監修:楊 紅娜(中医学講師)
楊紅娜先生のBeauty & Relax Vol.35
こんにちは。中医薬大学で修士号を取得し、中国で10年間精神科臨床医としての経験を積んだ楊紅娜です。
朝夕の空気がひんやりと感じられ、そろそろ体も寒さへの備えが必要なころ。これからの時期は冷えで血行不良を起こしやすく、体質では「瘀血(おけつ)」に注意が必要です。瘀血はさまざまな体調不良を招くだけでなく、シミやくすみといった肌悩みの要因にも。積極的にケアをして血流をスムーズに保ち、秋冬の元気とキレイを守りましょう。

「瘀血」はさまざまな不調を招く“万病のもと”
「瘀血」は、血が汚れたり粘度が高まったりして、流れが滞った状態のこと。血は全身を巡って栄養や潤いを運び、また老廃物を回収して、臓腑や組織の働きを保っています。そのため、巡りが悪くなると身体全体の栄養や潤いが不足し、肩こり、頭痛、肌のシミといったさまざまな不調を招くようになるのです。さらに瘀血が慢性化すると、高血圧、動脈硬化、脳梗塞などの疾患につながることも考えられます。
このように、瘀血はさまざまな不調や病気を招く“万病のもと”。単なる血行不良と放置せず、悪化する前にしっかり対策することが大切です。
<瘀血による身体の症状>
□ 肩こり
□ 慢性の痛み(頭痛、関節痛など)
□ 生理痛が強い
□ 経血の色が暗く、血塊がある
□ 不正出血
□ 体内に腫塊がある(子宮筋腫、子宮内膜症、ポリープ、腫瘍など)
□ 手足の冷え、または冷えのぼせ
シミ、クマ、くすみは「瘀血」のサイン
血の巡りは肌の状態にも大きく影響します。血が滞りなく巡っていれば、肌に十分な栄養や潤いが供給され、ターンオーバー(肌の新陳代謝)もスムーズに。その結果、ハリや潤いがあり、シミもできにくい健康な肌が保たれます。
反対に、瘀血で血の巡りが悪くなると、肌の栄養や潤いは不足気味に。顔色のくすみやクマも目立ち、ターンオーバーが乱れてシミもできやすくなるのです。
シミ、クマ、くすみは多くの女性が抱える肌の悩み。気になるときは瘀血のサインと考え、血流改善を意識してみましょう。
〜皮膚は内臓の鏡〜
中医学では“皮膚は内臓の鏡”といわれます。これは、体内の状態が肌に現れるということ。美しく健康な肌を保つためには、表面だけでなく、体の内側からしっかりケアすることが大切です。
<瘀血による肌や舌の症状>
□ シミができる
□ クマ、くすみが目立つ
□ 肌が乾燥し、艶がない
□ あざができやすい
□ 唇や歯茎の色が暗い
□ 舌の色が暗く、瘀斑・瘀点がある
基本ケア:血を巡らせる
瘀血があるときは、まず滞った血を巡らせることを心がけて。また、瘀血はさまざまな体質が要因となっているため、合わせてその体質をケアすることも大切です。血を巡らせる「活血(かっけつ)」+原因を取り除く「体質ケア」で、根本から瘀血を改善していきましょう。
[ 食養生 ]血の巡りをサポートする食材を
山査子(サンザシ)、玫瑰花、ウコン、沙棘、紅花、サフラン、ターメリック、玉ねぎ、にら、にんにく、シナモン、黒きくらげ、なす、黒砂糖、たけのこ、ちんげん菜、青魚、少量の酒(ワインなど)
☆おすすめ薬膳:サソリ揚げ、大黄酒
〜お酒もおすすめ〜
お酒は血流を良くするとされるため、瘀血がある人にはおすすめ。ただし、量は少なめ、アルコール度数は低めを意識することが大切です。
〜冷たいものは控えめに〜
血には“温を好み、寒を嫌う”という性質があり、体が冷えると血流が滞りがちに。冷たい飲食はなるべく控え、温かいものを摂るよう心がけましょう。
[ 運動 ]筋肉をしっかり動かして
静脈の血液は主に筋肉の動きによって流れているため、運動をして筋肉を動かすことが血流の促進につながります。ジョギング、ウォーキング、サイクリング、水泳、ピラティスなど、体力に合わせて無理なく続けられる運動を習慣にしましょう。
[ つぼマッサージ ]
日々のケアは手軽につぼのマッサージを。時間に余裕があるときは、お灸や鍼もおすすめです。
・太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が交わるところの窪み
・血海(けっかい):ひざの内側、皿から指3本分上
・三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指4本分上の骨の後ろ
・委中(いちゅう):ひざの裏側、ひざを曲げた時にできる線の中央あたり
・曲池(きょくち):ひじを曲げたときにできる、シワの終わるところ
・神闕(しんけつ):へそ
・膈兪(かくゆ):肩甲骨の下、背骨から指2本分外側
・肝兪(かんゆ):膈兪から指3本分下

