監修:楊 敏 先生(中医学講師)
こんにちは。中医学講師の楊敏です。
年齢を重ねると、気になり始めるのが「更年期」。なんとなく気分がゆらいだり、ホットフラッシュに悩まされたり…、そんな心身の変化に不安を抱く人も多いのではないでしょうか。更年期は避けられないものですが、早めの備えで体を整えておくことで、不調を起こりにくくすることはできます。今回は更年期に向けた薬膳ケアについてご紹介するので、毎日の食事づくりにぜひ役立ててみてください。
心配しずぎないで。更年期は誰もが迎える体の変わり目
更年期は、閉経前後の約10年間のこと。一般に、女性の体が成熟期から老年期へと移る45〜55歳頃にあたります。この時期に入ると卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が急激に減少します。その結果、ホルモン量の急な変化に体が追いつかず、自律神経のバランスが乱れ、ほてり、のぼせ、イライラ、精神不安といったさまざま不調が起こるようになるのです。
このように、更年期は誰もが迎える“体の変わり目”で、いずれは落ち着いていくもの。急な変化に体が慣れるまでの移行期間と捉え、過度に心配しすぎず前向きに過ごしていきましょう。
更年期対策は「補腎・理気・活血」がカギ
中医学では、更年期の症状は、生殖や成長・発育を司る「腎」と深く関わっていると考えます。女性の体は“7の倍数”の年齢で変化が訪れるとされますが、これは腎の充実度によるもの。40歳前後から腎の働きが下り坂に入り、女性ホルモンの分泌量も低下していくため、更年期を迎える頃にはさまざまな不調が起こりやすくなります。
更年期を穏やかに過ごすためには、この腎の衰えをなるべく緩やかにすることが大切。特に不調を感じていなくても、“プレ更年期(30代後半〜40代前半)”といわれる時期に入ったら、意識して腎をケアしていきましょう。
また、「瘀血(血行不良)」や「気(エネルギー)の停滞」といった体質も更年期の不調につながるので、気・血の巡りを良い状態に保つこともポイントです。
〜更年期に向けて。体質ケア3つのポイント〜
・補腎(腎を養う):女性ホルモンの衰えを緩やかに。
・理気(気を巡らせる):ホルモンや自律神経のバランスを整える。
・活血(血を巡らせる):体全体を元気に保ち、ホルモンや自律神経のバランスの回復を助ける。
おすすめ食材:更年期に向けてカラダを整える
毎日の食事に「補腎」「理気」「活血」の食材を上手に取り入れて。穏やかな更年期に向けて、体質を健やかに整えていきましょう。
「補腎」の食材 〜腎を養う〜
長芋、大和芋、さつまいも、豆乳、牛乳、きのこ類、えび、うなぎ、黒豆、大豆、くるみ、栗、黒ごま、松の実、クコの実、ブルーベリー、ブロッコリー、にら など
☆豆乳にきな粉を混ぜて、朝食やカフェタイムに。はちみつをプラスするのもおすすめです。
「理気」の食材 〜気を巡らせ、ストレスを解消する〜
春菊、三つ葉、セロリ、大葉、パセリ、あさり、しじみ、みかん、オレンジ、レモン、金針菜、陳皮(みかんの皮)、ミント、ラベンダー、カモミール など
☆香りの良いハーブティーでストレスを発散させて。
「活血」の食材 〜血を巡らせる〜
玉ねぎ、なす、ちんげん菜、いわし、さば、さんま、いか、たこ、サンザシ、ローズ、紅花、サフラン、ウコン、プルーン、ひじき など
薬膳レシピ:おいしく食べて更年期対策を!
主食と主菜、2つのレシピをご紹介します。いずれも更年期対策にぴったりなので、時間に余裕のある週末などにぜひ楽しんでみてください。
栗と黒豆の炊き込みご飯[補腎に]
【材料:4人分】
米・・・2合
栗・・・8~10個(生栗なら皮をむいて。甘露煮なら汁を軽く切る)
黒豆・・・50g(乾燥黒豆は水に7〜8時間浸けて戻す)
塩・・・小さじ1/3
酒・・・大さじ1
しょうゆ・・・小さじ1
【作り方】
[1]米を洗い、30分ほど浸してざるに上げる。
[2]炊飯器に米・酒・しょうゆ・塩を入れ、水を2合の目盛りまで加える。
[3]栗と黒豆をのせ、軽くならして炊飯する(混ぜない)。
[4]炊き上がったら全体をさっくり混ぜ、5〜10分ほど蒸らす。
[5]器に盛り、お好みで黒ごまや塩を少々ふる。
〜ワンポイント〜
・栗は甘露煮を使うと、ほんのり甘いお祝いご飯風な仕上がりに。
・おこわ風にしたい場合は、米1合+もち米1合で作るともちもち感がアップします。
金針菜入り・シーフードのトマト煮[補腎・理気・活血に]
【材料:2〜3人分】
えび(小~中サイズ)・・・8尾
いか・・・1杯
あさり(砂抜き済み)・・・200g
金針菜(乾燥)・・・10g(ぬるま湯に20分ほどつけて戻す)
玉ねぎ・・・1/2個
にんにく・・・1かけ
オリーブオイル・・・大さじ1
白ワイン・・・大さじ2(酒でも可)
カットトマト・・・1缶
水・・・100ml
顆粒コンソメ・・・小さじ1
塩、こしょう・・・少々
バジル・・・少々
【作り方】
[1]いかは輪切り、玉ねぎ・にんにくはみじん切りに。金針菜は節を取り、食べやすい長さにカット。
[2]フライパンにオリーブオイルを入れ、にんにく、玉ねぎを中火で炒める(玉ねぎが透き通るまで)。
[3]えびといかを加えてさっと炒め、白ワインを加えてアルコールを飛ばす。
[4]カットトマト、水、顆粒コンソメ、金針菜を加え、軽く混ぜて中弱火で10分ほど煮込む。
[5]あさりを加え、ふたをして5〜6分煮る(あさりの口が開くまで)。
[6]塩、こしょうで味を調える。
[7]器に盛り、バジルを散らす(パセリやパクチーなどでもOK)。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。
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