茶、ウーロン茶、麦茶、そば茶 など
・生薬:蒲公英(ほこうえい)、蓮子心(れんししん)、五行草、枸杞、金銀花、菊花、梅花、桑椹(そうじん)、旱蓮草(かんれんそう)、珍珠(ちんじゅ) など
菊花茶、枸杞茶など、生薬をお茶に加えてブレンドティーを楽しむのもおすすめ。
体を温めるものは控えめに!
アルコール、脂っこい料理、唐辛子、にら、ねぎ、しょうが、にんにく、わさび、からし、牛肉、鶏肉、羊肉、鹿肉、など
〈暮らしのポイント〉
・適度な運動で体を動かし、過剰な陽気を消耗しましょう。
・イライラや興奮は躁状態の要因に。ストレスを溜めないよう心がけて。
・趣味を楽しむなど、気持ちをリラックスさせる習慣を。
〈おすすめのツボ〉
「合谷」「太衝」は、上から下に向かって撫でるように押すのがポイント。
・合谷:体の熱を冷まし、精神を安定させます。
・太衝:肝を整え、気血の巡りを良くします。体の熱を冷ます効果も。
・足三里:胃腸を整え、気の巡りを良くし、体全体を健やかに整えます。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。