プラスのケア:体質改善で瘀血の要因を取り除く
活血のケアを合わせ、瘀血の要因となる体質を改善していきましょう。中でも「気滞」タイプは瘀血を招きやすいので、気になる症状がある人は積極的にケアを。
<ストレスが多い「気滞」タイプ>
血と一緒に流れる「気」(エネルギー)が停滞し、血の巡りも悪くるタイプ。ストレスが大きな要因になるので、日常のストレスはこまめに発散を。
[主な症状]イライラ、情緒不安定、お腹の張り など
[おすすめ食材]玫瑰花、ジャスミン、柑橘類、しょうが など
<乾燥肌の「陰虚」タイプ>
血の生成に必要な「陰」(津液、精など)が不足し、血の量が減って流れが悪くなるタイプ。潤いアップの食材を積極的に摂り、体内の陰を養って。
[主な症状]乾燥肌、のどが渇く、便秘気味、ほてり・のぼせ など
[おすすめ食材]梨、りんご、柿、きゅうり、白きくらげ など
<オイリー肌の「湿熱」タイプ>
飲み過ぎ食べ過ぎなどで体内に「湿」(余分な水分)や「熱」が生じ、ドロドロ血になるタイプ。溜まった湿熱を取り除き、体をスッキリさせましょう。食生活の見直しも大切です。
[主な症状]オイリー肌、にきび、胃もたれ、食欲不振 など
[おすすめ食材]キウイフルーツ、きゅうり、大根、はと麦 など
<体が冷える「陽虚」タイプ>
体内の「陽気」(体を温めるエネルギー)が足りず、体が冷えて血流が悪くなるタイプ。食事や運動で体を温め、陽気をしっかり養いましょう。
[主な症状]寒気、手足の冷え、腹痛、疲労感 など
[おすすめ食材]桃、なつめ、ねぎ、しょうが、シナモン など
<むくみが気になる「痰湿」タイプ>
食の不摂生などで粘りのある「痰湿」(余分な水分や汚れ)が溜まり、ドロドロ血になるタイプ。胃腸を整えて水分代謝を上げ、溜まった痰湿を取り除きましょう。
[主な症状]むくみ、食欲不振、軟便や下痢 など
[おすすめ食材]みかんの皮(陳皮)、大葉、山芋 など
<疲れやすい「気虚」タイプ>
血を推し流すエネルギー「気」が不足して、血流が滞るタイプ。胃腸を元気に保ってしっかり栄養を摂り、気を養うことを心がけて。
[主な症状]疲労感、倦怠感、冷え、胃腸が弱い など
[おすすめ食材]山芋、豆腐、きのこ類、なつめ など
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この記事を監修された先生

中医学講師楊 紅娜
楊紅娜(よう こうな)中医学講師。 登録販売者。鍼灸師。 2006年遼寧中医薬大学修士号取得。 2006年~2016年、大連市にて精神科臨床医として10年間勤務。 「中国摂食障害の防治指南」の編集委員担当。 2016年来日。日本にて登録販売者、鍼灸師取得。