監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン Vol.70
豊かな香りや味わいが魅力のお茶。緑茶や紅茶、烏龍茶とその種類はさまざまですが、こうしたお茶に肌や体を整える優れた効能があることをご存知でしょうか? 毎日のお茶が肌ケアや体調管理に役立つのだから、活かさない手はありません。この機会にぜひお茶の上手な飲み方を知り、日々のティータイムに取り入れてみてください!
“茶薬同源”。お茶を飲むことは体を整えること
中国最古の薬学書にも記され、古くは薬として飲まれていたお茶。その効能は23以上にものぼり、利尿作用、かぜ予防、精神安定、老化予防などさまざまな作用があるとされています。
現在では科学的にも証明されているこうした効能を、中国の人々はその日の体調や気候に合わせて上手に取り入れています。例えば、ストレスを感じる時はリラックス効果のあるジャスミン茶やバラ茶、寒い冬には体を温める黒茶など、お茶の特徴を活かして手軽に心身のケアをしているのです。
“茶薬同源”の言葉の通り、お茶はやさしい“薬”としても役立つ優れもの。健やかな肌と体を保つためにもお茶の効能をきちんと知り、自分に合った飲み方を見つけましょう。
中国茶の基礎知識
お茶は、「チャノキ」の葉を用いて作られた飲み物です。緑茶もウーロン茶もすべて「チャノキ」の葉。その違いは茶葉の発酵度や製法によるもので、基本6種類に分かれます。
<発酵度によるお茶の種類>
・緑茶:不発酵
・白茶:微発酵
・黄茶:弱発酵
・青茶:半発酵(ウーロン茶など)
・紅茶:完全発酵
・黒茶:微生物による後発酵(プーアル茶など)
ちなみに発酵度の低いお茶は“体を冷ます”、高くなるほど“体を温める”という特徴があるため、春夏は緑茶、秋冬は紅茶や黒茶を選ぶのがおすすめ。そのほか、中国茶には茶葉に花や生薬を加えたブレンド茶(菊花茶、枸杞茶など)、生薬を煎じた薬茶(杜仲茶、田七人参花茶など)があります。
「血」のタイプ別・おすすめ茶
栄養や潤いの源となる「血」は、肌の状態とも深く関わっています。トラブルを改善して健やかな肌を保つためにも、自分の“血タイプ”に合ったお茶選びを意識しましょう。
乾燥肌の「血虚」タイプ
体内の「血」が不足して、肌の栄養や潤いも足りなくなっているタイプ。乾燥肌や敏感肌が気になる人は、血を積極的に養うよう心がけましょう。
●よくある症状
・乾燥肌、敏感肌
・髪のパサつき、脱毛
・血色が悪い
・立ちくらみ
・疲労感
・夢が多い、集中力が散漫
<おすすめ茶>
ミルクティー、紅茶、白茶、枸杞茶、玄米茶、棗茶(なつめちゃ)、棗生姜茶 など
<おすすめ食材>
レバー、卵、牛肉、魚、しじみ、小豆、ごま、くるみ、りんご、バナナ、いちご、しいたけ、ほうれん草、人参、ひじき など
<おすすめ生薬>
棗、龍眼肉(りゅうがんにく)、プラセンタ、当帰、芍薬 など
敏感肌の「血燥」タイプ
「津液(潤い)」不足で「血」が乾燥し、肌の潤いも不足しがちなタイプ。乾燥による肌荒れ、シワなどが目立つため、体内の潤いをしっかり養うことが大切です。
●よくある症状
・敏感肌、混合肌
・乾燥による肌荒れ、シワ
・唇や目の乾燥
・かゆみが起こりやすい
・ほてり、のぼせ
<おすすめ茶>
緑茶、煎茶、鉄観音、白茶、枸杞茶 など
<おすすめ食材>
手羽先、豚足、すっぽん、あわび、ふかひれ、松の実、白きくらげ、れんこん、トマト、はちみつ、梨、柿、いちご など
<おすすめ生薬>
哈士蟆油(はしまゆ)、沙棘、五行草、亀板(きばん)、鼈甲(べっこう)、生地黄、麦門冬 など
肌がくすむ「瘀血」タイプ
血行が悪く(瘀血)、血の栄養や潤いが肌に十分行き届かないタイプ。シミやくすみが目立ちやすいので、血流を改善して肌の元気を取り戻しましょう。
●よくある症状
・混合肌
・肌のくすみ、ザラつき
・シミ、そばかすが多い
・頭痛、肩こり
・イライラしやすい
<おすすめ茶>
プーアル茶、黒茶、鉄観音、ウーロン茶、バラ茶 など
<おすすめ食材>
青魚、黒きくらげ、にら、にんにく、ねぎ、さやいんげん、かぶ、玉ねぎ、アスパラガス、大葉、パパイヤ、桃、アーモンド など
<おすすめ生薬>
サフラン、桃仁(とうにん)、バラ、沙棘(さーじ)、牡丹皮 など
シミが気になる「血寒」タイプ
体を温める「陽気」の不足で「血」が冷え、血行不良を招いているタイプ。肌に栄養や潤いが行き届かず乾燥しがちなため、冷えを改善して血をしっかり巡らせましょう。
●よくある症状
・乾燥肌
・肌が青白い
・シミができやすい
・体の冷え
・むくみ
・かぜを引きやすい
<おすすめ茶>
紅茶、プーアル茶、黒茶、生姜茶、棗生姜茶 など
<おすすめ食材>
えび、うなぎ、かつお、肉類、栗、シナモン、山椒、八角、唐辛子、かぼちゃ、らっきょう、黒砂糖、炒ったナッツ類 など
<おすすめ生薬>
鹿茸(ろくじょう)、海馬、プラセンタ、冬虫夏草、桂皮 など
オイリー肌の「血熱」タイプ
体内の過剰な熱で「血」に熱がこもり、肌に炎症が起こりやすいタイプ。にきびや吹き出物もできやすいので、体にこもった熱を冷まして肌を落ち着かせましょう。
●よくある症状
・オイリー肌
・にきび、炎症
・口内の乾燥
・ほてり
・汗をかきやすい
・イライラしやすい、興奮しやすい
<おすすめ茶>
煎茶、緑茶、ウーロン茶、麦茶、そば茶 など
<おすすめ食材>
かに、はまぐり、あさり、いか、鴨肉、緑豆、豆腐、苦瓜、れんこん、トマト、きゅうり、小松菜、白菜、すいか、梨 など
<おすすめ生薬>
蒲公英(ほこうえい)、蓮子心(れんししん)、五行草、金銀花、菊花 など
終わりに
楊暁波先生の中医美容レッスンは今回まで。最後に先生からメッセージをいただきました。
「肌は体を包み込んで守る一番大きな器官で、“内臓を映す鏡”とも言われます。そのため、肌トラブルが起きたときは外的要因(気候の変化や環境)だけでなく、内臓からのSOSと捉えることが大切。日々のスキンケアはもちろん、衣・食・住の生活習慣を整え、心身を健やかに保つことで、内面から美しい肌をつくりましょう。
美肌は1日にしてならず! 日々、努力を“続けること”が大切です。
スタートから6年間、70回にわたって季節の肌養生や、肌トラブルの予防・改善における中医美容の極意をご紹介してきました。この情報が、皆さまの健やかな肌を守る一助になれば幸いです」
楊暁波先生画像提供:茶葉でできた茶壺
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など